「用意周到」JR西日本 289系 珍車ギャラリー#311

「用意周到」JR西日本 289系 珍車ギャラリー#311

鉄道車両の系列(形式)は適当に番号を割り当てているわけではありません。
JRグループも会社ごとにそのルールにのっとって付番していてJR四国以外は概ね国鉄時代のルールを引き継いでいます。

今回、採り上げました289系を例に挙げますと…
200番台=直流、80番台=特急用 となり289系は特急用直流電車と相成ります。
さてこの289系は車体は683系とよく似た形態で…というか、実はそのもので
北陸新幹線開業に際して余剰となった683系を改造、直流区間に転属させたものです。

289系改 FG401編成① クロハ288形2000番台 クロハ288-2001 特急「こうのとり」

JR西日本 289系改 FG401編成 4両編成、特急こうのとり用
←大阪④                ①城崎温泉→
クモハ289_3501–サハ288_2201-モハ289_3401–クロハ288_2001
2015.6 :289系に改造 2016年12月:交流機器を撤去、クロ288形をクロハに
参照:JR編成表2018年夏版 撮影2018年5月 撮影場所:大阪駅

かつて金沢区から福知山区へ転属した485系が交流関係の機器を取り外して直流化改造されたのと同じパターンです。
その際は183系に仲間入りしました。183系800番台です。
このように転属先に合わせて改造するのは何も珍しいことではありません。
ですが、新系列として再デビューするのは珍しい事例です。
かつて国鉄が寝台特急電車583系を近郊形電車に改造して419系や715系をデビューさせて以来ということになるでしょうか。
少なくともJRの特急ですべて中古車であるのにもかかわらず新系列が起こされた例はありません。


北陸新幹線の開業により「サンダーバード」は運転区間を縮小。
「はくたか」は働き場所を失いました。
結果多くの681系、683系が余剰車両となり、それらは「しらさぎ」用に転用。
それまで「しらさぎ」に使用されていた683系2000番台5連は直流化改造されることになりました。
これで「こうのとりetc」「くろしお」で運用されていた381系を置き換えることにしたのです。
こうして誕生したのが289系です。要は玉突きで捻り出されたわけです。
「くろしお」編成として吹田総合車両所京都支所に40両(6連×5と3連×3+1)
「こうのとりetc」編成として福知山電車区に42両(4連×6と3連×6)
合計82両が投入されました。

683系はアルミダブルスキン構造を採用し 制御装置もVVVFインバータ(IGBT)の高性能車両です。
なかでも2000番台は2002~03年製です。引退させるには早すぎます。

JR西日本は北陸新幹線登場以後の683系について周到な準備をしていたものと思われます。
というのも転属先でのフレキシブルな運用を考えMMユニットではなく1M方式としています。
小単位編成を可能にするためです。
またT車についてもユニットの前後中間を問わずどこにでも組み込めるのという仕組みにしていました。

「しらさぎ」の5連(基本編成)×12本は「こうのとりetc」向けにサハ683形を脱車。
4連×6本に組み変えました。
「くろしお」向けにはこのサハを増結しました。
6連×5本と予備車1です。

「しらさぎ」3連(付属編成)×9本は「くろしお」向けに3本
「こうのとりetc」向けに6本を振り分けました。

車番については、種車のそれを引き継ぎ2000番台3000番台となっています。

さて「くろしお」と「こうのとり」についてはすでに287系が投入されていました。
そればらば183系800番台に倣い287系2000番台にすりゃあいいじゃないか。
というところなのですが、実はそうはいかない事情がありました。

287系 *HC606編成 特急「くろしお」

撮影場所:弁天町

287系は特急「こうのとり」用として「北近畿etc」用の183系800番台を置き換えるべく2011年3月に登場しました。
4連×7(FA01~07)と3連×6(FC01~06)の計46両です。

車体は衝撃吸収構造を採用するなどして先頭部は少し下ぶくれになっていますが、683系と同様アルミダブルスキン構造を採用し基本は同じです。
また制御装置もVVVFインバータ(IGBT)でこれを各M車に搭載しているのも同じです。
ただし注目すべきは、321系や225系などで採用された0.5Mシステムの採用です。
これにより全車両が電動車となってしまったのです。
そう、システムが違うのです。同じ系列にはできません。よって289系が誕生することになります。
かつて福知山へ転属した485系が交流機器を取り外し直流化改造され183系に仲間入りしました。
ともにMMユニットであった彼らとは違うのです。

それはさておき、今回も取り外した交流機器を直流電車に転用するのでしょうか。
当面 交流機器はそのまま取り付けられたままになっており使用停止にしているだけでした。
しかし、289系は2016年末から交流機器を撤去しはじめました。

参照→珍車ギャラリー 福知山電車区の183系たち


七尾線電化の際、登場した415系800番台は485系から取り外した交流機器を113系に搭載しました。
しかし種車である113系には新製後50年を超える車両もあるため老朽化は深刻です。

参照→珍車ギャラリー クモハ415-801

すでに413系も七尾線用として運用されています。
しかし、その413系も 国鉄→JR西日本の移行期(1986年3月~1989年11月)に製造され25~29年も経っているのです。
加えて413系の交流機器は471系(1962年登場)からの流用です。
なんと今年で製造後54年ではありませんか。(注:この記事は2016年3月に書き上げたものです。)
遠からず置き換えを考えなければなりません。

その際に、この683系の直流化で余剰となる交流機器を流用するのが得策です。
こうした交流機器の流用がどれほどのコストダウンに繋がるかはわかりません。
でも私はJR西日本は時機を待っているのだと思います。

「こうのとり」の前身である「北近畿」用に導入された485系も当初は交流機器を搭載したまま使用停止しただけで登場しましたが
113系にこれを譲り415系800番台を登場させました。

参照→鉄道車両写真集 485系 特急「北近畿」

今回は形式を変える時機を早めただけのことではないでしょうか。
415系800番台の代替車両として221系に白羽の矢が立つのか。はたまた223系なのか。
それはわかりません。
しかし221系or 223系に683系2000番台の交流機器を持つ(仮)523系が登場する、そんな日が来るような気がします。
現在 こうのとり4連は2M2T ですが くろしお6連は2M4Tと多少貧弱に見えます。
しかし、もともと683系のモータはかなり強力です。このままでも問題ありません。
むしろ「こうのとり」編成を1M3Tにして221系を交流化にあわせVVVF化してしまう。
というのもありか。という気がします。
また、耐寒耐雪仕様の683系です。
そのまま足回りを221系or 223系に取り込んでこれを(仮)523系とし、
221系or 223系の足回りを289系に取り付けるというのもおもしろいと思います。
それだけでは終わらせない「これから」があると私は思っています。

JR西日本 289系 J05編成 6両編成、特急くろしお用
←京都⑥                ①新宮→
クモハ289_3521-サハ289_2512-サハ288_2212
      -モハ289_3412-サハ289_2511-クロ288_2012

参照:JR編成表2016年夏版 撮影2016.02      2015.6 改造。


追記:2022年12月23日

前述の415系800番台は2020~21年に521系100番台2連の導入によって置き換えられ運用を離脱してます
221系のリニューアルとタイミングは合っていました。
でも もはや4連が必要とされるだけの需要はないようです。
また221系2連は編成を組み替えられて存在しません。
再度 2連をひねり出すこともできそうに思いましたが また中古車を七尾線に投入するというもの批判を受けそうです。
また交流機器の値段がこなれてきたということもあるのでしょうか。
そんなわけで 今のところ2016年に289系から取り外された交流機器が転用されたという話は聞きません。
少し拍子抜けしています。
一方、取り外された機器が元に戻され、2019年に683系として復活したものもあります。
(R14、15編成3連)
交流機器を廃棄したわけではなかったようです。
まだ 「これから」はある。と私は思っています。

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183系 700.800番台  485系 北近畿用 
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近キト参考文献:鉄道ジャーナル:2016年1月号 「289系電車デビュー」

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