私たちは1983年に試作車(900番台)として2連×4=8両が新製されました。
試作車は様々なテストを行い、この成果を基に量産車が作られるというのがおきまりの段取りです。
でも713系には量産車が作られることはありませんでした。
私たち713系が生まれた目的は数多く残っていた地方幹線の客車列車を電車化することでした。
でもその当時、急行形電車も数多く余っていました。廃車するにはもったいない新性能車です。
そこで 近郊形車体を載せ替え 再生することになったんです。(717系)
JR九州 713系900番台 D901編成 2連 所属:南福岡電車区 撮影1992.12?:博多
言っておきますが私たちが失敗作だったというわけではありません。
その証拠として私たちに採用されたサイリスタ連続位相制御は 滑らかな加速が可能で電力の損失も小さいことから783系、787系、811系といった娘たちに引き継がれています。
JR九州以外でもJR東日本719系やJR北海道721系などにも採用されているんです。
またモーターの端子電圧を高く取ることができるので出力は150kwと強力です。
私たちに採用されたモーターMT61は783系、787系、811系、719系のみならず 205系、211系といったメジャーな直流電車にも搭載されています。
いわば私たちはJR発足時を支えた電車のゴッドマザーでもあるんですよ。
私たちは全車JR九州に承継されおもに長崎本線・佐世保線で運用されました。
そんな私たちに転機がおとずれます。
私たちは1966年に開業する宮﨑空港線にあわせて配置転換されることになったんです。
配属先こそ鹿児島車両センターですが 運用はほぼ宮崎県に限られます。
宮崎空港線のシャトル列車「サンシャイン宮崎」へ転用されることになったからです。
イメージも一新しました。
Lk04編成② クモハ713形0番台 クモハ713-4 撮影2023.5:南宮崎
「サンシャイン宮﨑」はオレンジの素敵なコスチュームでとっても気に入ってます。
今や新幹線から鉄道に乗り継いで宮﨑に来られるお客様はまずいません。
たいていは宮﨑空港から宮﨑の旅が始まるわけです。
明るい外観だけでなく私たちには485系から譲ってもらった転換クロスシートがあります。
おもてなしの心でお迎えするためです。
大淀川の鉄橋を渡るとき、お客様の顔がパアーッと明るくなるのがうれしくて…。
ロングシートではこうはならないでしょうね。
2008~10年にリニューアル工事が施工され、私たちはこぞって0番台に改番されました。
900番台というものはその後量産車にあわせて改造されます。
新しい番台区分に改められたり量産車の最後に追加されるなど改番されることが多いんですが、新たに0番台としてそれもトップナンバーから再スタートする例は珍しいことです。
そんなことができたのは私たちに量産車がいなかったからなんですが意味もなく改番されたわけではありません。
制御装置が改められたからです。
900番台由来の自慢の制御装置でしたけど 今のお仕事が続けられるならなんの未練もありません。
私たちは強力なMM編成です。多少の遅れもなんとかしちゃう潜在力を持っています。
これも目に見えないおもてなしの心ですよね。
2022年、スチール製の近郊形電車は定期運用から外れてしまいましたが、私たちはもう少し頑張って宮﨑に来られるお客様をお迎えしたいと思っています。
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