「 JR西日本オリジナルの205系」JR西日本 205系1000番台  珍車ギャラリー#365

「 JR西日本オリジナルの205系」JR西日本 205系1000番台  珍車ギャラリー#365

205系は国鉄時代の車両だと思われている向きがあるようです。
正確にはJR西日本が阪和線向けに新たに設計・投入した205系があります。
1988年に登場した205系1000番台です。

205系1000番台 HH403編成① クハ204形1000番台  クハ204-1003

JR西日本 阪和線用 205系1000番台 4両編成
←天王寺④            ①和歌山→
クハ205-モハ205-モハ204-クハ204 Tc’M’MTc
H403編成 車番はすべて1003 日根野電車区
参照:JR編成表08年版 撮影2008.1:和歌山

サイドから判別できる人はかなりのマニアですが、前面から見ると窓のレイアウトが大きく変更されているのでそれとわかります。
すなわち運転士側の窓が狭いものとなり反対に助手席側を大きく変更したのです。
よって、鉄チャンスタンド(客室)からの展望はすこぶる良好です。
国鉄末期の車両例えば103系のATC装備車などがそうですが前面展望のことなどまるで考えていません。
「JRになったんだなあ」
初めて205系1000番台に乗車したときそう感じました。

そもそも国鉄205系とはどのような電車だったのでしょう。
先代の201系は103系に代わる通勤形電車として1981年より量産が開始されました。
キーワードは省エネルギーです。
先々代となる103系は抵抗制御です。
加速するにせよ 減速するにせよ 熱エネルギーを空中に放出する電車です。
201系では電機子チョッパ制御を採用することでこれらの無駄をなくし時代の要請に応えたのです。
ただ電機子チョッパ制御は製造コストが非常に高くつくというデメリットがありました。
当時、財政的に厳しい状況に置かれていた国鉄にとっては老朽化している数多くの車両を安価な車両で置き換えなければならない状況にありました。

そこで205系に採用されたのが「界磁添加励磁方式」です。
かみ砕いていいます。
抵抗制御でトルクと回転数を加減してゆくと抵抗値0で回転数は最大となります。
ここでなお(電圧・電流一定のまま)回転数を上げるには磁束を速度に反比例で減じればよいのです。
弱め界磁といいます。
そこでこの時、外部電源をもちいて励磁電流を制御するのが界磁添加制御です。
(ちなみにここだけチョッパ制御するのが、界磁チョッパ制御)
抵抗制御でコントロールする速度域を減らせば減らすほど熱損失はないわけです。
加えて回生ブレーキは高速域でこそ有効です。
高価なパワートランジスタを使わずによくぞここまでという感じですね。

また205系はステンレス車体です。
新開発の軽量ボルスタレス台車の採用と相まって軽量化でも省エネルギーに貢献しています。
応答性のよい電気指令式ブレーキの採用も含めて205系はよくできた電車です。
だからこそJRになっても作り続けられたのです。

ここで導入の経過を見てみましょう。
国鉄末期、首都圏全体の101系103系を置き換えるビッグプロジェクトがありました。
ここで抜擢されたのが205系です。
1985年 まず手始めに山手線用でこれをデビューさせ ここから103系を転出。
古い車両を置き換えつつ首都圏各線の輸送力増強にあてました。
JRになってからも205系は継続して投入され JR東日本では1400両を超える一大勢力となってゆきます。

一方、JR西日本に投入された205系はというと国鉄時代はたったの28両です。
JRになってからも0番台は1台も投入されていません。
新たに投入されたのはJR西日本オリジナルの1000番台でした。

さて1000番台では、何がどう変わったというのでしょう。
営業最高速度を 110 km/h に引き上げたというのが一番のポイントです。
主電動機(WMT-61A)の最高回転数を4,600 rpm から 5,100 rpm に引き上げました。
台車は軸箱方式のボルスタレスと基本的なスタイルを引き継ぎながら高速走行を考慮してヨーダンパを取り付け可能なものにしました。
基礎ブレーキについても高速対応用に改良されています。

結果、性能の違いから0番台との併結運転はできないのですが 投入されたのは阪和線です。
0番台の配属はありませんでした。
98年の「JR電車編成表」日根野電車区のページを見てみると205系1000番台の注に
「天王寺7:52着104H、7:59発105H(快速)は8両編成 ほかは4両編成にて普通列車を中心に運転」
とあります。
最多混雑時の快速は113系8両編成(4×2)では捌ききれなかったのですね。
ということでかつては乗車定員の多い通勤形 103系8両編成(4×2)を快速列車に動員していました。
しかし103系は速度の点で快速運転に無理があります。
それは205系0番台でも同様です。そこで 205系1000番台の登場となったのです。

その後 JR西日本の通勤形電車はVVVFインバータ制御車の207系に移行しました。
結果 205系1000番台は4両編成5本(20両)のみで終わってしまうのですが、ピンポイントな要望に応えたと考えればその少なさも納得がいくところです。

明石区に配属された0番台が 配属先を転々としたのに対し1000番台は永く阪和線で活躍を続けました。

そんな彼らも2018年3月のダイヤ改正より阪和線での運用を終了することになります。
奈良区に転属され 103系運用の一部を置き換える形で奈良線で活躍することになりました。
0番台もまた 4両編成に組み替え 奈良区にやってきました。
まだ103系も活躍しているので共通運用となっています。
1000番台の本来の実力が活かせていないということで少々気の毒な気がします。
でも遠い異国で働いている205系のことを思うと贅沢は言えないのかもしれません。
しかし 奈良線とりわけ「城陽以北」は国鉄時代には考えられないほど乗客数が増えています。
複線化工事も進んでおり工事完成のあかつきには「みやこ路快速」ならぬ「通勤快速」が増発されるかもしれません。
そのとき、205系1000番台の実力が発揮されたとしたらおもしろいのですが…。
(注:この記事は2019年4月に書いたものです。)

参考文献(鉄道ピクトリアル 1989年5月号 #512,
「新車年鑑」P87、217)

205系1000番台 NE408編成④ クハ205形1000番台  クハ205-1004 体質改善車

2020年1月 撮影場所:桃山

 J-tetsu.com    -鉄道車両写真集-
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