「ずーっと脇役」JR東日本 185系200番台 珍車ギャラリー#424 

「ずーっと脇役」JR東日本 185系200番台 珍車ギャラリー#424 

2024年春。臨時列車として185系が運行されることが発表されました。
JR東日本になってから登場した251系「スーパービュー踊り子」は1990.91年製です。
185系とは同じ路線で活躍していたこの251系が2020年3月に引退、翌月には廃車されているのです。
これは一体どういうことなのでしょう。今回は185系の魅力に焦点を当ててみたいと思います。

国鉄最後の特急形電車

185系は1981.82年製で227両その全てがJR東日本に承継されました。
153系165系の置き換えということになりますので 特急形車両とはいいながら通勤通学輸送にも対応できることまで求められました。
185系は「特急用と通勤用に供用可能」な新型車両として開発されることになるのです。
こんな中途半端な試みは国鉄では初めてです。
まずは足回りから。実用性本意の設計で117系に準じたものになりました。
主電動機はMT54D(120kW)各電動台車に2基ずつ装架。(485系と同じ)
制御装置は電動カム軸接触器式のCS43A。発電ブレーキ付き(485系は抑速ブレーキ付きでCS15)
台車はDT32H/TR69K、485系と同系列の空気ばね台車。
と ここまでは特急電車の485系の脚力とそう違いはありません。
ただ違うのは歯車比。185系は4.82 近郊形113系と同様。対して485系は3.50
高速性能よりも加減速性能を重視しています。
このことは首都圏の過密ダイヤに乗り入れるには極めて重要なファクターです。

特急「草津」S201編成① クハ185形300番台 クハ185-302

185系200番台

200番台は1981年から製造されました。
165系の耐寒耐雪装備や横軽対策を引き継いでいることから200番台となりました。
1982年3月から165系急行だった「あかぎ」で運用を開始、急行「ゆけむり」「草津」「軽井沢」などでも運用されました。
そしてこの年の8月に特急「白根」としても運用されるようになります。
でも彼女たちにはもっと別の大役が待っていたのです。特急列車ではありません。
「新幹線リレー号」です。
1982年6月の東北新幹線開業と同時に「やまびこ」4往復と「あおば」6往復に接続するカタチで大宮から上野まで運行をスタートさせました。
東北・上越新幹線の建設にあたり上野-大宮間の用地買収が難航したため大宮を起点とする暫定開業を余儀なくされた国鉄は上野-大宮間で新幹線連絡専用列車「新幹線リレー号」を運行することとなったのです。
会計検査院は「東北新幹線が東京まで乗り入れた場合は185系は余剰となる」と新車導入に反対したそうです。
そりゃそうですよね。3年後にはいらなくなるものに新車は不要です。
しかし「新幹線がきたぞ!」というワクワク感を115系にリレーさせるのは無理というもの。
新幹線開通後の185系は近距離特急に使用すると懸命に説明して会計検査院を説得されたそうです。
1982年11月には上越新幹線も開業、新幹線リレー号は28往復に増発されました。

1985年3月 新幹線が上野まで延伸開業し「新幹線リレー号」はその役目を終えます。
200番台は上野発着の急行の特急格上げに転用されることになり「新特急」がスタートしました。
「新特急谷川」「新特急草津」「新特急あかぎ」そして「新特急なすの」です。
しかし「新特急」といってみたところで新幹線ができてしまえば最初から脇役です。
さほど需要は見込めないでしょう。
JR東日本に移管された185系200番台はだぶついてくることになります。
新生JR東日本は手をこまねいてはいられません。
1987年10月 臨時特急「モントレー踊り子」をデビューさせます。
前橋から 伊豆急下田間を高崎線・山手貨物線・品鶴線経由で運行する東京スルーの列車です。
湘南新宿ラインの先駆けとなるものです。
上越新幹線と連絡して高崎と長野を結ぶ快速列車「信州リレー号」や 八王子・新宿と成田空港を結ぶ臨時特急「ウイング」。
新宿と日光を結ぶ特急「日光」そして日本海沿岸の海水浴利用者のための臨時快速列車「青海川」など新たな可能性に向け様々な列車がデビューします。
200番台が増備されていなかったら こうした試みはなされなかったでしょう。
田町区のB編成は1989年度に中央東線の狭小トンネルに対応したパンタグラフPS24に交換されました。
1990年1月から運行された臨時特急「かいじ」191号・192号で活用され、1996年には横浜から横浜線経由で中央東線へ直通する臨時特急「はまかいじ」につながってゆきます。
この時、B3・B4・B5編成は横浜線(京浜東北・根岸線)への入線に対応したD-ATC装置の取り付け改造が行われています。
一筋縄では参りません。しかし横浜線に「特急が走るというときめき」が沿線の人々の心を躍らせました。

特急「はまかいじ」B05編成① クハ185形200番台 クハ185-210

特急のエンブレム

彼女は私にこう語って聞かせました。
「私たちは185系200番台は ずーっと 脇役だった。
生まれたときから新幹線の脇役として、JR東日本になってからも251系「スーパービュー踊り子」の引き立て役…。
でも楽しかったのよ。
損な役回りだったかもしれないけど、碓氷峠を越えることもできたし、中央東線の狭小トンネルだって通過できるの。
日本海を見てきたって自慢してた子もいるわ。
D-ATCという保安システムをもっている子もいるの。その気になれば京浜東北線だって走れちゃうんだから…」
「そっか。今もまだ生かされているのは きっと君たちが芸達者だからなんだね」
とこたえると。
「ううん。それだけじゃないの。私たちを支え続けてきたのは特急車両であるという誇り」
と胸元に輝く特急のエンブレムを指さして私にこう言いました。
私は気づきました。
彼女のいう「特急」とは 単にスピードが早いことでもなければ、豪華なしつらえであることでもないのです。

-鉄道車両写真集-
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