「NK-71:直角カルダン駆動台車」仙台市電(仙台市交通局) モハ400形 珍車ギャラリー#114

「NK-71:直角カルダン駆動台車」仙台市電(仙台市交通局) モハ400形 珍車ギャラリー#114

ツリカケ駆動と直角カルダン駆動の台車が混在する 仙台市電400形

同一形式であるのにもかかわらず、ツリカケ駆動の旧性能車とカルダン駆動の新性能車が、混在する珍車として遠州鉄道の30系をご紹介しました。
路面電車にもこのような例が存在しています。仙台市電の400形です。

仙台市電の路線網は その中央に環状線がありここから郊外へむけ4方向へ路線が放射状に延長されているというものです。
都市計画に基づいて作られた理想的な形状であり 昭和30年ごろまでは市民の多くが仙台市電を利用しまさしく市民の足として機能していました。
しかし昭和40年代ともなるとモータリゼーションの波がこの仙台の街にも押し寄せてきました。
その路線網が市の交通にとって重要な存在である分、自家用車も集中してしまうという結果となり渋滞が多発することになります。
路面電車は道路上を走る電車ではありますが自動車と軌道を共用することはできないと考えるべきです。
民営である広島電鉄が軌道内への自動車の通行を許さなかったことが会社の存続にとっていかに重要なことであったかは改めていうまでもないことですが、公営の路面電車を走らせていた仙台市をはじめ大阪、名古屋、京都といった各都市は自動車の軌道内通行を黙認し都市交通政策の名のもと路面電車の撤退を余儀なくされてしまうのです。
仙台市電は昭和51年に全廃されてしまいました。
環境と人にやさしい交通手段として21世紀の今、あらためて見直されている路面電車ですが、あっさり切り捨ててしまった当時の行政の判断は果たして正しかったのでしょうか。
私には道路行政への見通しの甘さをもっとも安易な方法で解決したに過ぎないように思えてなりません。
地下鉄が必要な場合ももちろんあります。しかし輸送力にあわせて共存する道も選べたのではないでしょうか。

自動車の通行を許したがため路上に立ち往生するようになった仙台市電はもはや市民の支持を得られるはずもありません。
見事に経営的にも悪化の一途をたどることになります。

仙台市電のモハ400形はそんな仙台市電の最後となる車両です。昭和34年に401がデビューします。
しかし最終モデルという割にはツリカケ駆動に直接制御と旧態然としたものでした。
はっきり言ってこれでは開業当初の1形となんら変わるところはありません。
仙台市電は 結果そのすべてが直接制御の電車となるのですが、あの渋滞の中、重いマスコンのハンドルをガシン、ガシンと頻繁に操作しなければならなかった
運転手さんは本当に大変なことだったと思います。

仙台市電 マスコン KR-8

直角カルダン駆動の台車 NK-71

ところが そんなモハ400形の中にも新しい取り組みが見られます。405~410の6両については直角カルダンの駆動方式を持つ電車が現れたのです。
直角カルダン駆動は 自動車のエンジンのようにディファレンシャルギアでもってパワーを直角に分配し車軸に伝えます。
電車のモーターは車軸と平行に装架される平行カルダン駆動が一般的であって、路面電車においても直角カルダン駆動は珍しいものです。
鉄道線においても、直角カルダン駆動は相模鉄道をのぞけば、新性能電車の初期型にしか見られない方式です。
自動車におけるクラッチのようないわば緩衝装置を持たない鉄道車両において とりわけON/OFFを頻繁に繰り返す路面電車ではトラブルが絶えることがなかったのではと思われます。

仙台地下鉄の車庫がある富沢には仙台市電保存館がありここには モハ400形とともに直角カルダンの台車であるナニワ工機製NK-71台車が保存展示されています。

仙台市電 400形 NK-71台車仙台市電 400形 NK-71台車

一回り大きなモーターを装架するせいか 異径車輪をもつこの台車は 仙台市の担当者の苦悩がそのまま姿に現れたようなアンバランスな姿を呈しています。
でも私には 先行して作られた新潟鉄工所製の直角カルダン駆動台車:NP-103 で得られた様々な教訓がこの形に集約しているような気がしてなりません。

408号が登場する昭和36年当時、もはや、仙台市電の先行きは消して前途洋々たるものではありません。
かつ かたくなに直接制御にこだわり続ける保守的な体質。旧型でも十分じゃないかと言われ続けたのではないでしょうか。
さりながら。限られた予算ゆえ自動車の部品を流用しつつ「少しでも乗り心地のいい車両を創ろう。」とこだわりつづけた職人魂…。

車体はともかくこのオリジナリティあふれる台車を残しておきたかった仙台市の担当者のお気持ちが私にはわかるような気がしました。

保存館の目玉は創業時の電車である1形です。昭和51年。仙台市電が廃止されたときに見事に復活を果たしラストランをしました。
市民は感動をもってこの電車を見送ったとあります。これもまた素晴らしいことです。
でも私にとってこの保存館で一番印象に残ったのは、いかにもアンバランスな 「NK-71」台車でした。

追記:ナニワ工機はその後アルナ工機→アルナ車両と名を変え総合鉄道車両メーカーから超低床形路面電車LRVのメーカーと特化していきます。
そんなアルナ車両が2003年に登場させたのがリトルダンサーUシリーズである長崎電気軌道3000形です。
リトルダンサーシリーズは車軸付きの台車を用いながら超低床形路面電車を実現させてきました。しかし 車軸付き動力台車 部分の低床化は困難でした。
そこでUシリーズでは 主電動機を車体(運転台下部)に装架し自在継手とギアボックスを介して車軸を直角に駆動する方式を採用しました。

それ以前のタイプではできなかった車軸付き動力台車の100%低床化を実現したのです。NK-71台車とは大きくその構造は違いますが直角カルダン駆動のノウハウは引き継がれているに違いありません。改良型のUaタイプはアルナ車両の主力製品で2025年登場の札幌市電A1210形にも採用されています。

*この記事は2008年1月に記したものがベースとなっています。

参考文献;鉄道ピクトリアル 「路面電車再見特集 」No319
「路面電車ガイドブック」誠文堂新光社 1961刊
仙台市電保存館 パンフレット  そして、私のお相手をしてくださった職員さんのおはなし。

-路面電車研究- INDEX   →鉄道車両写真集index
■仙台市電 路線歴史まとめ モハ100形 モハ200形 モハ400形①  鉄道車両写真集: 仙台市電 

 

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