「運転台のないクハ」富山地方鉄道 16010系 クハ110形 珍車ギャラリー#452

鉄道マニアなら「クハ」と「サハ」の区別など朝飯前です。
動力を持たない付随車のうち 運転台のないのが「サハ」、運転台のついているのが「クハ」です。
ところがこんな常識が通用しない鉄道会社が存在します。富山地方鉄道です。

形式の付け方が また特殊です。車番が5桁というのが普通です。当然、千単位で収まらないほどのバリエーションがあるわけがありません。
では何故5桁なのかというと 上位3桁はモーター(電動機)の出力馬力数を表します。そして4桁目は形式、5桁目が車番というルールです。ということは5桁もありながら同一形式は最大10両しか割り当てがないということになります。
はい。案の定。このやり方はフラッグシップたる14760系で破綻してしまいます。
それはさておき、電車にはモーターを持たない制御車(クハ)や付随車(サハ)も存在します。これらは0馬力なのでクハ10形などと表されます。
クハ10形は 形式を表す下二桁目が電動車モハ14710形と一致しているわかりやすい例ですが、そうでないのも結構あり、ますますワケがわかりません。

前置きが長くなりました。今回のヒロインは16010系です。
クハ110形-モハ16012形-モハ16011形からなる3連で電動車は160馬力車ということになりますね。
16010系は西武5000系レッドアローの車体にJR九州485系の足回り(廃車発生品)を組み合わせたものです。11Fが95年に13Fが96年に竣工しました。改造は地鉄の稲荷町工場で行われました。
どうして485系なのかというと 西武では5000系の足回りを10000系に転用するとすでに決定していたからです。よって地鉄は車体のみを購入し足回りを他社からまかなうしかなかったのです。
西武5000系は150kwの高出力モータを搭載していました。もしそのまま導入できたら20000系!ってことになったかもしれませんね。
しかし そうはならず車体の輸送にあたっては5000系の足回りを外した状態でトレーラーによる道路輸送となりました。

富山地方鉄道 16010系 編成表 3連
←①電鉄富山     ③→ 3連×2
111-16012-16011 Tc-M1-M2c (クハ5502-モハ5052-クハ5501)
112-16014-16013 Tc-M1-M2c (クハ5508-モハ5058-クハ5507)
参照 私鉄車両編成表02年版
西武鉄道 5000系 編成表 6連
←①飯能・西武新宿     西武秩父、池袋⑥→
5501-5001-5002-5051-5052-5502  (Tc-M-M’-M-M’-Tc)

足回りは485系がベースですから各デバイスは国鉄制式機種となります。
主電動機はMT54直巻電動機(120kW)、台車はDT32E・TR69E。そして制御器は1C8M方式の電動カム軸式のCS15Fです。しかしながらマスコンは 京急1000形の廃車発生品としたため抑速ブレーキはカットされています。(主抵抗器については新製)
第1編成ではギヤボックスはそのまま流用し歯車比は3.50となりました。一方第2編成では近郊型と同じ4.82 に変更されました。(第1編成も後年、第2編成と揃えられています)
ブレーキは発電制動併用電磁直通ブレーキ (HSC-D) を採用しています。ただし制動装置本体は営団3000系の廃車発生品を 運転台ブレーキ弁は京急1000形の廃車発生品をそれぞれ流用しています。
はっきりいってもう魔改造ですね。でもこんなことをやってのけれるのは地鉄スタッフの技術力が半端ではなかったからです。

3連固定編成で導入された16010系でしたが 閑散期には持て余す状態が続き 第2編成が2005年に 第1編成が2006年に2連化されることになりました。
そうです。魔改造は続きます。

16010系は1C8M制御のMM編成です。単純に中間車を抜き取ってしまうと自走できません。
かつて国鉄では運転台を車体から切り取り中間車に貼り付けるなどということをやって短編成化を推し進めました。でもそれは余剰車両を切り捨てることになります。
地鉄ではそんなことはできません。中間電動車モハ16012形の機器と制御車クハ110形の機器を入れ替えることにしました。つまり 旧クハ110形をモハ16012形とし(Tc→Mc)、旧モハ16012形をクハ110形とした(M→T)のです。機器のみならず車番についても相互に入れ替えています。でもね「クハ」はおかしいでしょ。「クハ」は本来Tcを意味します。簡易運転台があるのならまだしも実態は運転台を取り除いた「サハ」Tなのですから。

富山地方鉄道 16010系 2両編成 編成表
←①電鉄富山     ②→ 2連×2
16012(もと111)-16011  M1c–M2c   111(もと16012)-T-
16014(もと112)-16013  M1c–M2c   112(もと16014)-T-
参照 私鉄車両編成表08年版

編成から外されたクハ110形T車についてはクハ170形Tc車と同様の増結用車両の扱いとなりました。よって連結器を密着連結器に交換しMM’ユニット間の引き通し線を新設しました。これで3連に復帰することができます。こういう使い方をすることから「クハ」としたのでしょう。ダブルデッカーエクスプレスの2階建て付随車を「サハ」とするのとは違うということです。

こうすることを想定していたのかどうか わかりませんが 2011年に第2編成が観光列車「アルプスエクスプレス」3連としてリニューアルされることになりました。
「アルプスエキスプレス」はレッドアローの外観を保ちつつ、車体にロゴマークなどが入った水戸岡鋭治氏お得意のデザインです。内装も木製を基調としたものに統一されました。
なかでも2号車 クハ112は華麗な変身を遂げました。景色を一望できる外向きのカウンター席に、カップルシート、4人掛けコンパートメントなどバラエティ豊かなレイアウトです。

こうなると一般仕様のクハ111はもう復帰することはできません。ひっそりその姿を消しました。

ただ…アルプスエキスプレス号も現在 定期運行を見合わせているようです。
観光列車はJR四国がかなりうまくやっている印象があります。オンシーズンには定期運行させて欲しいものです。

富山地方鉄道(鉄道線)16010系 「アルプスエキスプレス」
←電鉄富山①
16014-112-16013
モハ16012(M2c)-クハ110(T)-モハ16011形(M1c)
2011年12月より運行  定員99-80-99名(48-33-48席)
台車:DT-32(TR-69)モーター:MT-54 120kw ×4
制御装置 CS15-F ブレーキ:HSC-D
参考文献:鉄道ピクトリアル 鉄道車両年鑑2012年版

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