「近江商人と西武401系」西武鉄道 401系 (珍車ギャラリー#111)

「近江商人と西武401系」西武鉄道 401系 (珍車ギャラリー#111)

西武 401系

近江商人と西武401系

「買い手よし、売り手よし、世間よし」の「三方よし」で知られる近江商人といえば、「しまつしてきばる。」という言葉に尽きます。
お金を貯めるのに「しまつする(倹約する)」のは当然ですが、この言葉は単なる倹約ではなくて「きばる」-つまり-「徹底してモノの効用を使い切れ」ということを教えているのではないでしょうか。

西武鉄道は戦後徹底して旧型国電のリユース、リサイクルを行い「質より量」と後ろ指を指されながらも合理的な経営に努めてきました。戦前、戦後と西武グループを引っ張ってきた堤康次郎氏は近江出身です。西武401系はそんな流れをうけて生まれた電車ではないでしょうか。

西武411系→401系

401系はもともと1964~68年にかけて新製された411系(クモハ411形+クハ1451形)という2両編成の電車でした。
しかし新造とはいってもツリカケ駆動でモーターはMT-15。台車はTR-14A(Mc)、TR-11A(Tc)とその足回りは旧型国電をそのままリサイクルしたというものでした。
主に支線区間で、短編成で走るのだからこれで十分というわけでしょうか。いいえ701系、801系の増結用として 新宿線、池袋線でも活躍しました。

しかしさすがにその足回りでは対応できず 1972年にMc車のみエアサス台車のFS-40に取り替えました。
そして1978~80年に今度は車体を再度活用するべく新性能化されることになったのです。
今度は1C8MのMM編成となり平行カルダン駆動のエアサス台車 FS-372を装備しました。
それだけではありません。イエローの新塗装もまばゆい冷房車として面目を一新したのです。

本線の増結用車両としても十分使える401系は「これからも末永く西武で活躍するのだろうな」と私は思いこんでいました。
ところが10年後の1990年には新2000系の導入により401系は西武を逐われることになったのです。
「なんで、こんな勿体ないことを あの西武が…」と思っていると、なんとそのすべて(全38両)が他社に譲渡されているではありませんか。
下表参照;鉄道ピクトリアル「特集 西武鉄道」No560 1992 *811Fのデータを追加しています  )

西武 竣工 冷房改造 廃車年月日 譲渡先 車番 入籍年月日
クモハ401 クモハ402 1964 1978 1990/9/30 1 三岐鉄道 クモハ102 クモハ101 1990/12/21
クモハ403 クモハ404 1964 1978 1991/2/11 2 近江鉄道 モハ1801 モハ801 1993/6/18
クモハ405 クモハ406 1964 1978 1991/3/20 3 三岐鉄道 クモハ104 クモハ103 1991/6/26
クモハ407 クモハ408 1964/12/23 1978/8/4 1992/5/11 4 上信電鉄 クモハ152 クモハ151 1992/11/7
クモハ409 クモハ410 1965/8/27 1978/9/8 1993/1/18 5 三岐鉄道 クモハ106 クモハ105 1993/6/28
クモハ411 クモハ412 1965/9/10 1979/9/7 1996/12/16 13 近江鉄道 モハ1811 モハ811 2009/4/
クモハ413 クモハ414 1965/9/25 1979/10/8 1995/4/23 10 近江鉄道 モハ1807 モハ807 2002/3/31
クモハ415 クモハ416 1965/10/13 1979/11/6 1997/3/17 17 近江鉄道 モハ1803 モハ803 1999/3/31
クモハ417 クモハ418 1966/8/13 1979/12/5 1997/3/17 18 近江鉄道 モハ1805 モハ805 2000/1/28
クモハ419 クモハ420 1966/8/25 1980/2/8 1996/12/16 14 近江鉄道
クモハ421 クモハ422 1967/3/20 1980/3/8 1996/12/16 15 近江鉄道 モハ1806 モハ806 2000/3/31
クモハ423 クモハ424 1967/3/20 1980/8/18 1994/4/3 6 近江鉄道 モハ1804 モハ804 1999/6/29
クモハ425 クモハ426 1967/10/14 1980/9/9 1994/4/3 7 近江鉄道 モハ1802 モハ802 1999/3/31
クモハ427 クモハ428 1967/10/14 1980/1/10 1997/3/17 19 近江鉄道 モハ1810 モハ810 2005/3/31
クモハ429 クモハ430 1967/10/14 1980/10/11 1994/4/3 8 近江鉄道 モハ1821 モハ821 1997/3/18
クモハ431 クモハ432 1967/10/14 1980/11/4 1994/4/3 9 近江鉄道 モハ1822 モハ822 1997/3/18
クモハ433 クモハ434 1968/6/21 1980/12/3 1995/4/23 11 近江鉄道 モハ1808 モハ808 2002/1/29
クモハ435 クモハ436 1968/6/21 1980/1229 1995/4/23 12 近江鉄道 モハ1809 モハ809 2003/11/30
クモハ437 クモハ438 1968/6/21 1981/2/2 1996/12/16 16 近江鉄道 モハ1701 モハ701 1998/5/12
西武 竣工 冷房改造 廃車年月日 譲渡先 入籍年月日

その全てが地方鉄道へ

ひょっとしたら、こうなることがわかっていて西武は取り替えを進めたのではないかと思うほどです。
それにしても大手私鉄の車輌1系列 その全てが すべて他社へ引き取られたというのは他に例をみないもので「まさに珍車!」と申し上げても過言ではないと思います。

さて この表からもお解り頂けると思いますが、その多くが近江鉄道に引きとられています。(32両/38両)
加えて近江鉄道以外の2社が 譲渡された直後に車輌を入籍運用しているのに対し、近江鉄道では最低 2年以上と間隔が開いていることが特徴的です。
---しかしまたどうして?---
実は1991年の導入当時、401系のような大型車輌は近江鉄道線の車両限界を超えており走らせることができなかったのです。
補助金により八日市-貴生川間に大型車が入線できるようになったのは1999年7月。
それまで近江801系は小出しで、それも限られた区間だけで運用されていました。多くの401系はじっと出番が来るのを待っていたのです。最新の810編成も2005年のデビューまで8年の間、冬眠していました。
私鉄編成表’07年版によると07年度中に811編成を登場させるとのこと。さすれば11年以上の休眠車輌が生き返ることになります。

これは凄い。
上信電鉄 151編成上信電鉄は151編成(写真右)に続いて153.155編成を登場させています。401系が売り切れてしまったため4連であった西武の801系の中間車に運転台を取り付けるという工事を余儀なくされています。
上信電鉄にしてみれば「近江鉄道が使っていないのであれば是非401系を引き取りたい」という気持ちがあったのではと思われます。

しかし近江鉄道は冷房車でありかつ2両編成で扱いやすい401系をずーっと冬眠させてきました。
在来車の寿命が尽きるのを待ち自社工場で少しずつ復活させる。はじめからそういう長期的視点にたって401系を導入したのでしょう。

近江商人の商売の考え方は短期的利益を追うのではなく長期的視点で物事を考えることに独特の特徴があるように思われます。
私は401系をこういうカタチで導入する近江鉄道にこれこそまさに近江商人のやり方だなあと思わずにいられないのです。

いまだ再デビューを果たせぬ401系が4両いるわけですが、いずれ残りの401系も近江鉄道で働いている日が来るような気がします。
それは何年後のことでしょうか。

初出:2007.12.02

-鉄道車両写真集-
      西武鉄道 401系   近江鉄道の電車91~ 上信電鉄 三岐鉄道 三岐線電車 へJUMP

07年度中に811編成を登場させる予定だったようですが、実際には2009年4月でした。
812F は結局日の目を見ず、クモハ419+クモハ420は部品取りに回ったそうです。

クモハ419 近江鉄道 彦根駅にて
追補:2021/07/24

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