山陽電気鉄道は、アルミニウムやステンレス車体の導入に積極的です。
1960年にステンレス車となる2000系、1962年には日本初のアルミ車となる2000系を登場させています。
そして、その2年後の1964年に製造された3000系も、最初の2編成はアルミ車体で登場しました。
ただ、1969年から始まった神戸高速鉄道への乗り入れにあわせて大量の3000系を投入する必要があったため第3編成よりコストの安い普通鋼製なってしまいました。
(なお12年の歳月の後、3066Fよりアルミ車体が復活しています。これについては後述します)
さてアルミ車体で復活した3000系が3074Fまで製造された1984年、同じくアルミ車体で3100-3101のユニットが登場します。
ところが、翌年には3076、3078Fが製造されたものの、3102F以降は製造されませんでした。
3000系列(3050、3200系も含む)の製造はここで終了してしまいます。
1編成しか作られなかった3100番台とはいったい何者だったのでしょうか。
*3100系(3100-3101ユニット)
3100系はラッシュ時、山陽特急4連に増結し6連運転をするために1983年登場しました。
またラッシュ時以外は、Tc 車 を連結、3連で普通列車としての運行をも可能にするものでした。
そのため、Tc 車3619とMMユニット3100-3101の間には電気連結器付き自動連解密着連結器が装備されました。
空気シリンダーで自動的に解放できる仕組みです。
3100系は神戸高速を経て阪急、阪神への乗り入れる車両として登録されており特急列車での活躍が期待されていました。
しかしその計画は実現されることなく、3100F(3100-3101+3619)のまま現在に至っています。
(注:2022年 3619は14年も車歴が古かったことから廃車され、3100-3101は相方を変更しています。)
山陽電気鉄道 3100系アルミカー 3連 編成表
←西代① ③山陽姫路→
形式 クモハ3050-モハ3050-クハ3630 Mc-M-Tc
3100F:3100-3101+3619
参考:私鉄車両編成表 2018 3100F 撮影:2005.8.10.須磨寺
スペックをまとめておきました。
3100 | S58年6月 | 川崎重工 製 | |
---|---|---|---|
長さ(m) | 幅(m) | 高さ(m) | 自重(t) |
19.000 | 2.800 | 4.000 | 34.4 |
駆動方式 | 制御方式 | モーター(kw) | ギア比 |
平行カルダン | KMC201 (モハ3101) |
MB3020 125×4 |
5.47 |
ブレーキ | 定員 | 冷房機 | 台車(製造) |
HSC-D | 140(51) | CU17*4 | KW-35 (川崎) |
3000系と特に変わったところはありません。アルミ車体ですから普通鋼製よりは4tあまり軽くなっているというところでしょうか。
形式はクモハ3100じゃないんですね。(ちなみに3050系は3000系冷房車という位置づけです)
*3619 ホワイトエンジェル
それはさておき、3100系の鍵となるのが、クハ3619です。
3100-3101ユニットと同じ1984年製アルミカー 3074FのTcは クハ3642。
そして次の3076Fには クハ3643がついています。もちろんアルミ車体です。
ところが、同じ84年製の3100-3101ユニットにはどういうわけか クハ3619という1970年製の普通鋼車体のTcがついているのです。
3619はうまく白塗りしていてアルミニウム車体風になっていますが、なぜアルミニウム車体のクハ3600を製造しなかったのでしょう。
ところで 3619の前後のナンバーは3200系のTcに割り当てられています。
3200系は2000系の廃車から発生した110kwモーターなどを流用した3000系の車体を持つ車両です。
もしかしたら予定していたほどに2000系から3200系を製造できなかった事情があったのかもしれません。
クハ3619は編成表でも長く孤立した存在でした。
今回、他の3000系とは違う独立性の強い3100-3101のユニットと組み合わせることで余剰車両であるクハ3619の有効利用を図ったのではないかと思われます。
*アルミ車体と塗装
そういえば久々のアルミ車体として登場した3066Fには、クハ3638が組み込まれていますが、このクハ3638がなんと普通鋼製なのです。
そしてどういうわけか、こちらは4両そろって普通鋼製の車体と同様の塗装が施されているのです。
3066F –クハ3638:普通鋼製の車体です。
3066F–クモハ3066:アルミ車体です。
撮影:飾磨 2005.8.10
車体をアルミにする最大のメリットは軽量化ですが、普通鋼のように錆ることがなく、塗装せずにすませることが出来るメリットもあります。
ただアルミニウムは普通鋼に較べ高価な素材で、保守についても汚れやすく、かつ汚れが落ちにくいという欠点があり、営団地下鉄では、ステンレススチールの車体より水洗いを頻繁に行っていたようです。
また、山陽においても塗膜が透明のクリアラッカー塗装を施した車両があります。
トータルコストで考えたときにどちらがお得かは、優劣つけがたいものがあるようです。
事実、他社でも多くのアルミニウム車体の車両が存在しますが、塗装されているもののほうが多いような気がします。
そう見てくると、クハ3619のアルミニウム車体風塗装について、
「そんなに無理をしなくても…3066F のように普通鋼製車塗装すればいいのに」という気になってしまいます。
でも、おかげで3619は山陽屈指の珍車が際だった存在となりました。
そしてマニアからは「ホワイトエンジェル」と呼ばれることになるのです。
14年も車齢が離れていたので、3100-3101ユニットより先に姿を消すことになりました。
もし3100系が普通鋼製車塗装されていたら彼女は注目されることもなかったでしょう。
「私の相方はね。山陽特急ここにありとその存在を示すことが使命だったの。
そう 目立ってナンボのものだったってわけ。私が厚化粧していたのもそういうわけ。
結局、夢は叶わなかったけど、私はこの出で立ち…結構気に入ってたのよ。」
初出:2006年10月22日 追補:2022年8月27日
———参考文献;鉄道ピクトリアル 「車両軽量化の沿革と営団における実績」 里田啓氏 樋口敏彦氏
-鉄道車両写真集- |
山陽電気鉄道 3000系3050系アルミ車 3100系 3200系 3000系 3050系 3000系3050系リニューアル車 へJUNP |
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