山陽本線に通称「和田岬線」という区間があります。
兵庫駅から南へ2.7km。終点の和田岬まで途中駅はありません。
時刻表を見ると昼間は全く列車がなく、なんと日曜日には朝1往復しか走っていません。
しかし平日の朝には約20分おき、夕方以降も10往復の設定があります。
つまり和田岬駅付近の工場(おもに三菱重工神戸造船所)で働いておられる方々のための通勤専用路線といってよいような路線なのです。
思い起こせばオハ64系時代の朝のラッシュ時は、もの凄いもので両端にDD13を連結した列車がピストン輸送する度にデッキにまで鈴なりになった人々が和田岬駅の出口へ一気に吐き出されてゆくのです。
その様は高度成長時代の勢いそのものという感じでした。
ラッシュ時に こんなにも多くの工場労働者の方々が利用されている点では鶴見線とよく似た性格の路線といえるでしょう。
ですが なぜか長く電化されることもなくオハ64系の後継には、両開きの大きな扉をもつ通勤用気動車ともいうべきキハ30系が導入されます。
そのままでも十分 オハ64系の代役は務められると思ってたのですが、
先代のオハ64系と同様、座席の一部を撤去し片側に大型の出入り口を集中させるという特殊な構造を引き継ぎます。
(オハ64系の場合は扉を増設、キハ35の場合は扉を2つ撤去)
和田岬線(山陽本線)用 キクハ35-304
撮影場所:兵庫
所要時間は3分。ラッシュ時専用ということもあって座席は無用というわけですね。
閑散時、とりわけ夜間などは なんともお寒い車内でした。
さて「キクハ」という形式称号は珍しいですね。
関東鉄道などで見られたものの 国鉄JR系の車両では初めてではないでしょうか。
エンジンを取っ払って制御車化したわけですが、多くの人を乗せるとはいえ平坦な区間を長編成で使うという特殊事情がこんな珍車を可能にしたわけです。
とこんなふうに書いてゆくと関東の方々には和田岬駅の周辺は海芝浦駅みたいに工場しかないように想像されるかもしれません。
しかし実際には笠松通商店街などもあり住民の方々も沢山住んでおられるのです。
20数年前、当商店街の「ミス笠松」となった大学時代の友人も「はよ電車 走らして欲しいわ」と言ってました。
さてその後、彼女の願いは叶い2001年7月、和田岬線は電化されました。
でも 相も変わらずの列車ダイヤで2002年のワールドカップの時でさえ増発されることはありませんでした。
神戸ウイングスタジアムが目の前なのにもかかわらずです。
電化によりキハ35-300番台は当然のことながら姿を消し、今は103系の6連がピストン運転しています。
和田岬線スペシャルの103系を期待したのですが、今回はフツーの103系のままでした。
昔ほど工員さんの姿も見られなくなった以上 もう和田岬線専用の特殊な車両が登場することはないでしょう。
この記事は2005年10月に書いたものをベースにしています。
2023年3月18日 和田岬線の103系は引退することとなりました。
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