「フォーチュントレイン」近江鉄道 700系「あかね号」 珍車ギャラリー#266

「フォーチュントレイン」近江鉄道 700系「あかね号」 珍車ギャラリー#266

来る電車、来る電車、毎日同じ電車だ…としたら、それはやっぱりつまらないですよね。
私の職場は阪急宝塚線沿線にあります。ピカピカの新車である阪急 1000系 が来たときはやはりうれしさを隠せないですね。 (この記事は2014年4月に記したものです)
でも1000系もいずれその数を増やしそのありがたさも失せてゆくことになるのでしょう。
対してそのうれしさが失せない車両もあります。8000系です。
京都線と違って宝塚線はそのほとんどがロングシート車です。しかし8000系の宝塚寄りになるこの2両だけがセミクロスシート車なのです。
その確率はざっくり言うと1/10。私は,8000系に乗り合わせたならよほどのことがない限りこのセミクロスシート車に乗り込みます。
もちろん常に座れるというわけではありませんが、ラッキー!という気分に浸れるだけでもうれしいのです。
職場の同僚も「今日、8000系だったよ」とわざわざ報告してくれます。こっちまでうれしくなってしまいますね。

700系は近江鉄道創立100周年(1998年)を記念して作られました。近江鉄道では唯一無二の転換式クロスシート車となります。
座席だけではありません。JR北海道のアルファコンチネンタルなどイベント列車を彷彿とさせるそのスマートなスタイリングはローカル私鉄のクイーンと申し上げるべき存在です。
「いや、それはちょっと持ち上げすぎでは--」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
確かに長野電鉄の1000系「ゆけむり」富士急の2000系「フジサン特急」富山地鉄の16010系「アルプスエクスプレス」などなど…。ローカル私鉄でも特別な車両は存在します。
しかしそれらはかつて大手私鉄あるいはJRの特急車両でありローカル私鉄のオリジナルデザインではありません。
対して700系のデザインは近江鉄道独自のものです。特に注目していただきたいのは側窓です。戸袋のイメージをなくして長く見せた連続窓。そしてこの窓周りにはブラックを配し先頭形状とも一体化を図っています。これほどの工事を自社工場でやってのける技術。1編成しか在籍しないのにこれだけのこだわりを見せる近江鉄道に拍手です。

それだけではありません。「ゆけむり」も「フジサン特急」も列車の時間は決まっています。言ってみれば特急料金さえ払えば乗車できるのです。
対して700系はというと特急料金など必要ありません。でも、いつ来るかはわからないのです。
というのも在籍する他の2両編成の電車(ロングシート車)と同一運用で使用されるからです。ですからざっくり言うと1/15の確率です。
700系の運用はHPなどにも公表されてはおらず特急料金を払ってでも乗りたい700系に乗車するにはまさに運に頼るしかないのです。
「この気まぐれさこそクイーンと呼ぶにふさわしい」と私は思うのですが、いかがでしょう。

このページのトップを飾るこの写真は、私が新快速に乗って大阪へ帰るとき図らずも米原へ向かう「あかね号」を車中から見てしまったがために彦根で途中下車し、迎撃(撮影)したものです。
「せっかく新快速に座れたのに」とか「帰りが遅れてしまう」とかいう恨み言は一切ありません。ただただ「ラッキー!」という思いでした。
私のような鉄道マニアだけではありません。沿線住民の間にもこの700系に乗車できるとその日は良いことがある。と言われているそうです。
まさに、フォーチュントレインですね。

近江鉄道700系「あかね号」はきっと今日も幸せをお裾分けしているに違いありません。
700系は車体こそオリジナルのデザインですがその足回りはというとこれは西武鉄道の401系のものを流用しています。(西武クモハ438-クモハ437→近江モハ701-モハ1701)
「なんだ中古品か」とは思わないでください。
近江鉄道では1960年代より自社工場で製作された車体により車両の鋼体化、リニューアルを図ってきました。
近江形と呼ばれる1形、新近江形と呼ばれる500形も車体はオリジナルのデザインです。
なんと700系は書類上この1形の改造車(モハ6-クハ218→モハ701-モハ1701)という扱いになっていますが、これもまた使えるものはとことん使い回すという近江鉄道の伝統があるからなのです。

現在、近江鉄道の主力車両となる800系もそうです。800系は通勤用車両である西武401系の車体を利用していますが、当線での車両限界をクリアすべく、妻面の角を欠き取り、前面のデザインもオリジナルのデザインに改められています。

貨物もなくなり、近江鉄道の経営は厳しいものとなっています。それでも「始末して、きばる(頑張る)」近江商人の心意気をくんでいただけたらと思います。

参考文献:鉄道ピクトリアル 新車年鑑 1999年版 No676
藤井信夫氏「近江鉄道電車沿革史」 鉄道ピクトリアル 特集「関西のローカル私鉄」 200.5 No’685

追記

701系は2015年にLED式行先表示器を新設、かつての表示器は愛称である『あかね』のヘッドマークが掲出されるようになりました。
しかし残念なことですが2019年5月に廃車となりました。
「あかね号」の愛称と塗装は2013年より運行を始めている900系901Fに継承され、2019年より運行を開始しています。
なお900系はもと西武 新101系。車端部の優先シートはクロスシート化されましたが他はロングシートです。

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