2022年4月 近鉄特急に新しい仲間が現れました。19200系、その名も「あをによし」
奈良の枕詞である「あをによし」にちなみ 奈良を訪ねる観光客をターゲットにした観光特急です。
近鉄ではすでに吉野線に「青のシンフォニー」を導入し、平常ダイヤに観光特急を組み込むということをやっています。
今回はその奈良線、京都線バージョンと位置づけられます。
撮影:2022年5月 大阪難波
京都 – 奈良 – 大阪難波を結ぶ観光特急「あをによし」の専用車両となる19200系は新車ではありません。
折しも2022年にさよなら運転をした12200系を改造したものです。
とうとう近鉄特急の看板娘も姿を消したのか。と思った矢先のカンバックです。
「ゾンビ??」失礼なことを言わないでください。
確かに齢50年を超える車体で足回りも当時の抵抗制御のままというのは驚きです。
しかしその姿はというと紫檀メタリックの塗色をベースに正倉院御物である螺鈿紫檀五絃琵琶をイメージしたラッピングを施し、正面には金色のエンブレムが取り付けられるなど、豪華な雰囲気を醸し出しています。
うーむ、その美しい姿は松田聖子さんもびっくりの美魔女と申せましょう。
どのような魔術を用いたのか。
ここで種車である12200系についてお話しします。12200系は1969~77年に登場しました。
1967年に登場した12000系スナックカーの発展型で新スナックカーとも呼ばれます。
2両編成を基本とし、制御器は電動カム軸式抵抗制御器:ABFM-254-15MDHA、主電動機はMB-3127-A(180kw)と12000系と変わりません。
その違いは120km/h運転に対応するため台車をKD71系に変更しブレーキシステムを強化したことです。
この12200系のスペックは12400系とも共通となっています。
以降12410系、12600系、そして30000系に至るまで、制御器はABFM-254-15MDH系で引き継がれ、電動機MB-3127-A(180kw)も継続して使用されているのです。
12200系が近鉄特急車の中では最多の166両となったのは近鉄特急 抵抗制御車の完成形となる足回りを備えていたからです。
よって交換部品の手当も容易でメンテナンスもしばらくは大丈夫です。
特急車両はスピードも大事ですが、そもそも近鉄特急はスピードで新幹線に太刀打ちできないのですから快適な車内空間をウリにしてきました。
1985~91年に更新が行われ、スナックコーナーの撤去やデッキの設置がなされています。
また1998~08年には後期車に対し新たな更新も行われました。
12200系の車内はさすがに新型特急「ひのとり」と較べれば見劣りしますが、時代に合わせリフレッシュしてきました。
新系列19200系(モ19201-サ19351-モ19251-ク19301)となった今、室内は「ひのとり」とはまた違う豪華な雰囲気を醸し出しています。
1・3・4号車はツインシート(2列座席)、2号車はサロンシート(4名用)、そして4号車にはライブラリーも。
さて、そんな12200系のなかで、19200系へと変身した種車はどのような車両だったのでしょう。
なんと1975年に 英国女王エリザベス2世ご夫妻や昭和天皇ご夫妻が乗車された12256F(モ12256-サ12156-モ12056-ク12356)だったのです。
何号車にご乗車になったのかはわかりませんでしたが、先日「あをによし」に乗車したその時、
「あの時は大変だったわ。でもあの時のドキドキ、ワクワク感が今の私を支えてくれてるの」
と彼女は語ってくれたような気がしました。
「そうか。ドキドキ、ワクワク感こそが 彼女の美しさの秘密だったんだ」
19200系のお仕事はというとほぼ毎日です。特に休日はハードスケジュールです。
また、京都線はほぼ平坦線ですが、奈良線は違います。特に瓢箪山-石切間は屈指の急坂です。
でも鍛え抜かれた足腰は何の不安も感じさせません。よって石切に近づくにつれ大阪平野の大パノラマを楽しめます。
今は、夕方になればお仕事を終える「あをによし」ですが、彼女の佇まいはむしろ夜の方がお似合いのような気がします。
特上の河内ワインと世界各国のビンテージワインをソムリエとともに利きくらべするワイン列車なんかがあれば是非参加したいなあ。
あるいは、奈良市内(あるいは京都市内、大阪市内)のホテルでのクリスマスディナーショーとセットのツアーなんかがあってもいいんじゃないか。
と思ったりするのですがいかがでしょう。
あたかも ペンライトがあまた輝く大阪の街をあとに、生駒山というステージに駆け上がる…。
そんなワクワク感を彼女とともに味わってみたいものです。
-鉄道車両写真集 |
12200系 スナックカー 12200系リニューアル車 19200系「あをによし」へJUNP |
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