「50歳でも特急」東武鉄道 350系 (珍車ギャラリー#394)

「50歳でも特急」東武鉄道 350系 (珍車ギャラリー#394)

50年を越えて優等列車であり続けた 東武 350系

東武鉄道 350系

東武350系は200系投入により余剰となった急行「りょうもう」用1800系を1991年に改造したものです。
日光線にも乗り入れることから発電・抑速ブレーキを追加しました。
1800系のうち 13・16・17・18Fを改造し、6連×2を300系、4連×3本を350系としました。
種車となる1813,1816Fは1969年9月製ですから 351,353Fは52年の歳月を経て今なお優等列車として活躍を続けていることになります。
すごいですね。ここで1800系についてお話しします。

1800系のパフォーマンス

1800系は1969年にデビューしました。
観光列車であるDRC1720系と異なりビジネス仕様とされたため1720系に比較すると地味ではあります。
しかし当時の国鉄急行形車両(普通車)がボックスシートだったのに対し回転式クロスシート(リクライニング機能なし)を採用しています。
洗面所こそ設置されてはいませんがトイレは当初から汚物処理装置付きの循環式です。
なお清涼飲料水の自動販売機が設置されたのは1800系が最初です。
ドアは乗降を速やかにするためドア幅は900 mmの広幅となりました。
モハ1830形のみ2箇所、他の車両には1箇所づつ設置されました。
窓は大型(幅1,520mm)の固定窓で 冷房装置は1720系と同じ「キノコ」型の分散式RPU11T2-33。
集電装置はスペース確保するため下枠交差式パンタグラフを採用しました。
特急用といっても差し支えないスタイルです。
一方、走行機器は同時期に製造された8000系とほぼ共通です。
というと「なぁんだ」と思われそうですが、
主電動機は130kw、主制御器は日立製のVMC超多段型制御、そう。バーニア制御器です。
発電ブレーキがない分かえって加減速はスムースです。
東武の郊外線区は駅間距離があり各停でも結構すっ飛ばすんです。
8000系をなめちゃあいけません。
さらに1800系では最終弱め界磁率を20%にし(8000系は30%)高速性能を向上、台車も急行用にチューンアップしています。

1800系は生まれながらにして特急用車両としてのパフォーマンスを秘めた車両だったのです。

東武鉄道 1800系 りょうもう

東武鉄道 伊勢崎線、桐生線 1800系 急行りょうもう 6連 編成表
←浅草⑥         伊勢崎 赤城①→
1811_1821_1831_1841_1851_1861
Tc-M-M-T-M-Tc
11~19F 編成ごとに末尾1桁を揃えている

1969年に4連固定×6本製造され、1973年には2編成増備されました。
1979年には中間車2両を追加、6連固定となりました。
(1987年に14年ぶりに1819F が1編成増備されています。
なお、この1819Fは14年のブランクがあったため他の編成とは外観・内装共に異なります。)

1991年 300系350系登場

1991年に200系が登場。
1800系は急行「りょうもう」(1999年より特急)から順次離脱することになります。
しかし車齢は20年ほど、19F に至っては4年です。
1813F・1816F・1817F・1818Fは300・350系に、
1811F・1812F・1815Fは通勤車に改造されました。

東武鉄道 伊勢崎線、日光線 350系 4連 編成表
←浅草④   東武日光 鬼怒川温泉①→
350-1_350-2_350-3_350-4
Tc1-M2-M1-Tc2 特急「しもつけ」「きりふり」
351~353Fの2編成  形式はクハ350-1+モハ350-2,-3+クハ300-4

東武 300系

東武鉄道 伊勢崎線、日光線 300系 6連 編成表
←浅草⑥      東武日光 鬼怒川温泉①→
300-1_300-2_300-3_300-4_300-5_300-6
Tc1-M2-M1-M4-M3-Tc2
301~302Fの2編成  形式はクハ300-1+モハ300-2~-5+クハ300-6
参考 私鉄車両編成表2009年版 撮影 199

350系の改造種車となった1800系は6両編成2本であったことから、
352編成のみ中間車を方向転換の上先頭車改造しています。
このため352編成は客室窓の窓割りや台車の構造が351編成・353編成と異なっています。
私だったら3連×4本にするけど、それはさておき
この300系・350系の登場により6050系で運行されていた「快速急行」は「急行」に変更されました。
(関西人にとって「快速急行」は「急行」の上位となりますが、当時の東武では「快速」の上位となります。)

「快速急行」と6050系

東武 6050系 

ここで「快速急行」用の6050系についてお話ししておきます。
野岩鉄道会津鬼怒川線への直通運転に備え、1985~86年に2連×22=44両が新製されました。
座席指定の有料快速急行「だいや」「おじか」「しもつけ」にも使用されています。
しかし 基本は料金不要の快速、区間快速に使用されるのがメインであり座席もセミクロスシート。
新栃木駅以北の一般列車は主に6050系と思って差し支えありません。

1991年7月、350系300系は6050系で運転されていた座席指定の快速急行に投入、
急行「しもつけ・きりふり・南会津・ゆのさと」また「尾瀬夜行」「スノーパル」などの臨時夜行列車でも活躍することになります。
350系300系をして これらの列車はしっかりグレードアップされたといっていいでしょう。

2006年 300系350系は特急に

2006年のダイヤ改正から 「しもつけ」は350系をして特急に格上げ。
「きりふり(浅草→南栗橋平日のみ)」も300系による特急に格上げされました。
(浅草⇔東武日光の「きりふり(臨時列車)」などでも使用されています。)
36年以上の歳月を経て特急に上り詰めたわけです。

さすがに寄る年波にはあらがえず、2017年 300系は引退し 350系の特急「しもつけ」も2020年に廃止されました。
現在、平日運転の特急「きりふり」に使用されています。

500系「Revaty(リバティ)」デビュー

さて 東武は2017年。500系「Revaty(リバティ)をデビューさせました。
特急形車両の新造は26年ぶりのことです。

東武鉄道 伊勢崎線、日光線 500系 特急リバティ3連 編成表
←浅草③  東武日光 鬼怒川温泉①→
501F;501-3_501-2_501-3
Mc2-T2-Mc1
501~508Fの8編成 形式はモハ500-1形+サハ500-2形+モハ500-3形
参考 私鉄車両編成表2018年版

3連なんですね。
愛称となる「Revaty」は併結・分割することで東武特急のすべてをリカバーする「Variety」の意と編成の自由度を表す「Liberty」に由来します。
「リバティけごん」と併結し鬼怒川線から野岩鉄道、会津鉄道へ乗り入れる直通特急列車「リバティ会津」に、加えて春日部で分割する野田線直通通勤特急や「尾瀬夜行」「スノーパル」などの臨時夜行列車にもリバティが導入されました。

東武特急の新たな可能性を拓いたわけですね。
短編成だからこそ、なしえたわけです。
私は350系がいたからこそ こうした自由な発想が引き継がれたような気がします。
500系リバティーは3連×8本=24両で営業運転を開始し 2020年には3連×3本が増備されました。
2021年にはなお6本追加するそうです。
そうなれば、いよいよ350系は頼もしき後輩に後を託すことになるのでしょう。

この記事は2021年8月に書いたものです。350系は2022年3月 姿を消しました。

-鉄道車両写真集-
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