「もとTWR」JR東日本 209系3100番台(珍車ギャラリー#175)

「もとTWR」JR東日本 209系3100番台(珍車ギャラリー#175)

JR東日本 209系

209系という電車は、20世紀のJR東日本を代表する通勤用電車で、試作車である901系が製造されたのは1991年。
量産型である209系については、翌年の1992年から1999年にかけて製造されました。

「重量半分.価格半分.寿命半分」がコンセプト。
ようするに経済性に優れる反面長持ちしないことをあえて採用した系列でした。
というわけで前述したように元901系の900番台は、新幹線電車でもないのに17年という短命さです。
(1994年-量産化改造209系900番台 2008年-廃車)
最終グループとなるのはE231系にバトンを渡すべく試作車として1998年製造された950番台や1999年に同じく拡幅ボディで登場した500番台で、外観のイメージとしては209系というよりはE231系といってもいいような気がする車輌たちです。

まあ、209系もこの500番台でおしまいだろうな。と思われたのですが、なんと2005年。209系3100番台というのが登場します。

これが今回ご紹介する珍車です。

JR東日本 209系 3100番台 71編成④ クハ209-3101 撮影場所:拝島

天下のJR東日本が所有していた中古鉄道車両

209系3100番台は八高線川越線用の209系3000番台(1996年製~2020年廃車)と同じ川越電車区に配置された4両編成の209系です。
3000番台と同じく客用扉が半自動(ドアスイッチを設置)となっている点以外は、0番台と同一のスペックです。
もっとも3000番台と違って、3100番台は改造車がその大半を占めてはいるのですが、モハ209-3101=モハ208-3101のユニットは正真正銘の新車です。
それでいて彼らは最終グループのような拡幅ボディではなく、旧タイプのスクエアなボディでした。
併結する改造車に合わせたためですが、この改造車がくせ者なのです。正確に言うと209系ではありません。
元を正せば東京臨海高速鉄道70-000形。つまりJR東日本の車両ではないのです。
天下のJR東日本が、国鉄ではない他社で使われた中古の鉄道車両を所有していたのです。
まあ意外といえば意外ですが、なぜこのようなことになったのでしょう。

東京臨海高速鉄道(TWR)は、東京都が筆頭株主となる第3セクターの鉄道会社で、1996年に 新木場 – 東京テレポート間の「臨海副都心線」を開業しています。
この時 TWRは70-000形4両編成4本(01 – 04編成、計16両)を用意しました。
しかし当時、TWRは本格的な車両基地を有しておらず、保守点検に関してはJR東日本に委託することにしたのです。
そこで大株主でもあるJR東日本と互換性のあるJR東日本の当時の車両。
つまり209系をベースにした車両を導入したというわけです。
そんなわけで70-000形は、車体も台車も主要機器も設計はほとんどがJR東日本の209系と共通です。
車両コストも安あがりで、保守費用の節約にも大いに貢献したと思われます。

2002年。TWRは、天王洲アイル – 大崎間を開業し全線開業。
めでたくJR東日本埼京線と相互乗り入れを開始することになりました。
これを機にTWRでは埼京線直通用列車をJR東日本の205系と同じく10両編成化し、さらに「りんかい線」内の専用列車も6両編成化することになります。

そして2004年には全車両を10両編成にしました。
このことでJR東日本の車両も「りんかい線」内列車に充当することができ、運用の自由度が増しました。
でもこの時、組成変更で余剰車が6両発生することになるのです。
それが70-020, 70-029, 70-030, 70-039(以上4両=Tc)、 70-027, 70-028(以上2両中間M車)です。

東京臨海高速鉄道 70-000形10F① 70-109 撮影場所:大崎

2004年 TWRが70-000形を6両廃車する一方で、70-000形の新車を同数の6両登場させる不思議

ところでこの2004年。TWRは、以上6両の廃車を出す一方で、新車を同数の6両登場させているのです。
いかな寿命半分の209系がベースとはいいながら、これはおかしいですね。
そのからくりをお教えしましょう。
新車6両は⑦、④号車に充当されるT車ばかりです。
これは当時「りんかい線」内専用列車に充当された6連(4M2T)×5本を10連(6M4T)×3本組み替える際に必要だったのはT車6両ということなんです。
トータルでは30両から30両へということで増減はありませんが、M車は4×5=20両から6×3=18両に減じており、2両の余剰車が発生しています。
そして3編成に減じたということで運転台付きのTc車も2編成分つまり4両が余剰となったのです。
これらについては大阪市営地下鉄などのようにT化するという方法もありますが、ちょうどそのとき、JR東日本では八高線の103系4連を取り替えたいという思いがありました。
その際にこの4両のTc車含むこれら6両は、好都合な車両ということになるのです。
よって、これらがJR東日本に売却されることになりました。なにせ、ベースは209系なのです。
多少、顔の造作は違いますが、これに新造のMMユニット2両を加えれば、209系の4両編成を2本都合することができます。

これがJR東日本 209系3100番台です。

納得できない引退。

彼らの働き場所となる八高線・川越線には103系3000番台が活躍していました。
なんと彼らは72系970番代(モハ72形970番台・クハ79形600番台)の車体を使用して足回りを103系のものに取替えて新性能化したものでした。
1985年の川越線電化に際し、川越-高麗川間用に3連×5=15両が改造されました。(95、96年4連化、91年より冷房改造)
制御器こそ新品ですが、台車は予備品あるいは101系のものを再利用するなどしています。
2005年に全車廃車されたわけですが、1975年製の車体ですから、しっかり30年は働いてくれたわけです。
線形も穏やかで運用もゆったりとしている八高線・川越線は永く余生を送るにはいいところだと思っていました。
私はTWR70-000形のほうが先に姿を消すだろうと予想していたのです。しかし、まだまだその活躍を見ることができそうです。
結果として、3100番台改造車については26年。
モハ209-3101=モハ208-3101の新製ユニットについては18年でご用済みということになってしまいました。
後釜となるE231-3000 番台の方が2年古い車両なのに…。
JR東日本 209系として生まれた宿命なのでしょうか。

-鉄道車両写真集-
JR東日本 209系3000番台.3100番台 103系 3000番台、3500番台-川越区 八高線.川越線用の車両たちへJUMP

 

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