「ミスター荒川線」東京都電 7000形 7001号機 珍車ギャラリー#208

「ミスター荒川線」東京都電 7000形 7001号機 珍車ギャラリー#208

東京都電7000形は存続が決まった荒川線(1974年に 27・32系統を統合し改称)用車両として1977年デビューした更新車です。
車体はアルナ工機(現・アルナ車両)製の新造車体ですが、台車に電装品といった主要機器類は旧7000形から流用しています。
ちなみに旧7000形はそのメカにおいて同型式とするには ちょっと無理があるのではないかと思えるほど バリエーションに富んでいます。
しかし、新7000形に更新された旧7000形3次車ではさほど大きな変化はありません。
今後のメンテナンスを考えて部品の共通化を図ったのでしょう。

旧7000形 3次車 7075 ワンマン化以前 撮影 1978.8 早稲田

新7000形は1978年にワンマン化されました。
その後 1985年から冷房化と塗装変更がすすめられ 集電装置もビューゲルからパンタグラフに交換されました。
2002年からは再更新工事が施工され シングルアーム式パンタグラフに交換されたものも存在します。
(7001、7019、7020、7022、7025)
今回は集電装置を3通りも装備した珍しい路面電車として 7001号をその代表としてピックアップいたした次第です。

とりもなおさず集電装置を3通りも装備したということは それだけ長生きをしたということです。
2011年現在 7000形更新車は なお21両が在籍します。一方
1980年代に冷房改造もせずに廃車されたものもあれば、冷房改造してから廃車されたものもあります。
また豊橋鉄道に譲渡された仲間もいます。(1992/2000年)
同じ7000形にして この違いは何なのでしょうか。

これに加えて解せないのは都電7500形の廃止です。
2011年3月そのすべてが引退することになりました。
7500形は1962年製で旧7000形3次形車の7年後の車両です。
1972年には18両が荒川車庫に集結し荒川線の存続決定後、7500形の7509と7514を除く16両が7000形同様がワンマン運転対応に改造されることになりました。
ただこの際 7000形は車体が新造されましたが 7500形は既存車体の改造での対応となりました。
でも1984年から87年にかけて7500形は13両に対して都電初となる冷房車改造工事がなされ、同時に車体更新もなされているのです。
(7502・7504・7508の3両を除く)
7000形が現在の車体に更新されたのは1977年ですから7500形更新車は車体も7年は新しいのです。

特に7500形に思い入れがあるわけではないのですが7500形が気の毒に思われてなりません。

番狂わせの大きな原因は何でしょう?
一つは荒川線の完全冷房化が強く望まれていたことにあると思います。
1980年代、地下鉄を除けばもう冷房車は当たり前で 路面電車であってもそれは同じです。
伊予鉄道松山市内線などは88年には完全冷房化を達成しています。

東京都交通局は7500形の冷房化で対応してきたわけですが、それでは数が足らないのです。
新型車の登場を待つまでもなく7000形に冷房改造工事をすることになりました。
言うまでもなくクーラーユニットは相当な重量物です。工事にあたり全面的な改修工事がなされました。
つまり7000形は再リニューアル工事で再び若返り、車両の状態はこちらが上というになったのです。
それでもこれは新車投入までの急場しのぎという一面はあったと思います。

待望の新車である8500形は1990年にデビューしました。
車体は全鋼製軽量構造で都電では1954年落成の6500形以来となるカルダン駆動車です。
そして都電では初のVVVFインバータ制御を採用しました。まさに満を持した高性能車両です。
1992年に8502・8503、1993年に8504・8505のそれぞれ2両ずつ計5両が増備されました。

それと入れ替わるカタチで7000形8両は1999年までに廃車されています。
(うち4両は1992年と2000年の2度にわたり、豊橋鉄道に譲渡)

でも、8500形は5両で製造がストップしてしまうのです。
8500形自体に問題があったわけではありません。財政上の問題です。
折しもバブルが崩壊し、都の財政にもブレーキがかかってしまったのです。
7000形車両の取り替えは見送られ7000形の冷房化工事を推し進めることで冷房化をはかりました。
そしてその結果、7000形冷房車の数は7500形を上回る勢力となったのです。
そうなれば、部品の確保についてもメンテナンスについても7000形のほうが有利です。
番狂わせの原因はどうやらこのへんにありそうです。

それにしてもトップナンバーである7001がなぜ生き残ったのでしょう。
かつての6152号のように動態保存的に残っているわけではありません。
繰り返しになりますが新7000形は旧7000形の更新車です。
車番は旧7000形のそれを引き継ぐことはなく新たに7001 – 7031に揃えられました。
ならば7001は旧7000形で最も状態のいいものから改造したのだとも考えられるのですが、
新番号は改造順ではなく旧番の若い順から付番されています。
つまり最も経年を経たものが、わかりやすく言えば一番古いものが7001に用いられているのです。

なぜトップナンバーの7001が生き残っているのか?詳しいことはよくわかりませんでした。
ただ、参考文献の一覧表を見て気づいたことがあります。
じつは、トップナンバーの7001(=旧7055)は、1955年12月に新製配置されて以来
ずーっと荒川電車営業所に配置され この地を離れたことはありません。
7500形はもちろん7000形にあっても こんな車両は7001だけです。
ひょっとしたらそんなことも影響しているのかもしれません。

思えば7001は、荒川線の歴史そのものといえるように思われます。
まさに【ミスター荒川線】ですね。

7001は2017年4月に運用離脱、荒川車庫にて保存されています。

*この記事は2011年10月に記したものがベースとなっています。

参考文献;鉄道ピクトリアル「都電7000形ものがたり」(特集 路面電車:#593)1994.7
 鉄道ピクトリアル「特集  路面電車」1976年4月号 #319 2000年7月号 #688

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