JR北海道は発足当時からイベント列車には積極的でした。
そのなかでも北海道らしくかつ異色の存在だったのが 座席でバーベキューが楽しめるという車両。
その名も「バーベキューカー」です。
2000、01年に各1両 ナハ29000形(ナハ29001, ナハ29002)が製作されました。
「カートレイン」に使用されていた貨車:ワキ10000形からの客車に改造されました。
よって「ナハ」です。なお29000は肉(ニク=29)に由来するとか。なかなか笑わせます。
きっと遊び心に溢れるスタッフさんがバーベキューカーを企画したに違いありません。
車内のボックスシートやテーブルには難燃性の木材が用いられました。
そうそうテーブルの柱なんですが なかなか凝ったデザインです。
なんとこれ お役御免となったエンジンのカムシャフトです。
冷蔵ショーケースや手洗い設備の他、電源装置や非常口も設けられました。
台車、台枠は種車のものが流用されていますが、車体はトロッコに準じた形状となりまた妻面には 客車への貫通路を設けています。
機関車牽引のノロッコ号編成に組み込まれるのが本来の使われ方ですが、キハ40系などとの併結運行も可能となっています。
2000年に「狩勝パノラマノロッコ号」としてデビューしました。
ナハ29000形 ナハ29001 バーベキューカー
ナハ29001 ← ワキ10152 2001年7月改 釧路に配置 2018年廃車 撮影2010.9:釧路
ポリカーボネート製簡易窓を取り付けました。
「くしろ湿原ノロッコ号」に起用されたトロッコ車両はトラ70000形 無蓋貨車をそのまま利用したオープン車両です。
バーベキューカーもオープンというわけにはいかなかったのでしょうか?
運行期間を少しでも長くするために窓を用意するのはわかります。
でもせめて着脱式にして欲しかった。
北海道の大自然に直接触れながら野趣溢れるBBQに舌鼓をうつ。
これこそ最高の贅沢ではないでしょうか。
当初は炭火の使用も検討されたそうです。当然そうでしょう。
しかし、防火上の見地から電気式のホットプレートとされました。
ホットプレートと侮ってはいけません。
これを10台フルパワーで稼働するには相当の電気が必要です。
ディーゼル電源装置を2基搭載しました。
スタッフはそこにビールサーバーを設置したかったに違いありません!
ナハ29000形 ナハ29002 バーベキューカー「富良野・美瑛ノロッコ号」
ナハ29002 ← ワキ10165 2001年7月改 釧路に配置
2018年廃車 撮影2014.7:旭川
窓上段の開口部は拡大されましたが いかがでしょう。車窓を楽しむ窓配置とは思えません。
ポリカーボネートの窓にこびりついたBBQの油煙は容易には取り除けません。
当初、想定した爽快感とは遠く離れたモノになってしまった気がします。
実際に利用した方の感想はどうだろうかとネットで検索しましたがほとんど見当たりません。
「増毛ノロッコ号」ではバーベキュープランが販売され留萌駅停車時にホットプレートで海鮮などBBQを楽しめた。という記事がありました。
こう言っては何ですが留萌駅の構内は殺風景です。それもホットプレートで…。
ワクワク感溢れるアイデアの果てをみる思いで…哀しくなってしまいました。
ナハ29000形 ナハ29003「富良野・美瑛ノロッコ号」
ナハ29003 ← ワキ10062 2003年6月改 旭川に配置。
2015年廃車 撮影2014.7:旭川
2003年にはナハ29003が「富良野・美瑛ノロッコ号」用に製作されました。
調理設備はなく、もはやバーベキューカーとはいえません。
おそらく 当初はバーベキューカーにするつもりだったと思われます。
鉄道車両において「安全」は至上の課題です。
火災を恐れて ホットプレートにかえる。火の粉の飛散を恐れて窓を設置する。
においの苦情が出ないように広い駅の構内に停車させたままBBQをする。
様々な声に対応すべきなのはわかります。でもSLでも同じではないですか。
東武鉄道は「SL大樹」を運行するにあたり沿線の理解を得るために苦労されたと聞いています。
JR北海道のスタッフに熱意が足らなかったとは決してもうしません。
しかし 事なかれの安全至上主義に押し切られてしまったような気がしてならないのです。
参考:JR東日本 カートレイン ワキ10108
撮影1988.7:北大宮
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