「最後の103系」JR九州 103形1500番台 珍車ギャラリー#173 

「最後の103系」JR九州 103形1500番台 珍車ギャラリー#173 

103系という電車は国鉄を代表する通勤用電車です。製造両数は実に3447両。
製造期間は20年と10ヶ月(1963.3~1984.1)に及びます。
「最後の103系」と銘打ちましたが、実のところ最後の103系は赤羽線用に1983.10~1984.1に製造されたモハ103(-787~-793).モハ102(-2044~50)の7ユニットです。
しかしモハ102やモハ103は増結用の中間車です。対して103形1500番台は編成単位の新造車です。
シリーズとしては最後のグループであると言っていいでしょう。
「最後の103系」と考えて問題ないと思います。

1983年当時101系は大量廃車が進んでいました。
素人目には同じような電車が作り出されている一方で廃車が進められているという状態でした。

103系はありふれたよく見かける電車ということで珍しくもないと思われていた電車です。
しかし20年以上も作り続けられていたのですから当然外観的にも差異が生じてきます。
特に先頭車については顕著です。
高運転台の後期形クハ103系や貫通路付きの1000番台.1200番台などは誰が見ても違いは明らかです。
そしてその中でも異彩を放つのが筑肥線用の103系1500番台です。

ドーンデザインによる奇抜なカラーリングもさることながら、国鉄時代のおとなしい塗装でも105系を思わせる1500番台のフェイスは際だった個性派です。

さて、彼らはどういう経緯で誕生したのでしょうか。
1983年。国鉄筑肥線は福岡市営地下鉄と相互直通運転をすることとなりました。
それまで交流電車しか走らせていなかった九州の国鉄線はこれを機に直流の通勤用電車を走らせることになったのです。
ここで導入されたのが103系1500番台です。

1983年はというともう201系が量産されており時代のトレンドといえば電機子チョッパ車でした。
103系1500番台の相方となる福岡市営地下鉄の1000系も電機子チョッパ車です。
福岡市交通局もチョッパ車の導入を望んだはずです。
千代田線乗り入れ用のチョッパ車203系の九州バージョンが登場してもおかしくないところです。
しかし、203系は省エネの高性能車ではありますが車両コストが高くつく車両です。
財政上厳しい折から 当時の国鉄(門鉄局)が チョッパ車を導入する余裕はありませんでした。
加えて姪浜以西となる筑肥線は列車本数も少なくなり福岡市営地下鉄線内とは趣を異にします。
せっかくの回生ブレーキもその電力を使ってくれる電車が近くにいなければブレーキそのものが失効してしまいます。

そんなわけで導入された103系1500番台はスチール製でメカも一世代前の抵抗制御車となってしまいました。
でも車内のアコモデーションは201系に準じており遜色はありません。
また福岡市営地下鉄とあわせてATCを装備(ATC-9型)を装備するなど新しい点もみられます。

福岡市営地下鉄空港線は1984年に地下鉄としては国内初となるワンマン運転を開始。
2004年には全駅にホームドアが設置されました。
しかし103系1500番台は乗入先である地下鉄線内でのワンマン運転には対応しておらず同線内のホームドアとの連動もできません。
このため地下鉄線内で運転されるときは車掌が乗務し通常のドアスイッチの操作とあわせてホームドアを開閉リモコンで操作しています。
せっかく設備投資をしてワンマン化したわけですから福岡市営地下鉄としてはワンマン化対応車である303系のさらなる増強をJR九州に望んでいることでしょう。
しかし前述したようにJR筑肥線は列車本数も少なく地下鉄空港線とはその実情が違います。
特に筑前前原より西、 西唐津までの区間は輸送量は激減し列車は3両編成で十分です。
そこで1989年に登場したのが、3連用改造車クモハ 103-1500番台及びクモハ102-1500番台です。

E16編成① クモハ103形1500番台 クモハ103-1516 撮影場所:筑前前原

またローカル線区間では折り返し時等長時間停車することが多いのです。
車内保温のため4ドアのうち3ドアを締切る機能も装備しています。
トイレについても駅間距離が長くなおかつ列車本数の少ない筑前前原以西の運行にあっては必須のものでしょう。
ローカル線区間にあってはその実態にあった車両が必要なのです。

303系はVVVFインバータ電車で福岡市営地下鉄の新鋭2000系と十分に渡り合っていける電車です。
一方でローカル線区間でも活躍できる多才な103系1500番台はJR九州にとっては重宝な電車なのです。

-鉄道車両写真集-
JR九州 103系1500番台国鉄色JR九州色  303系 筑肥線用の車両たちへJUMP

参考文献;JR全車両ハンドブック 1995
鉄道ピクトリアル 「新車年鑑84.85」1984.10.1985.5

おまけ:トイレ付き地下鉄車両。
注目すべき車両は①号車、103系としては珍しいトイレ付き車両です(2003年より取り付け、新型である303系も)。
なお福岡市営地下鉄空港線は2008年3月に東京メトロ千代田線で小田急60000形「MSE」が運転を開始するまでは日本の地下鉄でトイレ設置車両が走る唯一の路線だったということになります。
(まあ実際には近鉄難波線も地下鉄というべきですが)

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