JR東日本の253系は、都心と成田空港を結ぶ空港連絡特急=NEX(成田エクスプレス)でおなじみの特急電車です。
早いもので1991年3月の営業開始から17年の歳月が経過しました。
私には老朽化が目立つようには感じられないのですが、
ライバルの京成スカイライナーが2010年の成田新高速鉄道線開業にあわせて新型車両に置き換えられることから、
253系NEXについても2009年秋をめどに全車、新型車両E259系に代替されることが、この2月 JR東日本のHPでも明らかにされました。253系NEXの活躍が見られるのもあとわずかです。
*この記事は2009年4月に書いたものです。
253系での「成田エクスプレス」は2010年6月末をもって運行を終了、現在全列車がE259系での運行となっています。
JR東日本 253系200番台 Ne202編成 N’EX
JR東日本 253系 成田エクスプレス Ne202編成 6連 鎌倉総合車両センターー
←成田空港⑥ 池袋,大船①→
クロ253_202-モハ253_302-モハ252_202-サハ253_202-モハ253_202-クモハ252_202
*Ne201,202編成 界磁添加励磁制御
参考:JR電車編成表2005年夏版 撮影2011.8:千葉
さて 空港連絡特急の顔ともいうべき253系NEXですが かつて成田空港へのアクセスは リムジンバスか、京成のスカイライナーしかありませんでした。でもリムジンバスは高速道路の渋滞で時間がかかり 一方スカイライナーも成田到着後に空港ターミナルビルへは連絡バスの乗り換えが必要だったため 都心と空港のアクセスの悪さが問題になっていました。
そこでこのような問題を打開するために「成田空港鉄道」が1988年10月に設立。
旧成田新幹線の未整備施設を活用して成田~成田空港間の新線が建設されました。
この結果、ようやくJR東日本は京成電鉄と共用する形で 成田空港ターミナルビル直下への乗り入れが実現させたというわけです。
千葉駅を経由することから やや遠回りとなり運賃でも京成に後れをとるJR東日本は京成スカイライナーに打ち勝つ魅力をアピールしなければなりませんでした。
コンセプトは「価値ある移動空間」。
253系NEXは、空港連絡特急専用車という位置づけでデビューし室内構成も他の特急型電車とは大きく異なります。
普通車には4人掛ボックスシートが並び、グリーン車は 1+1列シート配列、1+2配列シート、または4人掛個室となりました。
空港利用者 特に国際線旅客が乗客となることから とりわけゆったりとした仕様となっています。
また、大型の荷物置き場も設置されました。
(5次車においては 4人掛ボックスシートではなく回転リクライニングシートに また、1+1列シート配列は2002年以降のアコモ改造で無くなっています)
次に走行ルートルートです。
上野で終点となってしまう京成スカイライナーに対し JR東日本はそのネットワークに活路を求めました。
需要に合わせて東京駅で分割併合を行い 横浜・大船方面へ向かう列車と、新宿・池袋・湘南新宿ラインを経由し 大宮、あるいは中央線を経由して八王子、そして高尾などにもその足を伸ばしています。
足回りはというと211系ベースの界磁添加励磁制御方式となっていて新鮮さはありませんが、最高速度は130km/h。
総武本線ではその性能をいかんなく発揮し遠回りはしていても所要時間で京成スカイライナーに後れをとることはありません。
努力の甲斐あって、成田エクスプレスはその登場以降、空港旅客の増加と共に順調に利用客も増やし続けます。
当初は3編成のみで その組み合わせでもって6.9連を組んでいたものが6両編成が基本となり 最長12連を組む列車が走る程に成長しました。
2008年3月のダイヤ改正では 品川発の列車2往復が増発され成田エクスプレスの運転本数は26往復に増発されています。
さてそんな成長途上に、5次車として追加されたのが、253系200番代(6両編成×2本)です。
2002年4月に新製されました。
折しも2002年は、FIFAワールドカップが開催された年ですが、これに伴う輸送力増強というよりは、
これまでNEXが高い乗車率に支えられてきたこと。
そして成田空港の滑走路増強により今後も需要増が見込まれることがその背景にあったと申せましょう。
さてそれにしても2002年といえば JR北海道では789系が、JR東日本でもE257系が量産されていた時代です。
制御装置は、当然VVVFインバータ制御。
253系も久々の増備車両ということで足回りは一新…と思いきや、
なんと従来型の界磁添加励磁制御装置を搭載して登場したのです。
それも、中古。そして出所はというと、205系です。
かつては山手線で、今も埼京線の顔というべきあの通勤電車です。
一部の205系は中央緩行線から武蔵野線に転用する際にインバーター改造されたのですが、
その際、発生した電気品(主電動機、主制御器、断流器、誘導分流器)を253系200番台は再利用しているのです。
財政的に余裕がなかった?まさか。天下のJR東日本に限ってそんなことはありません。
あえて、界磁添加励磁制御にしたのです。
空港連絡特急にとりわけ必要なことは トラブルなく、かつスムーズに定時運行を完遂すること。
分割併合が基本である253系NEXにおいて最も安定したメカで車両を統一することは運行上最もリーズナブルな選択なのです。
「鉄道系ごちゃまぜブログ」という現役の電車運転手さんのブログがあります。そこから一部引用させていただきます。
「…この併結運転の時に、種類が違う車両をつなげる場合があります。VVVF車と界磁チョッパ車とか抵抗制御車とか。
制御方式が異なると、塗り分けや車体形状が違う場合が多く、これらを併結すると、見ている分にはけっこう楽しいですよね。
運転する方にとってはあまり好ましくないです、異種併結は。
制御方式が違うと加速度が異なるから、加速時にギクシャクします。
その前に、起動時のノッチを入れた時の反応の違いで(ノッチを入れた時に動き出す時間に若干違いがあります)突いてくる感じや、引っ張られる感じがあります。
ブレーキが一番の困りもので、ブレーキ力の違いでギクシャクするし電制が失効し空制に変わる速度が全く違うので、この時も衝動が発生しやすいです」とあります。
運転する方にとっても保守点検する方にとっても一番いい方法をJR東日本は選択したのだと思います。
もっとも車内のアメニティーは大きく改良されています。在来車も200番台にあわせてリニューアル。
このことで200番台の個性が埋没してしまっているのは残念な気もしますが NEXは2002年に新たなスタートを切ったのだと思いました。
それにしても、もう引退とは…。
2009年現在、253系NEXは 111両(6両×14本+3両×9本)で運転されています。
これがE259系132両(6両×22本)と変わります。両数は増えてますが編成数は1本減っています。
3両編成があることでフレキシブルできめ細かい運行ができるのが253系NEXのいいところだったのに ちょっと残念な気がします。
またE259系のデザインですがどう見てもJR北海道の789系そっくりです。
253系NEXのように新味にかけるのも惜しい気がします。
さて、気になるのは253系の行方です。
初期車は製造されて17年経過するものの、リニューアル工事も行われています。
200番台については 一部再生品とはいいながらまだ7年あまりしか経過していません。
転属して使用するものと思われます。
幸い253系は 将来の運転区間拡大を考慮した 車両限界、車両構造を採用していました。
パンタグラフ部分をご覧ください。低屋根となっています。
このことで中央線に残る最小断面トンネルを通過でき JR東日本の直流電化区間なら全区間走行可能です。
メカも定評ある汎用品を多用している253系です。
きっと第二の職場でも歓迎されるに違いありません。
(*ここまでの記事は2009年4月に書いたものです。)
253系は 2009年からE259系の投入が開始され 2010年6月でNEX運用から撤退しました。
基本番台はその多くが廃車となりました。しかし
3連×2本が長野電鉄に譲渡され2100系「スノーモンキー」として2011年2月に再デビューしました。
長野電鉄 2100系特急車「スノーモンキー」 E1編成 撮影2011.8:須坂
200番台は6連×2本が、リニューアルされ253系1000番台として再登場。
特急「日光」「きぬがわ」用に2011年6月から運転を開始しました。なお制御方式はVVVFインバータへ改められています。
JR東日本 253系1000番台 OM-N2編成 特急「きぬがわ」 撮影2001.8:池袋
コメントを書く
コメントを投稿するにはログインしてください。