「4ドア車とは違うの」JR西日本 105系 SF編成 珍車ギャラリー#412

「4ドア車とは違うの」JR西日本 105系 SF編成   珍車ギャラリー#412

1980年  105系登場

105系は地方の電化ローカル線に配置されていた40系や72系などいわゆる「旧形国電」の置き換えを進めるべく製造されました。
105系は1980年から新製され、福塩線および宇部線・小野田線の旧形電車を置き換えました。
旧形国電の電動車は走行機器を集約した「1M方式」つまり1両で走行する事が可能です。
T車を加えて自在に編成を組むことできこれはローカル線の輸送需要にマッチするものでもありました。
105系の設計にあたってはこの1M方式を採用しながら 1M2Tでも旧形電車の1M1Tに相当する性能が発揮できるものとしました。
加えて 発電ブレーキ付、応荷重装置・空転検知装置付…と新性能車として押さえるべきところはきちんと押さえてあります。
その鍵となるのが新たに開発された主制御器CS51です。
システムは簡素化され経済性を重視することが求められました。
103系ほどの高加速性能はいらないので制御段数は少なめです。
回路構成も 永久直列で 直並列組合わせ制御は行いません。
電動機は103系と同じ出力(110kw)のMT55系ですが105系では台車単位で駆動が可能です。

105系 2連国鉄色 旧 K3編成② クモハ105-19 AU75付き 可部線呉線用 広島運転所

国鉄時代の編成表を見ると府中電車区に配属された105系は下のようになっております。
クモハ5~8サハ1~4  モハ1~4+クハ5~8  クモハ1~4+クハ-1~4

中間車も存在したんですね。随時 2連ないし4連を組んで運行していたようです。
しかし これではラッシュ時以外昼寝を決め込む編成がでてきてしまいます。
そこで1984年から中間車の先頭車改造が行われることになりました。
クモハ105_28~31:モハ105_1~4の先頭車改造
クハ104_26~29:サハ105_1~4の先頭車改造

この先頭改造車となるクモハ105-28も今回のヒロインです。

1984年  奈良線・和歌山線 電化  105系改造車登場

1984年 奈良線、和歌山線が めでたく電化開業しました。
ですが国鉄は新規に配置される電車48両 そのすべてを105系改造車で補うことにしました。
当時の国鉄財政ではローカル線区向け車両を思うようには新造できなかったのです。
種車となったのは営団地下鉄千代田線に乗り入れていた 4ドア車である103系1000番台です。
よって105系には3ドアの新造車グループと4ドアの改造車グループが存在することになります。
しかし、和歌山地区の105系は永くこの105系改造車グループだけでした。

JR西日本 105系 2連 A01編成* 和歌山線用 新和歌山車両センター

1998年から紀勢線(田辺-新宮間)にも105系改造車が充当されました。
それまではというと165系(3連×11本=33両)が活躍していました。
国鉄最後のダイヤ改正で松本運転所から日根野区に転属してきたものです。

165系は153系に次ぐ直流急行形電車の第2世代となる系列です。
台車はDT32・TR69系。これは485系にも採用されている空気バネ台車で特急並みの乗り心地です。
そこに通勤形と分類される105系がやってきたのです。
乗り心地もさることながら当時トイレもなかったのです。
日根野区の165系は3連でした。対して105系は2連です。
その分乗客は詰め込まれるということになるわけですが105系は通勤形だからなんとかなっちゃうんですよ。
しかし乗客にしてみれば全くもって たまったものではありません。

2000年以降 田辺以南はワンマン化されます。
運転手さんにとっては165系では車内を見通せません。
2002年3月に165系が定期運用を終了するのはやむを得ないのでしょう。

2005年 和歌山地区に105系新造車 SF編成

2005年10月 岡山電車区の105系 新造車グループ(2連×5=10両)が新和歌山車両センターに転属してきました。
岡山とはいっても主に福塩線で活躍していた前述の105系たちです。
福塩線が広島県にあるのに岡山電車区所属となるのは 国鉄時代 府中電車区が岡山鉄道管理局の管轄だった名残でしょう。
でも府中鉄道部時代から105系は山陽本線はおろか伯備線 赤穂線 宇野線にまでその活躍の範囲を広げていました。
そこにマリンライナーの223系化です。
もとマリンライナーの213系は岡山近郊の普通列車に転用され このことで105系は余剰となっていたのです。
とはいえ105系SF編成はクーラーを分散型WAU102に改め トイレも設置されています。
そしてなにより体質改善工事が施工され新車同然の美しいスタイルで登場しました。
待望のニューフェイスというところなんですが先住の105系はすべて4ドアです。
「私たちはみんな都会生まれの都会育ちなの。あなたたちとは一緒にやっていける気がしないわ」とか
「ここはね。私たち4ドア車がずーっとやって来たの」
というやりとりがあったかはさておき、3ドア車のSF編成たちは異端車として扱われ一緒に仕事をさせてもらえませんでした。
紀勢線(紀伊田辺-新宮間)の各停用として彼女たちは肩を寄せ合って黙々とお仕事をこなしてきました。
そんな彼女たちが 2021年 ひっそりその姿を消してしまっていたのです。
えっ…ちょっと早すぎるんじゃないの。私は目を疑いました。

105系 和歌山地域色  SF004編成 105系オリジナル車(3ドア)

213系を転用する手はなかったのか?

JR西日本 213系 3連 C05編成③ クモハ213-5 岡山電車区

213系のほうが紀勢線に向いていると思われる点がいくつかあります。

ステンレス製車体は塩害にも強いですから海岸沿いを走る紀勢線に適しています。
またクロスシート車ですから観光路線である紀勢線にこそふさわしい。
しかしそうはならなかったのはなぜでしょう。
私は制御装置の違いにあると思っています。

213系の制御装置はCS59です。
105系のCS51と同じく1M方式ですがCS59は回生ブレーキ、抑速ブレーキ付きです。
閑散路線である紀勢線では回生ブレーキによって生成された電力を使う列車がそばにいないのが普通ですから無用の長物です。
また紀勢西線にはこれといった峠越えもありません。抑速ブレーキも必要なさそうです。
213系が広島まで足を伸ばすことは今のところありませんが抑速ブレーキつきなら瀬野八を越えることも可能です。
CS59は山陽本線であればその価値を十分に発揮できるのです。

対してCS51は台車単位での駆動が可能で非常時には2個モーターでの走行も可能です。
変電所容量の小さい線区を走行する際の設定も考慮されています。
抵抗器は電動送風機をなくした自然冷却方式です。
万が一電動発電機 (MG)が 停止したら大変だからです。
また最寄り駅まで走行できるように制御に必要な電源を常にバッテリーから供給できるようにしました。
容易には救援を要請できないのがローカル線の現状です。
CS51は 自力でやれることはやる。という体勢を整えているのです。
CS51はJR化直前の国鉄技術者がローカル線の将来を見据えて作り出しました。
ローカル線仕様といってもいい CS51  そして105系は紀勢線にこそ うってつけなのです。

119系という電車があります。3ドア セミクロスシートの近郊形です。
画像を見ていただければおわかりの通り105系とよく似ています。

JR東海 119系 I10編成② クモハ119形0番台 クモハ119-25 静岡運転所

電動機も105系と同じの1M方式です。
制御装置こそCS54と違うのですが基本はCS51と同じです。
これに抑速ブレーキをつけたものと考えていただければいいかなと思います。
119系は飯田線スペシャルと言っていい存在なので119系化せよとまでは言いませんが、
紀勢線にやってきた105系SF編成について体質改善工事に合わせてクロスシートを導入できなかったかと思うのです。
海側1列だけでもいいんです。
観光路線にふさわしい車両として存在感を示すことができたなら、
彼女たちは生き延びられたのではないか。と思うからです。

2021年 和歌山地区の105系は すべて227系化により消滅

和歌山区の227系化によりSF編成は105系改造車とともに姿を消すことになってしまいました。
改造105系は種車の103系1000番台からカウントすると新造105系より10年も古い車体を使っているのです。
しかも福塩線にはまだ仲間たち(105系3ドア車)ががんばっています。
彼女たちSF編成たちの何がいけなかったというのか…。
和歌山線はいざ知らず 紀勢線にあてがわれた227系はむしろ福塩線にふさわしいと私は思います。
その分105系新造車を紀勢線に転用した方が車両を有効活用できたような気がしてならないのです。
4ドアの改造105系とは違って3ドアの新造105系はシートさえ変更すれば より紀勢線にふさわしい近郊形として活躍できたように思えます。
同じ色に塗装されてしまっているとはいえ一緒にしないでほしいところです。
生まれも育ちも105系改造車とは違う彼女たちは見返してやることもできない運命となりました。
そんな彼女たちは 紀伊田辺であるいは新宮で 互いに顔を合わせるたび涙を流していたのではないか。
と私には思われてなりません。

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 105系 奈良区’88/’93 下関区’88 福塩線 可部線etc 和歌山線etc 新地域色 和歌山地区 中国地区 へJUMP

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