「自社工場製」福井鉄道 300形 もと静岡鉄道 珍車ギャラリー#074 

「自社工場製」福井鉄道 300形 もと静岡鉄道 珍車ギャラリー#074 

鉄道会社はどのようにして自社線の車両を導入するのでしょうか。
自動車のように数あるメーカーから それこそ星の数ほどある車種の内から自分の希望にかなう一台を選んで購入するのとは話が違います。現場の輸送実態や社会のニーズを勘案しながら、車体自体の寿命やメンテナンス等、コスト面の条件も考慮しなければなりません。また出来るものなら最新のテクノロジーを取り入れつつ最大の投資効果を狙って車両の開発をしてゆかなければいけないわけです。開発にかかる経費も馬鹿になりません。というわけで「餅は餅屋 」。車両の製作はこっちの希望を伝えて車両メーカーに委ねてしまうのがいいのかもしれません。

電車の車両メーカーといえば、日車、川重、日立、近車、そしてJ-TREC(もと東急)というところでしょうか。
たとえば どの700系に乗っても一緒で、今日のは「日立製だったぞ」とわかってもいいような気がするのですが、JRの車両に限って言えばメーカー別の個性などは感じられません。 技術的にも一線上に並んでいるのでしょう。

さて、JRでも自社工場で車両の製作をするようになりました。JR東日本では1994年に新津車両製作所を開設、以来12年間で累計2350両もの車両を製作しE231系のOEMといっていい相鉄の10000系も同製作所で作られています。JR東日本のようなガリバー企業では新津車両製作所だけで自社の車両を賄いきることは不可能で前述の車両メーカーにも製造を委ねています。
しかし自社工場の技術とノウハウが蓄積してゆけば「ウチに出来てオタクに出来ないなんてことはないでしょう。」と物言うユーザーになることが出来ます。またできあがった製品について価格に見合った品質かどうか。目利きが聞くことにもなります。私はJR東日本が自社で車両の製作を行った意義は大きいと感じています。いまやJ-TRECはJR東日本の完全子会社です。

一方ローカル私鉄ではどうでしょう。もはや自力で新型車両を調達する余裕はなく大手私鉄の中古車を導入することが多いようです。
もっとも京王重機などでリニューアルされた車両はただのあてがいぶちの中古車ではありません。地域の特性なども考慮されたものです。
現在の中小私鉄のふところ事情からすればこれが最善の選択といえるかもしれません。でもユーザーの希望にかなう種車が あるかどうかはわかりません。こんな電車が欲しいと言っても「それは無理です」と言われるか相当のコストを要求されることもあるでしょう。

さて静岡鉄道はわずか11.0kmの路線しかない地方鉄道です。にもかかわらず1966年にカルダン駆動の新性能電車を長沼にある自社工場で作り上げました。それが300形です。
(日本のローカル私鉄で新性能電車を自前で作った例はこれしかないと思われます。)
ところが7年後の73年から導入された1000系は12年の歳月をかけて増備され、87年の302編成を最後に静鉄自社オリジナルの車両300形を全て淘汰してしまうのです。
何故でしょう。300形は 20年も持たない車両だったのでしょうか。
違います。その証拠が今回珍車とさせていただいた福井鉄道300形です。福鉄導入後20年、名鉄から譲り受けた低床車導入によりLRT化される2006年まで全編成が運用されていました。

ではなぜ静岡を去らなければならなかったのか。憶測ですが、自社で車両を製作したことで車両担当者の目が肥えてしまったからではないか。と思うのです。
私のパソコンはいわゆる自作です。たいそうなものではありません。ケースの中にパーツを収め、ビスで留め、指定どうりに配線してゆけば良いだけなのでプラモデルより簡単かもしれません。 しかし今まで振り返ることもなかったパーツを一つ一つ吟味し辞書を片手に謎の呪文であったBIOSをセットし悪戦苦闘しました。CMOSクリアーを繰り返しながらもようやくうまく動いた時はやはりうれしかったですね。自作するということが結構高くつくということもわかりました。
次に買うパソコンを自作するかどうかはわかりませんが、とにかくパソコンのスペックと価格を見る目は養われたかなと思っています。
そして困ったことに新しいパソコンがやはり気になって仕方がないのです。

静鉄においても新車を導入する際、担当者(エキスパート)の意見は重視されたと思います。
東急車輌が どのくらいのコストを提示したかはわかりませんが、オールステンレスカーで応答の早い全電気指令式電磁直通ブレーキ(HRD-1)を持つ新車1000形の魅力は熱く語られたのではないかと思われます。
静鉄は中小私鉄ではトップの輸送密度(2万人/日/キロ)を誇るフリークエンシーサービスを行っていますが、それを支え続けてきたのが1000形でした。

1973年に1次形が登場して50年の歳月が流れ 1000形は2024年に静岡からは姿を消しました。ですが今なお熊本電鉄で活躍する姿を見るにつけても古くささを感じ流ことはありません。
静岡鉄道が1000形を導入したのは英断というべきでしょう。

とはいえ 早々に生まれ故郷である静岡を後にしなければならなかった300形をはじめ静鉄オリジナルの車両たちは やはり哀れです。
車体がまだ新しいということもあって100形や350形という旧型車の更新車も日立電鉄や熊本電鉄引き取られました。


日立電鉄は廃止されましたが、熊本電鉄でも永く活躍しました。
300形は 地方の一私鉄が自前で造った電車ではあります。しかし十分通用する車両だということを永く示し続けてきたのです。

(*この記事は2006年12月に記したものをベースに補筆訂正したものです。)

-ローカル鉄道車両研究- →鉄道車両写真集index
福井鉄道 路線歴史まとめ
路面電車(低床車) モ770形 モ880形 モ800形 モ560形 F10形 F1000形 F2000形
鉄道線車両(高
床車)10形 20形 160形 120-1形 120-2形   140-1形①  140-2形 
80形   200形    300形 600形 610形   デキ1形 デキ2形 デキ3形 デキ11形

珍車ギャラリーカテゴリの最新記事