「立派な運転台が付いているのに」JR北海道 キハ283系 キハ282-2001 珍車ギャラリー#421

「立派な運転台が付いているのに」JR北海道  キハ283系 キハ282-2001 珍車ギャラリー#421

2001年3月、キハ283系のうち キハ283形100番台、200番台 キハ282形1000番台が、
そしてキロ283形についてはその全てが一斉に姿を消してしまいました。いったい何事?
実は改番していただけの話なんですがいったい何があったのでしょう。
種明かしをする前にキハ283系について、そして先代にあたるキハ281系についておさらいしておきましょう。

キハ283系は 1997年3月から「スーパーおおぞら」としてデビューしたJR北海道の特急用気動車です。
1995年製の試作車3両を含めキハ283系が63両製造されたのに対し先代のキハ281系は1992年製の試作車3両を含め24両です。
このことを考えるとキハ283系こそがJR北海道気動車特急の本命といえそうです。
しかしキハ283系はキハ281系のDNAをしっかり引き継いでいます。

キハ281系は1994年3月から「スーパー北斗」としてデビューしました。
車体は軽量ステンレス製(前頭部は普通鋼製)でエンジンは N-DMF11HZA(355ps/2100rpmコマツ製)を各車に2台装備しました。
このことで国内の気動車では初となる最速130km/h営業運転を実現しています。
また制御付自然振子機構を装備した N-DT281A台車の傾斜角度は5度。曲線通過速度は本則 + 30km/hとなりました。
このことで運転開始当時「スーパー北斗」の最速列車は 札幌―函館間を従来よりも30分短縮し2時間59分で結ぶことになるのです。
表定速度時速は実に106km/h。在来線気動車特急としては最速です。

キハ283系はキハ281系とエンジン出力は変わりません。最速130km/hの営業運転も同じです。
しかし根室本線の急曲線と脆弱な路盤に対応するため振り子台車に自己操舵(セルフステアリング)機構を組み込みました。
また車体の傾斜角度を6度に拡大したことで 本則 + 40km/hでの通過を可能としました。
このことで札幌-釧路間の最短所要時間はキハ183系「おおぞら」の4時間25分から3時間40分へと大幅に短縮されています。
キハ283系はキハ281系と同様の軽量ステンレス車体ですが、徹底的な低重心化が行われ、乗り心地も改善されています。
さらっと書いてしまいましたが、冬の厳しさが半端ではない根室本線においてこれらの条件を安定してクリアすることは本当に大変なことであったに違いありません。

キハ283系はキハ281系と同じく高運転台構造となっています。
運転士保護のため踏切事故や大型野生動物との衝突を考慮してのことです。
あわせて前面貫通扉付きとしました。これは車両運用の効率化を考えてのことです。
参考文献である「新車年鑑96年97年版」においてJR北海道 運用車両課の筆者はともに「スーパー北斗」でも共通運用することが前提であると記されています。
制御、連結方式および座席数が同一であるのも、振り子制御を札幌-釧路、札幌-函館の2系統としているのも共通運用を意識してのことです。
だったら形式の付け方も同じであるべきです。
ところがなんと キハ283系は当初、トイレ付きを283形、トイレなしを282形としたのです。
確認するまでもないと思いますが、従来は先頭車が奇数、中間車が偶数です。
というわけでキハ283系の場合 (○数字は号車 斜字は283形トイレ付き)
先頭車は①キハ283形0番台(釧路方)、⑥⑨100番台(札幌方)、
中間車は④キハ283形200番台(車椅子設備等装備) ②キハ282形0番台、⑤100番台、⑧1000代、⑦2000代(簡易運転台付)、③キロ283形となりました。中間車に283(奇数形式)が紛れ込んでいます。

改番以前:キハ283系3+6連 編成表「スーパーおおぞら」
←⑨札幌               釧路①→
付属編成⑨~⑦:キハ283_102-キハ282_1001-キハ282_2001+
基本編成⑥~①:キハ283_901-キハ282_101-キハ283_203-キロ283_1-キハ282_3-キハ283_1
参照;JR気動車客車編成表 98年版:1998年4月1日  4002D

①③④⑥⑨がトイレ付きです。いい位置に配置されていると言っていいでしょう。
なお①⑥⑨、②⑤⑧は各々同型車です。編成位置で番台区分していました。
編成表を見る限り 車番こそ統一されていませんが編成単位での運用が前提となる付番なのです。

しかし前述のように「スーパー北斗」のみならず「スーパーとかち」などにもキハ283系運用が拡大されることになりました。
バリエーションが増える分 次第に編成単位での運用は困難となります。
編成を構成する上で一番大事なのは運転台付き車両であることはいうまでもありません。
形式のルールも2001年3月から在来車に合わせることになりました。
従来通り 運転台付き車を283形式に 運転台なし車を282形式に統一します。

まずグリーン車であるキロ283はキロ282となります。

キロ282形0番台 キロ282-4(もとキロ283-4)「スーパー北斗7号」③号車 

 つぎに車椅子設備車である中間車キハ283形200番台はキハ282形0番台としました。
キハ283-201~205→キハ282-1~5(新)

キハ282形0番台 キハ282-2(もとキハ283-202)「スーパー北斗7号」⑤号車 

形式をキハ282に変えただけでなく これを機に0番台としたものですから 以下玉突きが生じています。
キハ282-1~3(旧)→キハ282-103~105
同仕様車である既存のキハ282-100番台(101、102)の後に追加しています
同様にキハ282-1001、1002もこの後に追加しました。キハ282-106、107

キハ282形100番台 キハ282-106(もとキハ282-1001)「スーパーおおぞら」④号車 

そして運転台付きはキハ283形に統合されます。
先頭車:キハ283-101~109→キハ283-6~14

キハ283形0番台 キハ283-8 (もとキハ283-103)「スーパー北斗7号」⑦号車 

(なお2001年製の5次量産車以降は当初から新形式番台で落成しています)

改番以後:キハ283系3+6連 編成表「スーパーおおぞら」
←⑨札幌               釧路①→
付属編成⑨~⑦:キハ283_16-キハ282_2003-キハ282_2009+
基本編成⑥~①:キハ283_8-キハ282_104-キハ282_1-キロ282_6-キハ282_106-キハ283_1
参照;JR気動車客車編成表 05年版:2005年4月1日  4001D
斜字で示した①③④⑥⑨がトイレ付きです。改番以前と変化はありません。

ここで注目していただきたいのが今回の珍車。⑦キハ282-2000番台です。
付属編成の先頭に立ち基幹駅と車両基地の回送に使う運転台が付いています。(例:札幌から苗穂への回送)
トップナンバーの2001は試作車であるキハ283形900番台から遅れること3ヶ月、2次試作車として1996年2月に登場しています。
車両の効率的な運用を試すカギとなる車両です。参考文献にはキハ282系900番台と紹介されていました。

キハ282形2000番台 キハ282-2009  撮影場所:札幌

キハ282形2000番台(2001~9)は付属編成の増解結用に 釧路側に簡易運転台を備えています。
簡易運転台とはいえ本線での運転が可能です。画像から見ても立派な運転台です。
基幹駅と車両基地の回送に使うだけではもったいない。
これは 南千歳で分割して新千歳空港ゆき特急の先頭車として使えるんじゃないですか。
この区間なら低運転台でも何の問題もない。
かつて南千歳駅が千歳空港駅だったころ 長ーい連絡通路は大変でした。
それでも乗り換えなし1本で帯広 釧路へいけるメリットは大きかったのです。
1992年開業の空港駅は地下2階。ディーゼルエンジンの排煙は課題となりますが、直通列車なら寒いホームで乗り換え列車待ちすることもないのです。
繁忙期に付属編成を小樽(余市)行きや根室行きにするアイデアだってありです。

2000番台にトイレ・洗面所はありませんから282形で登場するのは納得です
しかし、改番を機にキハ283形2000番台としてもよかったのではないでしょうか。
運転台付き車両であることをもっとアピールできたなら彼女の運命は違っていたような気がするのです。

参考文献「新車年鑑96年97年版」「JR気動車客車編成表 98年版 05年版」


キハ282-2001は同じく試作車であるキハ283形900番台とともに2011年6月に廃車されてしまいました。
他の2000番台も大きくその数を減らしています。

キハ282形3000番台 キハ282-3003

また中間運転台が準備工事となっている3000番台(3001~4)はそのまま2020年に姿を消しています。

 

 

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