「赤いみどり」JR九州 485系 珍車ギャラリー #417  

「赤いみどり」JR九州 485系   珍車ギャラリー #417  

赤いみどり?

「赤いみどり」といって、それが佐世保ゆきの485系特急とすぐわかるお方は鉄道ファンでも少なくなってるように思います。
もっとも正式な名称ではないのですが 月日の経つのは早いものです。
2000年3月に485系「赤いみどり」は姿を消しました。
それからもう23年経っているわけです。
今回はこの奇妙な愛称を持つ特急が生まれた背景についてお話ししたいと思います。

特急「みどり」

485系 クハ481形600番台 クハ481-602 特急「みどり」

クハ481-600番台は 1983年に クロ481-3~5を改造したもの。撮影場所:博多

「みどり」は佐世保ゆき特急の愛称ですが なぜ「みどり」なのでしょう。
「みどり」の名称は1961年に大阪-博多間でデビューしたキハ82系特急「みどり」が最初です。
1964年に 新大阪-熊本・大分間に変更され
1965年に熊本編成は佐世保発着(筑豊本線経由)に変更されました。
この時「みどり」は 初めて佐世保特急となったのです。
しかし1967年には電車特急となり電化されていない佐世保との縁は切れます。
1975年3月の山陽新幹線博多駅開業により本州と日豊線を結ぶ「みどり」は廃止。
日豊線特急は「にちりん」に編入されました
そして1976年7月に長崎本線と佐世保線が電化開業した時
それまでの気動車急行「弓張」を電車特急にする際、特急「みどり」が佐世保特急としては9年ぶりの復活を果たしたのです。
とはいえ佐世保と「みどり」のつながりはあまり感じられません。

「みどり」は長崎発着の特急「かもめ」と併結運転を行うこととなりました。
当時の特急としては異例の短編成4連で運行を開始しました。

←博多、佐世保⑫     早岐→
クロ481+モハ 485-484+クハ481
所属 南福岡電車区  参照:国鉄電車編成表83年版

この時1976年、短編成化にあたって不足する先頭車を補うためにクロ481形が組み込まれました。
ちなみにクロ481形0番台(68.69年製)と100番台(71年製)はオリジナルのボンネット型。
50番台はサロ481形を68年に先頭車改造したものです。
「ひたち」などに用いられていたものを持ってきました。
でもグリーン車は少なくとも7.8両編成に1両くらいがいいところです。
4両編成である「みどり」に1両もいらないわけでこの際 モノクラスにしたっていいような気もします。
しかし「「みどり」なのにグリーン車がないのはおかしい」という声があったとか。

L特急 485系

「L特急」という言葉をご存じでしょうか。
L特急が登場したのは国鉄時代 1972年からです。
山陽新幹線が岡山開業し日本海縦貫線の全線電化が完成したこの年。
全国に特急網が完成したことを機に 毎時同分に発着する在来線特急をこう呼ぶことにしたのです。
(関東地区6種、山陽地区3種でスタート)
もともと特急は全席指定が原則でしたが そのダイヤをパターン化して自由席を設置。
特急がぐっと身近なものにしたのがL特急ということになるでしょう。
1987年の民営化後は各会社間での解釈の違いもあり、本数が多いのにもかかわらずエル特急ではないというケースも出てきました。
かくしてJR東日本では2002年にL特急の呼称を廃止しています。
JR九州ではJR西日本に直通する特急がなかったこともあってか2008年までL特急の呼称を継続使用していました。
そのイメージを引き継いでいたのが485系です。

485系は1968年にデビューしました。(481系は64年)
1979年まで製造が行われ その数は1453両を数えます。(481.483.489系を含む)
中でも交流50Hz/60Hz対応の485系は「北は北海道、南は鹿児島まで」 日本中で活躍した国鉄を代表する特急電車です。
当初 長大編成で運行されましたが、特急列車のシャトル化にともない短編成化が進みます。
485系はL特急とともに発展してきたのです。
特に九州地区では特急列車増発による先頭車不足解消のため クハ181-109・クハ180-5という直流車両まで485系化改造を行っているほどです。

485系 クハ481形500番台 クハ481-502 特急「みどり」

502は1983年にクハ180-5を改造したもの。撮影場所:鳥栖

485系 RED EXPRESS

1988年 JR九州は783系ハイパーサルーンをデビューさせました。
JRグループ初の新系列特急電車で 130km/h運転を前提とする783系は「ハイパーサルーン」とよばれ 内装、外装 ともに 強烈なインパクトをもたらしました。
継承された324両の485系を国鉄時代のままにしておくわけには参りません。
JR九州は783系との格差を解消するために大幅なリニューアルを施します。
これがコーポレートカラーの赤がベースとなる485系「RED EXPRESS」です。

そこで90年3月に「かもめ」に対し、90年10月には併結を行う「みどり」に対し「RED EXPRESS」改造が施されました。
1986年11月最後の国鉄ダイヤ改正で一旦 「かもめ」「みどり」の併結運転はなくなりました。
しかし JR九州となり併結運転が復活しました。

485系 「赤いかもめ」⑦ クハ481形300番台 クハ481-330

撮影場所:博多

「かもめ」「みどり」にはそれぞれ KAMOME EXPRESS、MIDORI EXPRESSロゴが記されています。
誤乗を防ぐため塗装も分けられたのです。
かくして「みどり」編成は「赤いみどり」となりました。

485系 「赤いみどり」⑭  クハ480形0番台 クハ480-9 サハ481改

AU12形キノコ形クーラー装備車 撮影場所:鳥栖

ところで「赤いみどり」は ⑪号車から  クロハ481+(モハ484-485)+クハ481という4連で早岐方にはクロハ481を組み込むのが基本です。
ただ ⑭号車にはクハ480を組む編成もありました。(サハ481、サハ489改)
⑪号車にはクロハ480-50番台を組む編成もありました。
ただしREDEXPRESS塗装です。MIDORI EXPRESSロゴはありません。

後に「にちりん」や「有明」に充当する車両にもREDEXPRESS改造が施されました。
ただ こちらには「NICHIRIN EXPRESS」などというロゴはなく「REDEXPRESS」と記されています。
ヘッドマークにもREとあり その下に小さく「にちりん」と記されている程度です。
なぜでしょう。「にちりん」や「有明」は併結することはありません。
これらについては汎用塗装しておくほうが融通が利くからです。
「みどり」編成「かもめ」編成についても 実際には波動用となるREDEXPRESS塗装の車両を組み込むということも多かったのです。

KAMOME EXPRESS に併結される RED EXPRESS サハ481-93


その時、もし仮に「みどり」編成が緑色塗装であったなら そこに赤い車両が混じるということになってしまいます。
見た目にも不統一ですし 乗客は「みどり」じゃないと勘違いしてしまう可能性があります。

「そっ。私はグリーンじゃないの。REDEXPRESSの「み ど り(MIDORI)!」
と彼女はそう言っているように思います。

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