国鉄の新性能電車は10の桁でその使用目的を表示していました。
「0」は通勤形電車を「1」は近郊形電車という具合です。
車両を継承したJRはその使用目的に応じた車両でこれを取り替えていきます。
JR東日本の場合、103系、205系といった通勤形電車を継承したのが209系です。
そして113系、211系といった近郊形電車を継承したのが215系ということになるのですが、これは少し極端な車両でした。
なんとオール2階建てクロスシート車両だったのです。
東海道沿線の近郊区間から首都圏への着座通勤に供するという発想は素晴らしいと思います。
しかし2ドア車両で乗客をさばけるほど首都圏は甘くないのです。
JR東日本もそのへんはよく承知していて1989~92年に国府津電車区の113系について基本編成をロングシート化していました。
田町電車区の211系についても、国鉄時代 ロングシート車(2000番台)は付属編成のみでしたが、1988~1991年に増備された125両は基本編成、付属編成問わず 全てロングシートの2000番台。
これらはもう3ドアの通勤電車です。
青春18キッパーである私は熱海から乗り換えた113系にがっかりさせられました。
「首を痛めずに 海の景色に癒やされたくば、グリーン車に乗れということか…」
1994年。JR東日本はE217系をデビューさせました。
高運転台かつ丸みを帯びた個性的なニューフェイスです。
基本編成のうち3両ではありましたがセミクロスシート車が連結されています。(編成表の太字)
総武横須賀線用 E217系 基本11両編成、Y35編成 鎌倉車両センター
←大船方面① 千葉方面⑪→
クハE216_2048-モハE216/E217_2069
-サロE216/サロE217_35-サハE217_2070-サハE217_2069
-モハE216_1035-モハE217_35-サハE217_35-クハE217_35
4M7T 1998.8 新津車両所製 exG車=東急製
総武横須賀線用 E217系 付属4両編成、Y115編成 鎌倉車両センター
←大船方面 増① 千葉方面増④→
クハE216_1015-モハE216_2030-モハE217_2030-クハE217_2015
1996.12 東急製
ただし4ドアというのが気になります。
でも近鉄でも4ドアクロスシート車の2600系などがあります。
1999年12月の改正までに 基本編成11連(4M7T):51本561両 付属編成4連(2M2T):46本184両 計745両 をもって、横須賀線・総武快速線のすべての113系を置き換えました。
東海道線用の113系もE217系で置き換えることが検討されました。
しかしE231系に取って代わられてしまうのです。
E231系はTIMSという列車情報管理システムが導入され 力行・ブレーキ指令はもちろん、室内灯、放送、空調、ドア開閉やパンタグラフ上げ下げ等々にいたるまで あらゆる指令を一括管理できるようになった新世代の系列です。
2000年3月より総武中央緩行線で運行開始したE231系0番台10連は すべてロングシートで5号車にいたっては6扉車。
バリバリの通勤形のロングシート車です。
そして同年E231系近郊形が小山区に配置されるのです。115系を置き換えるためです。
でも通勤形と違って高運転台となり基本編成の①②号車と付属編成の⑭⑮号車はセミクロスシートとしました。
乗客に選択肢が残されたのです。このことは評価すべきです。
E231系近郊形は2000年6月から宇都宮線で運転を開始。
湘南新宿ラインがスタートした2001年12月からは 東海道線、横須賀線にも運用を拡大しています。
当初の編成はTcTMM’TTTMM’T’c(基本10連)+TcTMM’T’c(付属5連)でした。
2004年10月より④⑤号車を2階建てグリーン車としています。
115系に倣い寒冷地仕様でドアを半自動としたため基本区分は1000番台となりますが実際は複雑です。
結果この10連はすべて形式、番台区分が異なることになってしまいました。
どうしてE219系としなかったのか?
JR東日本 E231系近郊形 U528編成10連 宇都宮線用 小山車両センター
←黒磯⑩ 上野①→
クハE231_6028-サハE231_1082-モハE231/E230_1043-サハE231_6028
-サロE231/230_1020-モハE231_1528-モハE230_3528-クハE230_8028
U528:2001.8東急製(④⑤号車はダブルデッカー 2004.9製)
湘南新宿ラインにも使用されます
E219系に、あるいはE217系5000番台としておけばこんな複雑なことにはならなかったのに。
とは思うのですがそうはなりませんでした。
そして国府津区にもこの近郊形が配置されます。
湘南新宿ライン開通の3年後、2004~06年のことでした。
(基本編成10連(K編成)×42本 付属編成5連(S編成)×34本 計590両)
2015年の上野東京ライン開業までは 基本的に宇都宮線-横須賀線直通列車は小山区。
高崎線-東海道線直通列車は国府津区がそれぞれ運用を担当していました。
国府津区10連のセミクロスシート車は4両、対して小山区10連は2両です。
よって編成は同じではありませんでした。
結局、横須賀線・総武快速線=E217系という状態が長く続くことになります。
ところが2004年10月 湘南新宿ラインの列車を増発するため横須賀線の運転本数を削減することになりました。
このことによりE217系の一部が東海道線に転属することになるのです。
F01~03 :基本編成10連(4M6T)+F51~53:付属編成5連(2M3T)の計45両です。
211系やE231系と同じく基本編成10両+付属編成5両の構成に組み替えられています。
セミクロスシート車の旧⑩号車が付属編成へ移動しました。
一時的な移動ではありません。車体の帯も湘南色に改められました。
東海道本線用 E217系 基本10両編成、F01編成 国府津車両センター
←熱海① 東京⑩→
クハE216_2061-モハE216/E217_2001-サロE216/E217_1-
-サハE217_2002-サハE217_2001-モハE216_1001-モハE217_1-クハE217_1
1994年東急製ただし①号車のみ1999年新津車両所製 非貫通車(2054~)
東海道本線用 E217系 付属5両編成、F51編成 国府津車両センター
←熱海⑪ 東京⑮→
クハE216_1001-モハE216_2002-モハE217_2002
–サハE217_1-クハE217_2001 H6.8 東急製
2007~2012年にはVVVFインバータ制御装置をSC41B(GTO)からSC88(IGBT)に更新しました。
私はこのあとE219系がデビューするものだと期待していました。
しかし2012年にE233系3000番台が近郊形として登場してしまいました。
なんだかんだいって10年は活躍したのですが E217系の東海道線の運用は2015年に終了、総武横須賀線に戻されます。
そして総武横須賀線のE217系は2020年12月より運用離脱、その後も廃車が進んでいます。
そこで、後継となるのは なんと E235系1000番台でした。山手線と同じE235系です。
グリーン車こそ付いていますが セミクロスシート車もなくなっています。
マスクも山手線と同じで色が違うだけ…?。
JR東日本にあって もはや系列はただ世代を表すだけのものとなってしまったのでしょうか。
E219系が日の目を見ることはもうありますまい。
編成表は 全てJR電車編成表08 夏号を参照しています。
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