700形は もと都電2000形です。1969年8月に長崎入りしました。
車体長に対して車体幅が細い為、非常にスマートでスリムに見えます。
スリムな車両というなら他にももっとすごいのがいるのでそれが珍しいというわけではありません。
なにが珍しいのかをご紹介する前に彼女たちが在籍した都電杉並線についてお話しします。

杉並線は 新宿と荻窪を結んでいた都電14系統の通称です。
正確には高円寺線(新宿駅前 – 高円寺一丁目)と荻窪線(高円寺一丁目 – 荻窪駅前)をあわせた路線ということになります。
さて都電の軌間は1372mmといいたいところなのですが この杉並線は1067mmです。
当然、他の路線の都電車両を走らせることはできません。
杉並線の専用車両が走っていました。2000形もそうです。スリムなのはこの軌間に由来するのですね。
では なぜ1067mm軌間だったのか。と申しますと杉並線は西武軌道線が大正年間に開業した路線で、昭和17年2月に東京市(当時)が編入したものだったからです。
そういえば現存する都電・荒川線も元は王子電気軌道という路面電車でした。
東京市は戦時中、私鉄を次々と編入し路線を拡大していたのです。
さて杉並線は1963年に都電廃止第1号路線となってしまいました。
軌道となる青梅街道の交通渋滞が問題となっていたということもありますが、1963年には営団地下鉄荻窪線(荻窪~新宿間)が開通し社会的使命を終えたということになるでしょう。
1963年の廃線当時 さすがに西武軌道由来の車両は姿を消しており 2000形(2001 ~24)と 2500形(2501~2508)が在籍していました。
都電2000形は1943年に登場した木造車を1951年に鋼体化したものと新製車の2通りがあります。
ともに車体そのものは新しくドアの明かり窓・蛍光灯・大型方向幕・ドアエンジンの採用と当時としては近代的な車体でもありました。
まだまだ使えるので杉並線廃止後は他の都電路線で運用されることになったのです。
杉並線以外に1067mmの路線はありませんので 当然 1372mm軌間に改造されることになります。
しかしその後都電は路線を縮小、小型で異端車である2000形は淘汰されることになりました。
そんな2000形のうち2018~22・24の6両が1969年に長崎電気軌道に譲渡されることになったのです。
これが長崎電気軌道700形です。
ところが長崎電気軌道は1435mm軌間です。これまた改軌しないわけにはゆきません。
つまり長崎電気軌道700形は、1067mm→1372mm→1435mmと3種類の軌道上を走った珍しい車両となるのです。
台車を交換することなく、改造するだけで対応したというのもすごいですね。
D-16N台車は東京都電6000形などで使用されたD-16台車の狭軌(1067mm)版です。
(なお長崎電軌に譲渡された1955年製の2018〜24はコロ軸受けとなりD-16NAに区分されます)
その後、ワンマン化工事、塗装変更なども実施されましたが基本的なところは何も変わっていません。
冷房化されず夏場に活躍することが少なかったということもあるかもしれませんが 700形は長崎で永く愛されました。
1993年から廃車が始まりましたが、701号はイベント用として動態保存され 黄色い都電塗装に装いを改め撮影会などでは人気者でした。
残念ながら701号機も2019年に姿を消しましたが、1067mm→1372mm→1435mmと3種類の軌道上を走ったという希少な台車であるD-16NAは1700形に流用され今も活躍しています。

*この記事は2015年1月をもとに2025年6月に補筆訂正を加えたものです。
参考文献 鉄道ピクトリアル 特集 路面電車 1976年/1994年/2000年/2011年版 No319/593/868/852
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