「東京行き」JR東海113系 T編成(JR東日本乗入車 )珍車ギャラリー#170

「東京行き」JR東海113系 T編成(JR東日本乗入車 )珍車ギャラリー#170

違う鉄道会社の車両が混結して走るという例はあまりありません。私鉄同士では、
東武鉄道6050系+野岩鉄道6050系(61100番台)
東武鉄道6050系+会津鉄道6050系(61200番台)くらいでしょうか。
JR関連でいうと。
JR四国2000系+土佐くろしお鉄道2000系があります。
ともに同系列の車両で よほど注意深く見ないと別会社と気付くことはありません。
なお前者は東武鉄道に後者はJR四国に車両の管理も一任されています。
異種混結となると かつて JR西日本183系800番台+KTRタンゴディスカバリー
というのもありました…。

 

もっともJR同士となりますと話は別です。
かつて寝台特急であった「さくら」「みずほ」は①~⑧号車が JR東日本(品川運転所)所属、⑨~⑭号車はJR九州(熊本客車区)所属の14系客車でした。
ついでに機関車はというと東京-下関間はJR西日本(下関運転所)のEF66形、下関-門司間は、JR九州(大分運転所)のEF81形。
九州内はもちろんJR九州で ともに大分運転所のED76形が担当しました。
JR各社が総出で協力し合っていたのがわかります。
しかし調整は結構難航したのでしょう。JRの長距離列車はその後 激減していきます。

長距離列車ばかりではありません。毎日利用する通勤列車にも混結はありました。
国鉄時代、静岡運転所に配置された113系4両編成(17本)です。
彼女たちはT編成と呼ばれ1986年11月から東海道本線東京口に乗り入れていました。
JR東海に引き継がれたT編成はそのまま東京駅まで乗り入れ JR東日本の113系と併結運転を行ってきました。

JR東海 113系 T6編成④ クハ111-2733 「快速アクティ-」

なぜT編成が必要とされたのでしょう。
国鉄時代、静岡県内の東海道線ローカル列車は4連以上が基本でした。
しかしJR化が迫る頃にデビューした211系は基本が3連。
もと飯田線用の119系(2連)も「するがシャトル」として本線にデビューと短編成化が進みます。

対して 首都圏の混雑は増加の一途を辿ります。
11両編成には増結の4連が欠かせない存在となってきました。
そこで余剰気味であった静岡区113系4連にお呼びがかかったというわけです。
加えてT編成は伊東線から伊豆急行線に乗り入れる運用にも使用されました。
ここでは4+4の8連が基本でしたが4連でも使用され手頃な長さが重宝されたようです。
JR化にあたり  これらT編成をごっそり国府津区に移籍させるという手もあったかもしれません。
しかし すでに368両という数を抱えていた国府津区にあっては 新たに68両を一気に引き受けるだけの余裕はありませんでした。
T編成は静岡区のままJR東海が承継することになります。

さて1993年10月。
JR東日本は 東京 – 小田原間でATS-P形の使用を開始する旨通告してきました。
T編成(JR東海)も同様の対応工事をしないわけにはいきません。
1992~94年にかけJR東日本と同様のATS-P取付改造が施工されることになりました。
これに合わせて全車両に110km/h運転対応のブレーキ力向上工事が施工されています。
JR東日本はいざ知らず、JR東海ではT編成だけが対応すればいい話です。
なので他編成と区別できるよう改番することになりました。(改番は1994年2月)
東京側(奇数向き)クハ111形は700番台(2000番台車は2700番台)
それ以外の車両は600番台(2000番台車は2600番台)に改番されました。

番号の対象は以下の通りです。

東京側 ⑮号車 (奇数向き)クハ111形
クハ111-203・204・206・207・209・213・221・238・241・247・251・195・197・
→703・704・706・707・709・713・721・738・741・747・751・795・797
クハ111-2107・2122・2133
→2707・2722・2733

静岡側 ⑫号車(偶数向き)クハ111形
クハ111-508・509・510・511・512・513・514・519・524・530・531・542・544・546・
→608・609・610・611・612・613・614・619・624・630・631・642・644・646・
クハ111- 2022・2032
→ 2622・2632

⑬/⑭号車 モハ113/112形-
モハ113/112-302・307・233・234・247・248・249・254・276・277・280・288・
→602・607・633・634・647・648・649・654・676・677・680・688・
モハ113/112-2075・2084・2087・2097・2098
→ 2675・2684・2687・2697・2698

ご覧いただければおわかりいただけると思います。
車号は百の位を6、7に変更しただけなので 700番台に元番号と順番が入れ替わる
つまり古い電車なのに番号だけは若いという車両が発生しています。(太字)
それだけではありません。
この改番で113系の700番台と2700番台があらたに起こされたのですが、
113系の700番台と2700番台は国鉄時代にすでに存在しています。
湖西線、草津線むけに作られた耐寒耐雪装備の113系です。
できれば空いていた600番台で統一したいところです。
しかし600番台で統一することができなかったのは種車の番号を残したことに尽きます。
かつて湖西線、草津線むけの113系700番台と2700番台においては 偶数向きクハ111形を区別する際、+50することでこれを解決したのですが、T編成の場合、251・195・197の3両がいるためにその手は使えませんでした。

113系の700番台と2700番台はJR西日本の所属となり 1991年に高速化対応工事を施された際に+5000を加えたカタチで改番されています。
よって1994年当時  700番台と2700番台はすでに存在していなかったので  結果として113系は同時に番号が重複することはありませんでした。

JR東海は合理的な改番をしたということになるでしょう。
まあ、もとより重複しても何の問題もなかったでしょう。
JRとなり番号の付与も基本的にはJR各社独自の裁量でなされるようになりました。
事実、ジョイフルトレインには重複する番号の車両が存在します。
でも国鉄時代なら番号の重複はもとよりその可能性をふくむ改番もあり得ないことでした。

113系の700番台と2700番台は本来、湖西線、草津線むけに作られた耐寒耐雪装備の113系です。
しかしJR東海には湖西線も草津線も存在しません。
JR東海の113系700番台と2700番台はあくまでJR東日本乗り入れ用のT編成を区分した車番なのです。

T編成は 2004年10月から始まったJR東日本E231系の投入による国府津区の113系の置き換えにあわせ東京口での運用を終了しました。
その後は しばし自社線内のローカル運用で使用されたT編成でしたが  その際元番号への復帰することはありませんでした。
首都圏での過酷な運用がたたり 加えてJR東海線内で活躍する機会に恵まれないT編成は2000番台でさえ、他の113系より一足早く、2007年までに全車廃車となってしまいました。
もはや、T編成であったということ以外にこだわるべきものは何もなかったと言うことになるのでしょう…。いや

東京行き 15両編成の先頭に立つことが私たちの使命でした。その誇りを抱いたまま最期を迎えられたことを感謝しています」
彼女たちはそんな思いで最後を迎えたに違いありません。

JR東海 113系 T7編成 クハ111-738 撮影:有楽町

ところで、なぜJR東海は東京乗り入れを継続しなかったのでしょう。
東京-熱海間はJR東日本屈指のドル箱路線です。
そこへ出稼ぎに行くわけですから相応の実入りはあったはずです。

うがった見方かもしれませんが、私にはJR東日本がJR東海をドル箱路線から駆逐したいという思惑があったのではないか。
と考えています。
というのもJR東日本が 113系の後継である近郊形車両にJR東海が合わせてくるようなことは よもや考えられないE231形を採用したということです。
まずドアの数です。JR東海は113系の後継となる近郊形車両に3ドアを採用しています。
しかし、JR東日本は4ドア車であるE231系を後継車に採用したのです。
加えて 編成の構成です。E231の先輩格にあたるE217が113系と同じ基本11連+増結4連であるのにもかかわらず 東海道線用のE231系は基本10連+増結5連となりました。

静岡区で短編成を中心に運用しているJR東海にすれば5連を自社内で運用するのはやっかいです。
JR東日本管内での限定運用となればJR東日本の言いなりになるしかしようがありません。
加えて もはや3ドアの313系では乗客の支持を得られません。
さすればJR東海所属のT231系?それはさすがにプライドが許さなかったようにも思います。
新幹線品川駅開業(2003年9月)に向けても JR東海はあまり既得権を強く押し出せなかったということもあったかもしれません。

JR東海は在来線において東京駅から撤退することとなりました。

*この記事は2010年3月に記したものがベースとなっています。


補注 2000年にT編成を解かれたT編成の一部については、、
先頭車が元番号に戻されています。

クハ111-797・704・751、611・619・622
→197・204・251、511・519・522

-鉄道車両写真集-
JR東海 113系T編成(JR東日本乗り入れ用 ATS-P形搭載車 )
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参考文献;「JR全車両ハンドブック 1995」 1995.8

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