「暫定Tc」阪急電鉄 6114(珍車ギャラリー#400) 

「暫定Tc」阪急電鉄 6114(珍車ギャラリー#400) 

「私鉄車両編成表 2012年」の宝塚線ページに「暫定Tc」を見つけました。
6114がそうです。6000系は6000(6500)+6100(6600)でMMユニットを組むのですが、6114には相方となるM車がいません。
なるほど、これでは電動車としては使えません。それにしても一体どういうことなのでしょうか。

6000系は神宝線用として5100系の足回りに2200系の車体を組み合わせた抵抗制御車です。
1976~80年に126両、85年にT車を4両が製造され計130両の一大勢力となりました。

6000系のあゆみを見てゆきましょう。先頭車に注目してください。
宝塚線用は00番台で8連。神戸線用は20番台2連+10番台6連 となっています。
神戸線では 増結編成2連+基本編成6連でスタートしています。

宝塚線:Mc-T-M’-T-T-M-T-M’c
6000-6550-6500-6560-6570-6600-6580-6100
6001-6551-6501-6561-6571-6601-6581-6101
6002-6552-6502-6562-6572-6602-6582-6102
6003-6553-6503-6563-6573-6603-6583-6103
6004-6554-6504-6564-6574-6604-6584-6104
6005-6555-6505-6565-6575-6605-6585-6105
6006-6556-6506-6566-6576-6606-6586-6106
6007-6557-6507-6567-6577-6607-6587-6107
6008-6558-6508-6568-6578-6608-6588-6108

神戸線:Mc-M’c +Mc-M’-T-T-M-M’c
6020-6120 +6010-6510-6650-6660-6610-6110
6021-6121 +6011-6511-6651-6661-6611-6111
6022-6122 +6012-6512-6652-6662-6612-6112
6023-6123 +6013-6513-6653-6663-6613-6113
6024-6124 +6014-6514-6654-6664-6614-6114
6025-6125 +6015-6515-6655-6665-6615-6115

とここまではいいのですが、80年製の26F +16F で変化が生じます。
将来、神戸線の朝ラッシュ時における10連運転を考慮して、増結用20番台を4連としたのです。
一方で、神戸方の基本編成用16Fについては 6連から中間車を抜き2連としました。

6026-6676-6686-6126 +6016-6116

なぜこんな事をしたのでしょう?
増結用はあくまで20番台としたかったのだともいえそうですが…。
それだけではなさそうです。
85年に神戸線で10連運転が始まった時、5年ぶりに追加新造されたT車2両(6670-6680)は20番台に組み込まれ、

6020-6670-6680-6120 + 6010-6510-6650-6660-6610-6110

のように組成されました。
もし10番台6連にT車2両を増結し8連にすれば、4M 4Tになります。
6000系は5100系と同じ足回りです。
宝塚線ならいざ知らず、神戸線で4M 4Tはパワー不足となるのです。

対して20番台はMM 編成ですから、ここにT車を2両増結すればトータルMT比を1:1に収めつつ、昼間でも基本編成6連を問題なく使えます。
以後、神戸線の6000系は4連+6連にするという方針だったのでしょう。
そんなわけで85年にT車はもう2両(6671、6681)追加新造されました。

ところが、なんと彼ら(6671、6681)は7000系に編入されるのです。

以後、彼らは6000系でありながら6000系として運行されることはありませんでした。
これが6000系の珍車その1となります。

7021-7521-6671-7761-7771-6681-7621-7121

ではなぜそんなことになってしまったのでしょう。
それは、出力を150kw×4とパワーアップした7000系ならば4M4Tでも神戸線で使えるからです。
4連の増結車は普段は昼寝をしているわけですし、6連ばかり増やしても輸送力増強は限定的になってしまうので方針変更したというわけです。
よって87~88年にかけて、神戸線の10連運転を大幅に増強することになったとき、6000系による4連増結ではなく7000系による2連+8連で行うことになりました。
ちなみに7000系の増結用2連(30番台)は1M1TとなりMT比を1:1に収めています。

6000系のあゆみに話を戻します。
98年、阪急は山陽乗り入れをとりやめ、神戸線での6連運用が消滅することになりました。
基本編成6連(11.12.13.15F)はT車2両を挿入して4M4Tの8連に再編成、宝塚線に転属することになりました。
T車には2200系中間車の改造車8両が充当されます。
4編成分ですから8両でピッタリですね。
といいたいところなのですが、そう簡単にはゆきません。

甲陽線・今津南線のワンマン運転用車両を6000系3連で運用することにしたのです。
6020番台すなわち増結用2連を3連化することにしました。
そのために宝塚線用の6007FからT車を3両6557.6567.6587捻出しました。

6007-6507 –6557-6567-6577-6587– 6607-6107

これを補うために6010Fの中間車だった6610-6510の電装を解除し暫定T車扱いとして組み込みました。
加えて不足分を2200系からの編入車6770 で補いました。
6010F から直接補充すればいいのに、どういうわけで07Fを介するのでしょうね。
おそらく-6610-6510- ユニットをバラしたくなかったからと思われますが、
かくして、この暫定T車が6000系の珍車その2となります。

阪急 6000系 6610

阪急 6000系 6510

6007-6507 –6610-6510– 6577-6770- 6607-6107

結果、6770の相方となる6760は休車となってしまいました。

話を進めます。
2002年、4年間休車だった6760が再起します。
その経過はこうです。
00F(6000系唯一のアルミ車体編成)の6600が経年による変化を調査するため抜き取られることになったのです。
代わりにM車を補充しなければなりません。

この時、6014Fから6614を抜き取り6000Fに組み込みました。
98年、神戸線での6連運用が消滅した時、基本編成6連(11.12.13.15F)が4M4Tの8連に再編成、宝塚線に転属することになったと前述しました。
14Fが抜けていますね。実は6連のまま神戸線に残っていたのです。

6014-6514-6654-66646614-6114

6000-6500-6550-6560-6570-65806614-6100

阪急 6000系 6614

この時6654-6664は6024Fに組み込まれ4連に

6024-6654-6664-6124

そして6614の穴を埋めたのが6760なのです。

阪急 6000系 6760

6014-6514-6760-6114

6760はT車です。
6000系はMMユニットですから、6760をあてがわれても6114のモータは動作しません。
でも14FはオールMの4連でした。
6014-6514のMMユニットだけでも使えます。
よって6114の電装は解除され、暫定Tcとなるのです。
これが6000系の珍車その3。今回のピックアップ車両です。

阪急 6000系 6114

20年以上連れ添ってきた伴侶(6614)と切り離された彼女(6114)は暫定Tcとして(…しばらくの辛抱だと諭されつつ)20年近い歳月を過ごしてきました。
そして2022年現在、4連となった14Fは24Fとともに箕面線で安住の地を得たようにも見えます。
6614と復縁することはもはやありますまい。
98年、07Fに組み込まれた…そう前述の暫定T車6610-6510は、2017年にそろって6690-6590に改番、本来の姿に復帰することはありませんでした。
彼女もまた、M’c として復活する日は来ないように思われます。
でも私には彼女が6060とか6064とかいう名を望んではいないような気がするのです。

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