最新鋭の3000形が2000形1000形に先立って姿を消すという不思議。
神戸市営地下鉄に6000形が2018年にデビューしました。
いよいよ開業時の1977年から活躍している1000形もいよいよ最期かなあと思っていると2019年度に3000形からも廃車がでました。
そして、2021年。まだ1000形はその姿を見ることができるのに、3000形は2021年7月、完全にその姿を消してしまいました。
3000形は6000形が登場するまで神戸市営地下鉄の最新型だったじゃないですか。
なぜ昭和生まれの2000形や1000形に先立って姿を消さなければならないのでしょうか。
3000形とはどんな車両だったのかをお話しする前に神戸市営地下鉄 西神線についてみてゆくことにします。
神戸市営地下鉄 西神線
西神線は神戸市初の市営地下鉄路線です。
1977年3月に須磨ニュータウンへの足として新長田 – 名谷間が開業しました。
以後、西は西神中央、東は三宮そして新神戸へと順次延伸されました。
正式には新長田、名谷を境に山手線、西神線、西神延伸線と3路線に分かれています。
1988年には北神急行電鉄北神線(谷上-新神戸)が開通しました。
相互乗り入れをしていた北神線ですが2021年市営化され現在に至っています。
列車は1路線として一体的に運用され、西神・山手線、北神線と称されています。
開業区間である西神線 板宿-名谷間は六甲山系をぶち抜く山岳トンネルです。
トンネル断面は大きく、電車はパンタグラフで集電するタイプとなりました。
いわば山岳路線ですからから抑速ブレーキは必須条件です。西神線ではこれを回生ブレーキとしました。
さらりと言いましたが、ブレーキ時に発生した電気エネルギーを消費できなければブレーキは失効してしまいます。
板宿に向け急勾配を駆け下る列車はものすごい勢いです。ここはおろそかにはできません
西神線では対向列車のみならず施設全体で電力を消費する(=ブレーキを有効にする)先進のシステムを導入しました。
画期的な地下鉄車両 1000形
そんな西神線で1977年の開業当初より走り続けているのが1000形です。
当時の地下鉄としては画期的な冷房付きアルミ合金車体となっています。
同じ年の新車として名鉄の6000系、阪急の6000系があげられます。ともに抵抗制御です。
そう、大手私鉄でさえも抵抗制御があたりまえの時代にありながら、1000形は電機子チョッパ制御を採用しているのです。
またATC(自動列車制御装置)に加えATO(自動列車運転装置)までも備えています。
性能は最大加速度:3.3km/h/s、減速度:非常 4.5km/h/s、常用最大 3.5km/h/s。
このスペックが3000形はもちろん6000形に至るまで継承されています。
1000形がいかに偉大な存在であるかを、ここで再認識しておきたいところです。
1988年4月 北神急行開業にあわせて登場したのが2000形です。
1000形とは外観デザイン等は大きく変わっています。
しかし足回りなど走行に関する基本的な部分は1000形を踏襲しています。
制御装置も1000形と同じく電機子チョッパ制御(AVF)が採用されました。
同時に登場した北神急行7000系もまた 西神・山手線の規格に合わせたアルミ合金製の3ドア19m車です。
ただし、こちらはGTOサイリスタ素子によるVVVFインバータ制御装置を搭載しました(1C4M)。
3000形は、西神・山手線快速が新設された1993年7月に登場しました。
7000系に倣い神戸市初のVVVFインバータ制御(GTO)が採用されました。
塗装こそ違うものの、外観も足回りも1987年製の北神急行7000系に近い姉妹車両となっています。
93年と言えば都営三田線の6300形もデビューしていますね。
こちらは20m級ステンレス車ですが、7000系、3000形と同じく川崎重工業製のインバータ制御車です。顔立ちもよく似ています。
さて1000形は1997年からは年度毎に1~2編成ずつリニューアル工事をすることになりました。
3000形と同じVVVFインバータ制御(GTO)に変更すると同時に、客室内装などがリニューアルされています。
これらについては、形式を1100-01形~1600-01形と改めました。
また2004年度からはVVVF制御をIGBT方式に変更,形式も1100-02形~1600-02形となっています。
続いて2013~14年には2000形も1000形にならい客室のリニューアルおよび主回路装置のインバータ制御(IGBT)化がなされました。
形式も2100-02形~2600-02形となっています。
このまま3000形もリニューアルと思いきや、即廃車です。
なぜ、3000形が廃車になったのか。
2018年からは6000形を導入することになったからです。
3000形は登場から25年が過ぎ、リニューアルが必要となったから置換えを決定したとのことです。
確かに1000形の方が古株ではあります。でもリニューアルを終えています。
2000形にいたっては2014年にリニューアルしたばかりです。これを廃車する手はないです。
しかしながら、2023年には6000形に統一されるとのことです。
6000形は1000形以来、変わることのないアルミ合金製の19m車です。
6000形で何がどう変わったというのでしょう。
まず制御装置は日立製のSiC素子を使用したVVVFインバータ制御(IGBT)で1C4Mとなりました。
でも、フルSiC-MOSFET のVVVFインバータ制御がすでに7000形(元北神急行車)に換装されています。
最先端と言うほどのモノでもありません。
(なお7000形は北神急行時代である2016~18年に制御装置を換装。正確には7000A系)
次に130kwだったモーターを170kwに出力UPしたことがあげられます。
でもこのことで4M2Tから3M3TとMT比を変えていますから、編成としてパワーアップしたわけではありません。
前述したように最大加速度:3.3km/h/s 減速度:非常 4.5km/h/s, 常用最大 3.5km/h/sという性能に変更はないのです。
神戸市交通局のHPを見てみましょう。
6000形には車両情報制御装置が搭載されているとアピールされています。
「車両情報制御装置には、車両に搭載されている様々な機器(制御装置やブレーキ装置等)の動作状態をリアルタイムで監視し、運転室に設置されたモニタに表示する「モニタリング機能」が備わっています。さらに、機器に故障が発生したときは、車掌や運転士に知らせ、故障に応じた処置内容を表示する「異常検知機能」を有しています。車両に万が一の事態が発生した場合にも、乗務員が迅速かつ的確に対応することができます。また、その他にも、車両の各機器を自動で検査する「車上検査機能」、お客様向け情報の制御や空調・放送関係を制御する「サービス機器制御機能」なども備わっています。車両情報制御装置は、車両の情報を集中管理することで、車掌や運転士の補助、機器の保守やお客様サービスの向上を効果的に行うことを目的としたシステムです。」
「これか…。」と思って眺めていたのですが、鉄道ピクトリアル「新車年鑑」93年版によると 実は3000形にもマイコン制御の機器監視装置が付いているのです。
もちろん3000形のシステムが6000形のそれとは比較にならないのはもちろんのことです。しかし、
28年前に3000形で車両管理のグランドデザインが提唱されていたことは特筆すべきことです。
(ちなみに営団地下鉄06系07系でも同年導入されました。)
でも、神戸市交通局のHPではこれをスルーしているのです。
名車1000形と6000形の記事は充実しているのに…。
神戸市営地下鉄では2023年度までに全駅にホームドアを設置する予定です。
6000形に統一する理由のひとつがこのホームドア設置だそうです。
しかし三宮駅では既にホームドアが設置されており、在来車である1000形、2000形の扉とホームドアの扉の間にはズレは生じていません。
横浜市の2000形とは事情が違います。ズレは時間です。
6000形にはホームドアと連動する装置が取り付けられているため、車両扉とホームドアの開閉に時間差がないのだそうです。
確かにホームドアが開くのを待って…扉が開く。というのは急いでるときなんかはイラッとしますね。
この装置を搭載する6000形に統一すればダイヤの遅れも回避できるというわけです。
でも、それらの装置って3000形たち在来車にも設置できるんじゃないですか。
神戸市営地下鉄では6000形を2023年度までに6連×33本投入することになっています。
さすれば、3000形のみならず1000形、2000形、7000形(元北神急行車)もともに淘汰の対象に入ることになります。
事実2000形も廃車が始まっています。
なにを急いで6000形に統一するのか。私には理解できませんでした。
鉄道車両はモノに過ぎないといってしまえばそれまでです。
しかし、彼らはサードレールの地下鉄車両ではなく、パンタグラフで集電する標準軌の鉄道車両です。
まだまだ活躍できる彼らに新しい職場を与えてやれなかったのは残念に思えてなりません。
また、私にはこれから10年、鉄道に対する社会のありようも テクノロジーも大きく変化していくのではないかと感じています。
今一度に、全てを6000形一つにまとめてしまったら新しい変化に対応し辛いのではないかとも思うのです。
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