113系300番台は1994~95年にモハ113+112形ユニットから改造された2両編成の電車です。
1996年3月の山陰本線園部-福知山間の電化にあわせ福知山電車区にS編成として投入されました。
S編成は閑散区間2両で運行し京都通勤圏となる園部に入った段階で列車を増結。
このままターミナルの京都へと向かいます。
ですから電気連結器が設置されており扉も半自動化(電気式)されています。
6本×2=12両が改造されました。モハ113/112-6329~6332・6335・6337
1994~95年:先頭車改造→クモハ113/112-302~ 305・307・309
1996年10~12月:高速化対応で改番→5302 ~ 5305・5307・5309
301・306・308が欠番となっているのが不思議ですね。
本来は300番台を9編成用意する計画だったそうです。
改造年は1994~95年ですが、95年といえば阪神大震災です。
詳しい経過は分かりませんが、この予想外の災害の影響で車両のやりくりがつかなくなったという説があります。
結局300番台への改造は6編成にとどまり不足する3編成分は113系800番台(2両編成3本)で補うことになりました。
さてそんなわけで 同じ用途で運行されることとなった300番台と800番台ですが何が違うというのでしょうか。
113系300番台 S02編成① クモハ112形300番台 クモハ112-302
撮影場所:京都
113系5800番台 S33編成 (福知山電車区 福フチ)
撮影場所:福知山 撮影2007年8月
前照灯はともにシールドビームで 湘南形の塗装に白線を入れた個性的なデザインです。
800番台であるS33編成は2丁パンタですが、
S4、S9編成にもパンタグラフが増設されていますので違いとはなりません。
同じ運用に就く以上 電気連結器の設置や扉の半自動化も共通仕様です。
何が違うかというと車体そのものです。
300番台となったモハ113+112形ユニットは2000番台が元となるため側窓の形状が違います。
クーラーもAU75系です。
対して800番台のクーラーはWAU202 。
JR西日本になってから取り付けられた床置き型です。
実は運転台も違います。
300番台で新設された運転台は廃車となったクハ111形から移植したものです。
対して 800番台では運転台を新製しています。
そして注目すべきは 300番台は改造時よりワンマン運転に使用されることから運賃収受がしやすいように最前部の側扉を前方に64cm移設して運転台までの距離を近づけたという点です。
JR四国の6000系と同じ発想ですね。
これにより新設した戸袋窓のすぐ後に元の戸袋窓が並んでいる点がなんといっても外観上の特徴です。
1996年には5000番台改造、すなわち高速化対応工事が施工されました。
(高速域からの減速力強化のため台車への増圧装置および応荷重装置の取付け、制輪子の交換など)
よって全車とも5000が加えられて「5300番台」となっています。
改造される前 中間車だった6000番台時代には 前述の高速化対応工事に加え ブレーキテコ比にも変更を加えて もうプラス1000!。
より高いレベルで高速化対応し その性能を遺憾なく発揮していました。
そんな彼らが山陰線に転用されることになって高速化対応する必要がないため300番台にされたのは納得できますが、
2年もたたないうちに再び高速化対応工事をすることとなった経緯は謎です。
5300番台となった彼女たちが再びアーバンネットワーク上で新型電車達と張り合うことがあったのなら話は別ですが…。
5300番台が東海道線を走っている姿に私は記憶がありません。
資料には応荷重装置の取付けとしか書いていないところからすると完全な高速化対応ではないということでしょうか。
なにはともあれ、彼女たちが300番台でいられたのは わずか2年足らずです。
だから、300番台の画像は貴重なんですよ!
外観上は番号しか変わりはないじゃないかといれればその通りですけど…。
それにしてもどうしてわざわざ戸袋窓を新設する必要があったのでしょうか?
いや新設する必要などなかったような気がします。
300番台の運転台は廃車体の再利用です。ドア周りの造作も再利用したのではないでしょうか。
つまり戸袋窓もくっついてきたと考えていただければと思います。
さすがに運転台側は強度の問題からこれをふさいだのです。
事実 1999~2000年に 体質改善40N工事が施工されたS2、S4編成は新設の戸袋窓がふさがれています。
113系5300番台 体質改善車 S02編成① クモハ112形5300番台 クモハ112-5302
撮影場所:京都 撮影日:2010年2月
1994年9月に車号変更 モハ112-6329→329
1995年7月にワンマン改造 →クモハ112-302
1996年10月に高速化対応→クモハ112-5302
2000年6月に体質改善工事
2010年の春に113系は山陰線京都口から撤退し5800番台はこれに合わせるように姿を消しました。
ワンマン運転に適応した300番台はローカル運用に活躍の場を転じました。
広島方面に移動した113系5000番台が 再び改造され5000番をとっぱらって元の番号に復旧しています。
ひょっとしたら近いうちに昔の車番で姿を現すかもしれませんね。
*この記事は2010年2月に書いたものがべースになっています。
J-tetsu.com -鉄道車両写真集- |
113系 福知山区 300番台 5300番台 5000.7000番台 高速運転改造車 へJUMP |
さて便宜上 300番台として話を進めてきましたが、国鉄オリジナルの113系にはすでに300番台が存在します。
クハ111形300番台です。
CP付きの偶数向き専用制御車(Tc)で301~504が該当します。
数的にいって こちらこそが300番台というべきかもしれませんね。
もっとも S編成用の300番台にはTcが存在しないので問題ないといえばそうなのですが、
400番台ぐらいを割り当てておいた方が無難だったような気もします。
参考文献:「111・113系電車のプロフィール」『鉄道ピクトリアル』2008年5月
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