鹿児島市電は1969年に全廃された大阪市電から2600形を大量に購入して800形を登場させています。
また同時に同じタイプの車体を持つ3001形を切りつないだ700形連接車も登場させているのです。
大阪市電3001形はPCCカー試作車である3000形の高加減速、防音、防振といった要素を引き継ぎ「無音電車」とまで言われた高性能車です。
他都市でもPCCカーは導入されましたが量産されることはありませんでした。
そんな中 大阪市電3001形は50両も量産され導入に成功した珍しい例といえるでしょう。
新 大阪市電スタイルとよばれる近代的なデザインは前述の2600形や阪堺電車の501形などにも引き継がれ今なおその姿を忍ぶことができます。
一方、間接自動制御であったため従来の直接制御車のようにいわゆる追いノッチ操作ができず加速操作(進段)がただちに反映されないためベテランの運転手さんには扱いにくかったようです。
また高性能であるがゆえ現場とりわけ保守の面から敬遠されがちな高性能車3001形がどうして鹿児島入りしたのか。詳しい経緯はわかりません。
鹿児島入りするにあたって足回りを変更することもできたと思われます。
しかし直角カルダン駆動の間接制御車としてPCCカーの乗り心地を維持しながらなお連接車となって走り続けた点は評価したいところです。

形式 700 702.04AB 1966.67年 アルナ工機改造
車体:全鋼製 18.700: 2.470: 3.640 t 130名 42席
台車:FS-252 中間台車はNK-26
モーター:三菱MB-3016-A、東洋TDK-851-A、日立HS-503-Grbのいずれか 30.0kw×4
直角カルダン駆動 抵抗制御 冷房装置 あり 参考文献 rp Wiki
701AB・703ABは3021~24の車体をを改造、連接化したものであるのに対して702AB・704ABは余剰の台車を流用して車体は新製されています。
なお鹿児島入りした大阪市電はカオが細オモテになり傾斜もなくなっているので印象が多少オリジナルのモノと違います。
704は新造車体でもあり元大阪市電というのはややはばかられるのですがサイドのデザインは大阪市電風(鹿児島市電オリジナル車)の600形と違い原型に近くなっています。
ただ改造時、中間台車にはモーターを取り付けなかったため1編成あたり30kw×4と出力が小さく、もっぱらラッシュ時用となりました。
そういうわけで撮影するのには結構苦労した電車でしたが704ABにしてみればのんびりと昼寝をして余生を送ることができたということになるでしょう。
704ABが冷房改造され思ったより長生きしたのは在籍した701AB~704ABの4編成のうち車体を新製したという点にあると思われます。
車体を流用した701AB・703ABは早々と1979年に廃車されていますが 702ABは1990年頃まで生き残り704ABは1994年に廃車となりました。
以上の記事は2005年3月に記したものをベースにしています。以下は今回追加したものです。
*PCCカー
PCCカーは1930年代に登場しました。
米国電気鉄道社長会議委員会(Electric Railway Presidents’ Conference Committee)によって開発されたもので 要は米国内の路面電車軌道であればどの路線でも運行ができるように規格化された路面電車という意味だそうです。
高加速、高減速、そして静粛性。快適な乗り心地を目指した新しい路面電車がPCCカーです。
おもしろいのは運転台の操作方法です。自動車のように足元に加速・減速のペダルが置かれました。
運転士は基本的に握り棒を掴んで運転していたというわけです。
制御方式は抵抗制御ですが多段方式のものが搭載され騒音軽減のため車輪に防振ゴムを挟み固定する弾性車輪を採用。駆動方式も直角カルダン駆動としました。
高速運転も可能にするため高出力のモータを装備。ブレーキは電気ブレーキを主とするなど新技術がてんこ盛りでした。
急速に発展する自動車との競争に打ち勝つために基本的な仕様を統一し経済性を重視した標準型車両の開発が不可欠であるという意識は車社会の先進国アメリカから発信されていたんですね。
1936年にニューヨーク、続いてピッツバーグ、ボルチモア、シカゴに導入されました。
しかし製造コストが高騰。路面電車そのものも廃止が相次ぎ、1952年にサンフランシスコ市が導入したのを最後にPCCカーの製造は終了しました。
もっともPCCカーに導入された直角カルダン駆動などの技術は鉄道用車両に応用されていくことになります。
日本でもPCCカーの影響を受けて開発された高性能路面電車が多く存在しました。
ペダル操作の純正PCCカーの導入は都電5500形の1両のみですが、1950年代以降 直角カルダン駆動や弾性車輪、発電ブレーキを搭載した路面電車が日本各地に登場します。
しかし従来車との操作性の違いから乗務員に不評だったことに加え故障が頻発したことから結局 その多くが従来のツリカケ駆動・直接制御に改造されました。
量産されたのは大阪市電3001形くらいでしょうか。しかしながら大阪市電は1969年全線廃止。
1978年に「軽快電車」プロジェクトが始動するまで日本の路面電車技術は停滞期を迎えることになるのです。
路面電車研究 鹿児島市電
460形 500形 500形改 600形 600形改 800形 800形改
9500形 9700形 2100形 2110形 2120形 2130形 2140形
1000形 7000形 7500形
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