「完全な新車」江ノ島電鉄 1500形 珍車ギャラリー#447

「完全な新車」江ノ島電鉄 1500形 珍車ギャラリー#447

江ノ島電鉄には1000番台の車両が6編成12両存在します。
私の基礎資料である「私鉄車両編成表」では12両すべてがデハ1000形となっています。
江ノ電のHP「江ノ電博物館(車両図鑑)」では1000形(1001-1051号車~1501-1551号車)です。Wikipediaでは1000形とし1001-1051編成~1502-1552編成と区分します。
江ノ電の見解に近いですね。
鉄道ピクトリアル「関東地方のローカル私鉄」#418(1983年)ではデハ1000形、デハ1100形。
鉄道ピクトリアル「関東地方のローカル私鉄」#620(1996年)では1000系とし1000形+1050形~1500形+1550形としています。
私が今回、主な参考文献としている「江ノ電―懐かしの電車名鑑( JTBキャンブックス)」湘南倶楽部編(2003年)では1500番台のみ1500形とします。
執筆者の見識で違いがあるのです。

それでは本題にはいります。1000形とはどんな電車なのでしょう?
江ノ電はかつて単行ボギー車を100形、2連固定を200形とし、それらを集約するカタチで連接車となる2連を300形としてきました。
しかしそれらの多くは台車や電機部品の一部を流用した改造車で 不足分は移籍車で補ってきました。「完全な新車」となると1931(昭和6)年製の110号以来 永く途絶えていたのです。
そんな江ノ電が1979年に48年ぶりに登場させたのが1000形です。以降1987年に登場の1502編成まで8年間の間に6編成12両製造されています。

私はこれまで1000形を1000番台 1100番台 1200番台 1500番台 としながら 1次車1001編成 、2次車1101編成…と併記してきました。以下、この表記でお話をすすめます。

1000形1次車(1000番台)は「江ノ電 48年ぶりの完全新造車です」と江ノ島電鉄がHPでも謳っています。でも江ノ電にはオリジナルの新車 旧500形が1956年に誕生しています。台車や電気部品の一部が流用されているとはいえ江ノ電にとっては生え抜きの虎の子電車だったわけです。私にしてみてもずーっと江ノ電のイメージリーダーだったのは旧500形でした。
そんな旧500形の存在を無視するようなコピーを出したのはなぜでしょう。
それは1000形を「江ノ電復活のアイドル的存在」と位置づけたかったからだと思われます。積み残しが出るという昨今からは考えられないですが、江ノ電でも利用者が低迷。バスへの転換が検討された時期があったのです。
1000形はこれまでの旧型車とは一線を画したスマートなデザインの車体です。搬入の際、深夜にもかかわらず多くの地元の人々が集まり歓迎したそうです。期待の新人だったのですね。外見だけではありません。ブレーキはHRD-1で電気指令式です。運転台も近代的なワンハンドルマスコン。
鉄道友の会でも人気を博しブルーリボン賞を受賞しました。
しかし 江ノ電はツリカケ駆動の旧形車ばかりだったこともあってか、1000形はツリカケ駆動の旧性能車としてデビューしています。冷房もついていませんでした。

そこで登場したのが2次車(1100番台)です。1981年にラインデリアを装備した冷房準備車として落成しました。補助電源がMGからSIVに変更されていますが 1000番台と車体足回りともにほぼ同じです。
翌年の1982年には冷房改造され 江ノ電初の冷房車となっています。なお冷房装置は路面電車に広く採用されている定番と言っていい三菱電機製CU77系です。
冷房準備車といえば国鉄115系1000番台などが思い出されます。結構長く準備状態でした。まさか1100番台が1年後に冷房化するとは思いもしませんでした。

そして 83年製の3次車(1200番台)は 冷房車でデビューすることになるのです。
1100番台同様 1000番台とほとんど同じ車体、足回りですから 1201編成は日本で最後の新製ツリカケ駆動車は冷房車でデビューしていることになります。(ただし1067mm軌間の鉄道線ににおいて)
非冷房車だった1000番台は86年までに、1100番台は82年に冷房改造されていますのでもはや区別するに及ばないと考えることもできるでしょう。
あえて識別するとすれば前照灯が角形となっているところくらいでしょうか。
1200番台は2011年に車体をリニューアルしています。
300形305Fはリニューアルを機にツリカケ駆動からカルダン駆動に改造されましたが1000形はツリカケ駆動のままです。このまま1200番台は日本で最後の新製ツリカケ駆動車になるのでしょうか?
それはさておき。こうして1000形は7年ほどで「完全な新車」として足並みを揃えたのです。

ところが1000形最終モデルとなる86年製4次車(1500番台)に至っては なんとカルダン駆動車となるのです。当然 制御装置もモータも台車も違います。
非冷房車も冷房化された今、ほぼ変わらぬ外見とはいいながらツリカケ駆動とカルダン駆動が 同一形式で混在することになりました。駆動方式のみならずブレーキも一新され 発電ブレーキ付き電空併用ブレーキとなりました。 塗装も白地に赤とオレンジの帯を配したものになりました。1500番台は一般公募により「サンライン号」呼ばれることになります。 たしかに車体の3サイズはすべて同じ。定員座席数も同じです。とはいえ今までの1000形とは違う「完全に新車」です。
1990年に2000形が登場するまでは唯一のカルダン駆動車でした。1500形同士で4連を組むことが多かったように思います。今までの1000形とは違うという意識があったからだと思います。
「江ノ電―懐かしの電車名鑑( JTBキャンブックス)」では1500番台を1500形としています。私もこれに倣いたいと思います。

江ノ電の車庫はずーっと極楽寺です。山がすぐ後ろに迫っていて拡張することは困難です。
ということは限られたスペースで何とかしなければならないということです。
そのためには余分な作業は排除しパーツも備品も統一していかなければなりません。
1500形のためだけに特別なものを用意する余裕はないのです。新たに準備したものは今後増備する車両でも使うということが大前提となります。
1500形の足回りがいかによくできたものであるかは 2000形をはじめ後発の新車がこぞってこれを踏襲していることからもわかります。
調子が悪いからといって遊ばせておくわけにはいきません。1500形は「完全な新車」でなければならないという使命を背負って生まれてきたように思います。

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