「海峡を越える準備はしていました」 JR東日本 E751系 珍車ギャラリー#362

「海峡を越える準備はしていました」 JR東日本 E751系 珍車ギャラリー#362

E751系は 常磐線特急用E653系 交直流特急電車を交流専用車にしたものと考えて良いでしょう。
2000年3月、盛岡 – 青森間の特急「スーパーはつかり」としてデビューしました。
本州最北の地を走るために 扉部分の機密性をUP。E653系より強化された暖房機能を有しています。
(なお2006~07年にかけ全編成に足回りの耐寒強化改造が施工されています。)
制御方式はIGBT素子による3レベルPWMコンバータ・インバータ制御。
主電動機・電動車ユニットなどの構成はE653系と共通で性能面でもE653系とほぼ同じです。
1999~2000年に 近畿車輛・東急車輛製造で6連×3本=18両が製造されました。

E751系交流用特急電車 A102編成① クハE751形0番台 クハE751-2 特急「つがる」

JR東日本 E751系 「つがる」用 6両編成、A102編成 青森車両センター
←青森⑥                弘前、八戸①→
クロハE750-2_モハE751-2_モハE750-2_モハE751-201_モハE750-201_クハE751-2
参考 JR電車編成表’08 夏号             撮影2009.3:青森


2002年12月の東北新幹線 八戸延伸以降は特急「つがる」として八戸以北で使用されました。
さてその際485系が 青函トンネルを通り八戸-青森-函館の「白鳥」に転用されたのに対しE751系は青森止まりでした。
当時海峡線内で使用されていた保安装置(ATC-L型)を搭載してなかったためだそうですが、準備工事は施されているのです。

JR北海道ではこのとき789系「スーパー白鳥」をデビューさせているのですから、JR東日本でも最新のE751系をここで投入するのが自然と思われます。
なぜ、これを機にE751系にATC-Lを搭載し函館乗り入れをしなかったのでしょう?
加えてE751系の数が(6連×3本=18両)とあまりに少ないのも不思議ですね。

ここに至るまでの経緯を振り返ってみます。
JR北海道が1988年3月の海峡線開業にあたり用意したのは寝台列車を除くと快速「海峡」号です。
これは客車列車です。50系、51系客車の改造車で電車ではありません。

特急は…と言うと「はつかり」です。「はつかり」はもともと上野と青森を結ぶ特急列車です。
東北新幹線が盛岡まで開業した際に盛岡-青森間の特急列車に改められました。
これを函館まで延長運転させるわけですから、当然JR東日本が運行することになります。
「はつかり」に充当されたのは青森区の485系1000番台。
うち6連×6本(+増結用MMユニット×6)=48両に 海峡線乗り入れ改造が施されました。
のちに3000番台も加わり海峡線の特急はJR東日本が一手に引き受けていたのです。
JR北海道としては悔しい思いがあったに違いありません。

この体制が十数年続いたのちの2000年3月。
JR東日本は、盛岡 – 青森間に特急「スーパーはつかり」をデビューさせることになります。
これにE751系が充てられるのです。
うーむ。「スーパー」というわりには函館まで運行してないのですね。意外な気がします。
さすれば6連×3本でやりくりできたのも納得できます。
要は大量導入してまだまだ働ける485系を淘汰するには時期尚早だったということでしょう。

そしてその2年後の新幹線八戸延伸開業です。
JR北海道では快速「海峡」を全廃する代わりに特急「スーパー白鳥」をデビューさせます。
青函連絡船に比べはるかに時間短縮となった海峡線ですが すべて特急というのは利用者にとっては負担増です。
でも北海道新幹線の開業も見据えた時JR北海道は海峡線での大幅増収を図らざるをえなかったのです。

JR東日本はというとこの時「はつかり」を改め「白鳥」としました。
ならばここで、JR東日本でも「スーパー白鳥」をE751系で導入したいところです。

しかし、JR北海道はこれを機に虎の子の新車789系を40両導入しているのです。
フラッグシップは譲れない。

結局、このことでE751系が不遇を託つことになるのです。

東北新幹線が新青森までの全線開業した2010年12月以降「白鳥」と「スーパー白鳥」は運転区間を「新青森-函館」に短縮、特急「つがる」は青森 – 秋田間の運転「485系(3連:かもしか編成)」となりE751系は一旦運用を離脱。
2011年4月以降、4両編成に短縮した上で再度「つがる」に使用されることになりました。
この時 編成から外れた0番台のMMユニット6両は増結用として残されたものの2015年11月にあわれ廃車となりました。わずか15年で廃車。

国鉄時代にデビューした185系が、2019年の今もなお特急として活躍しているわけです。
「どうにかならなかったか」と思ってしまいます。
もう少し数が揃っていてかつ交直流電車であれば「いなほ」として転用…。
いや、185系を置き換えることもできたかもしれません。

だとすれば、最初からE653系で増備すべきだったのかもしれませんね。
でもそれではJR北海道にプレッシャーを与えることはできなかった。
というのは考えすぎでしょうか。

この記事は2019年1月に書いたものです。

-鉄道車両写真集-
JR東日本 E751系 つがる へJUMP

 


参考文献(鉄道ピクトリアル 2000年10月号 #692,
「鉄道車両年鑑」P32~34)

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