「時代遅れ」神戸電鉄 1500系 珍車ギャラリー#126

「時代遅れ」神戸電鉄 1500系  珍車ギャラリー#126

さて、問題です。上の写真の1501と下の写真の3014。どちらが古い電車でしょう。

見かけはどう見ても3014の方が新しいのですが、答えは1501です。
(3014=1989.3  1501=1991.2)
1501は1500系に属する車両ですが、1000番台の車番が示すとおり1000系列の車両です。
(注:神戸電鉄では、形式称号に「形」を用いていますが、6000系を登場させるまで「系」を用いていません。1500系とか言ってますが、これはあくまでマニアの分類です。)
神鉄の1000系列は1965年にデビューから、26年の長きにわたって増備され続けてきました。
なんとも息の長いシリーズです。
もちろん3000系は、1000系のあとにデビューしています。
でも製造初年は、1973年なんです。 そうは見えないですよね。
事実、3000系は登場した当時、従来の神鉄のイメージをガラッと変えてしまうほど斬新なものでした。
そんな彼らも、1991年まで18年間の長きにわたって増備され続けてきました。

とまれ、ということは「3000系が増備されていた18年間は、1000系列の車両も一方で増備され続けてきた」ということです。
3000系は、神鉄初のアルミカーであり冷房装置を装備した期待のエースです。
デビュー当時乗客の誰からも歓迎されたこの3000系に、神鉄はどうして全面的に切り替えなかったのでしょう。

まずは、貫通路がないということに注目してください。
3000系は4両固定編成です。神鉄における大半の需要はカバーできますが、ローカル線や小単位の編成で間に合わせたい場合や、逆にラッシュ時等、5両編成が必要という場合には対応できないのです。
その際は、1000系列のように、2連、3連のユニットに単行の車両を組み合わせ、輸送需要にあわせ変幻自在に対応できる車両の出番となるのです。
車両の製造コストの問題もあります。アルミは軽量で塗装コストも削減できるメリットはありますが、素材としては高価です。
北神急行(1988開業)の開通により、乗客の流れが今後どう変わるかもわかりません。
高価な3000系ばかりを作ってはいられなかった事情があったのではないかと思われます。

1500系が登場した1991年は神鉄にとって大変重要な1年となります。
10月に北摂ニュータウンの新しい足となる公園都市線が開通することになったからです。

まず、2月25日に最後の1000系列車両となる1500系3連が2編成
(1501-1601-1502 1503-1602-1504)
4月6日に最後の3000系車両となる3000形4連が1編成
(3017-3118-3117-3018)
6月18日、7月17日、8月4日と新系列車両である2000系3連が3編成が相次いで誕生します。
(2001-2201-2002 2003-2202-2004 2005-2203-2006)

北摂ニュータウンはまだ若い街でしたから、当時3000系(4連)ほどの輸送力はいりません。
でも1000系列では、格好が付きません。
そんなわけで新線開業のイメージアップを担うことになったのが、新鋭のアルミカー2000系なのです。
神鉄はこの新線開業を期に車両デザインを一新することになるのですから、その意気込みが伺えます。

しかし、2000系は抵抗制御です。
実のところ、1000系列の3連バージョン1100系と性能的には同等なのです。
つまり、1500系と同じということです。では1500形は、いったい何のために生まれたのか?
名目は、当時老朽化が進んでいた800系更新車を取り替えるための新車となっています。
しかし、形式が改まったのは、1100系と同じく3連ユニットでありながら公園都市線でのワンマン運転に備えるべく、ワンマン仕様となった点なのです。

えっ?公園都市線は、2000系じゃないの。
そうです、その通りです。
1500系は、2000系の予備車両として誕生したのです。
悲しいかな。1500系は、生まれながらにして裏方となる運命だったのです。

でも彼女はそんなことを気にはしていないように思えます。
2000系にも、3000系にも、そして1000系のお姉さんたちにもできないことをするために生まれてきました。
時代遅れに見えますが、目立たぬように はしゃがぬように 似合わぬことは無理をせず…、
神鉄のこれからを支えてゆかねばならない人々の心を見つめ続けてきたのです。

初出:2019年7月31日

参考文献;鉄道ピクトリアル 「特集 山陽電気鉄道、神戸電鉄」No711 2001.12

-鉄道車両写真集-
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もうひとつ、彼が珍車である理由をお教えしましょう。
それは、彼の形式称号、わかりやすくいえば名前です。
1500系はT車を含むが故に105Kwモーターをもつ3連グループで
1100系:デ1100形-サ1200形-デ1100形 2ドア車
1150系:デ1150形-サ1250形-デ1150形 3ドア車
1500系:1500形-1600形-1500形 3ドア ワンマン車
となり1100系の第3バージョンということもできます。
ところがこの第3バージョンには「デ」とか「サ」とかの記号がなく番号のみとなっているのです。
実は、1987年に施行された鉄道事業法によって付与する必要がなくなったからなのですが、
大概の鉄道事業者は、慣例に従いあえて変更するようなことはしていません。
でも、1100系を長く作り続けた神戸電鉄では、1991年新造の1500系から「デ」を取っ払うことにしたのです。
なお加えていうと、デ1320形改造の1370形(1996.7改造)にまで、「デ」を取っ払っています。

全くの新系列である2000系からなら、まだわかるのですが、
同系列の車両にまで新規則を適用するとは、神戸電鉄はなんときまじめな会社でしょう。

 

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