「阪急全線対応」阪急 5100系(珍車ギャラリー#178)

「阪急全線対応」阪急 5100系(珍車ギャラリー#178)

5100系に-5794?-

阪急電鉄 5100F⑦ 5794 十三駅 2010.6

5年前、宝塚線の5100系に妙なナンバーの車両があるのを発見しました。
5794とか5761とかいうナンバーの中間付随車(T車)です。
どこが妙なのかというと5100系の場合、普通ならT車は5650~とかいう番号になるのです。
ちなみに5100系が登場する以前、阪急の番号の付け方は原則100の位が0ならば神戸線、1ならば宝塚線、3ならば京都線の
先頭車(=運転台つき)を表し、中間車ならばそれに500を加えます。
なおかつその車両にモーターが付いていない付随車であればなお50を加えるといったきまりです。
だから5650番台というのは5100系の中間付随車(T車)ということになります。
申し遅れましたが100の位の2は,試作車に割り当てられています。
5200系は阪急における冷房車の試作車という位置づけとなります。
5794とか5761という数字はすなわち5200系のその5200に550を足した中間付随車(T車)ということになるのです。

ところで試作車である5200系は短命で、1992年から廃車が始まり2001年には姿を消しています。
T車だけをずっと残しておいて、ここ(2005年)で復帰させるなんて事は考えられません。
それに5200系は、1970.から71にかけて25両しか製造されていないのです。
94とは5750形の45両目ということです。
試作車である5200系にT車がそんなに沢山いるはずもありません。
「ははあ…。これは何かの改造車で、種車の番号を残したのに違いない。」
と考えた私は、当時の編成表をひっぱりだして消滅した94を捜しました。
でも全く見あたりません。
「そうか。M 車をT車化したものかもしれない。」
ということでマイナス50して44を捜します。
すると…いました!5144です。
5100系のMc車(運転台つき電動車)です。
たしかに5794にも5761にも運転台が残っています。
ところでこれを捜し出すのには少し苦労しました。
5144は神戸線の配属だったのです。

阪急 5100形とは

ここで5100系について、少しお話ししたいと思います。
5100系は神戸線ではなく、宝塚線の専用車的存在と思われています。
その理由の一つとしてモータの出力が挙げられます。
神戸線の5000系が強力な170kwのモータを持つのに対して、5100系は140kwと控えめなのです。
また前述した100位の数字が1であることからもその伝統に照らし、5100系は神戸線のように高速運転しない宝塚線用の電車として
140kwと控えめな設定がなされたようにみえます。
ただ、神戸線での使用も考慮に入れ、Mc-T-T-Mcの編成に加えてMc-Mcの編成も用意したのです。
当時6連の運用があった神戸線にあっては、この4+2の6連でもって対応しました。
加えて8連の運用については、これにMc-Mcの編成をもう一つ加える6M2Tという強力な編成を組んだのです。

つまり5100系は宝塚線用の電車でありながら神戸線でも活躍している-と多くのファンにもそう認識されているのですが、
実はなんと京都線まで含めた阪急全線対応車両として開発された系列だったのです。
もちろん基本は5000系であり、その冷房付き量産車と位置づけられる車両ですが、パワーダウンしたのは、単に宝塚線用の電車として必要がなかったというのではなく前述したように多くの組合せから神戸線のみならず京都線までも対応するがため、当然M車が増えるということから割り出された出力だったのです。
ちなみに今回ご紹介する5794の種車である5144は、なんと京都線用の5連(3+2)として1971年11月にデビューしているのです
(あと京都線でデビューしている5100系は5104F(4+3)で合計12両)

ところで、

なぜ京都線用と神戸線宝塚線用の車両が区別されているのでしょうか。

京都線の前身は新京阪鉄道です。鉄道線として開業したため京都線の車両は大きく、軌道線として開業した神戸線宝塚線に乗り入れることが出来ないのです。
十三駅ででも、比べてみてもらえばおわかり頂けると思いますが、神戸線宝塚線用の電車は京都線の電車よりほんの少しスリムです。
ですから、京都線の電車が神戸線宝塚線に乗り入れることは不可能なのです。
もっとも逆は可能です。
今年のゴールデンウィーク、神戸線宝塚線から京都線に乗り入れてくる嵐山行き臨時列車が運転されました
これには神戸線宝塚線用の車両(=7000系)が充当されています。

ということで、現在でも京都線用の車両と神戸宝塚線用は区別されています。
5100系を全線対応で開発したというのは一時の気の迷いだったのでしょうか?
それは違います。その時の事情を説明しましょう。

5100系がデビューする2年前の1969年。
阪急京都線は大阪市営地下鉄堺筋線に乗り入れることになりました。
阪急では、この相互乗り入れに際して大阪市営地下鉄と協議し新規格の車両3300系を大量投入しました。
しかし3300系には冷房が取り付けられなかったのです。
大阪市営地下鉄の堺筋線用車両60系に合わせたためでもありますが、3300系は126両と大量に増備されたため1971年当時、京都線の冷房車が神戸線宝塚線と比べて不足するという事態を招いたのです。
その穴埋めをするために、必要だったのが5100系冷房車ということなのです。
そんなわけですから、5100系は京都線用の冷房車が投入されるまでのピンチヒッターだったと申せましょう。
ちなみに一時的とはいえ神戸宝塚線用車両が京都線からデビューした例は5100系のみです。

余談になりますが、5100系は当初、6000系として計画されていました。
なぜ6000系とならなかったかについては、京都線での使用を考えていたため、大阪市営地下鉄の60系と番号が競合することを恐れたからでした。
一足飛びに7000系とするわけにも行かず、5000番台を使うことにしたのです。
しかし、もはや5000系に空番は少なく、5100系において新形式は極力抑えられることになりました。
結果、McもM’cも同じ5100形ですますことにし、これらは奇数偶数で区別しています。
そんなわけで5100系のMc車にあてがわれた番号すなわち、5100~5149については、その全てを使い切ってしまうことになるのです。
5000系についてはオリジナルT車である5550形がなんと5563ただ1両しかいないのに対し5100系のオリジナルT車については5650から5690まで41両分使っています。
さて5100形をT車化するに際して5144なら+550で5694となり、空番を使えますが、5111については5661ということになり重複が生じることになります。
そこで、もはや存在しない5200系のT車用にあてがわれた5750番台を割り振ることになったのです。

1972年 京都線に5300系冷房車が投入。

堺筋線にも乗り入れできる規格をクリアーした5300系です。
京都線の車両としては、やはりこちらが望ましいわけです。
冷房車の数あわせで投入された5100系は、わずか2年ほどで宝塚線に呼び戻されました。
全線対応を謳った5100系でしたが、今や神戸線での運用も激減し、その殆どが宝塚線に集中してくることになります。
かねてから宝塚線では8連で使用している5100系ですが、4M4Tとなる4+4のユニットで十分なものですから、どうしてもM車が余剰気味になってきます。
これを是正すべくT車化したのが5750番台なのです。

5794は5761とともに2005年2月に改造されました。
そして5100Fの中間車として組み込まれたのです。
もともと5100Fの中間車であった5664と5665は、神戸線用の5000系リニューアル車である5004Fに組み込まれました。
(それぞれ5584、5585と改番)
このことで2071系改造のT車=2084と2185を玉突きで淘汰したというわけです。

なかなか興味深い阪急のリニューアル車

2003年10月に登場した5006F リニューアル車も同様のパターンで、5100系の中間付随車(T車)であった5650形2両(5666.5667)を5006Fに組み込んでいます。
(それぞれ5586、5587と改番)
このことで2071系改造のT車=2086と2186を玉突きで淘汰しました。
加えて5000系の先頭車両である5007=Mcと5056=TcをT車として組み込んでいるのですが、これらについては運転台の痕跡すら残さない徹底的な改造を施しています。
車番も55275556と改番されました。
ここで5527には5520形(M)という新形式がまた55865587には5570形(T)という新形式が与えられました。
そして5556については、オリジナルT車である5550形が付与され(なお唯一のオリジナルT車である5563には5563形という新形式が与えられました)
その違いを形式に反映しています。
とはいえ5556は運転台の痕跡すらないのです。
55865556という番号の違いから、「5100系のT車改造←→5000系のTc車改造」
と気づく人がいるとすれば、ほとんどビョーキといっていい阪急マニアと申せましょう。

5100系にもリニューアル車が存在します。2005年9月改造の5128Fです。
これには5120=Mcと5129=M’cをT車化した57705779が組み込まれました。
これらについても5006Fと同様、運転台の痕跡すら残さない徹底的な改造を施しています。
しかしその原則を逸脱した車番から
「これはいったい何者だ?」
という興味を抱かずにはおれませんでした。
やっぱり名前は大事ですね。

しかし5100系の改造T車である5794たちについては運転台の痕跡があろうがなかろうが、
いやそれ以前に改造車であろうがなかろうが、すべて5650形に編入されてしまいました。
新形式は極力作らないという5100系の原則がここでも貫かれたことになります。
神戸線用の5000系が、9形式(全61両)を数えるのに、5100系(全76両)は一貫して3形式です。
(*この数字は私鉄電車編成表07年版)
同じ鉄道会社なのにこの違いはいったい何なのでしょう。

5100系の改造T車を5750形とすれば、5200系のオリジナルT車(51.52のみ)と重複するからでしょうか。
でも、もう存在しないわけだし…新形式を与えたって罰は当たらないと思うんですが。

参考文献;鉄道ピクトリアル 特集 阪急電鉄 No663 1998.12
鉄道車両年鑑 2004年版
私鉄電車編成表 07

-鉄道車両写真集-  
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