3セクの鉄道事業者でもJR特急を走らせている会社はいくつかあります。
伊勢鉄道のようにJR特急がただ通過するだけという場合もありますが、智頭急行は最新鋭の振り子装置を持つ自前の特急気動車HOT7000系を登場させました。
また北越急行では683系スノーラビットを自社路線で160km/h走行させていました。
いずれも遠く都市圏に足を伸ばしその存在感を示していました。
地元の人々にとっても誇らしい。まさにフラッグシップです。
さて土佐くろしお鉄道の2700系です。
最新鋭の気動車特急であり岡山にまで足を伸ばしているのにもかかわらず存在感が全く感じられません。
画像を見ていただいてもお解りいただけると思いますがJR四国のそれとほぼ変わりはないですね。
強いていえば土佐くろしお鉄道所属の2700系は車号に「2730」「2780」と書かれており、
側扉横にJRマークがないので識別は容易といえばそうですが、それ以外の外観や内装はJR四国の2700系とほぼ同じなため、よほどのマニアでなければ あれが土佐くろしお鉄道の車両であることを気づくことはまずありません。
そう…土佐くろしお鉄道の車両という存在感が全くないのです。
土佐くろしお鉄道
土佐くろしお鉄道は 窪川~中村~宿毛間を結ぶ「四万十くろしおライン66.6km」と 後免~奈半利間を結ぶ「ごめん・なはり線42.7km」を有する第3セクター鉄道です。
さて四万十線の窪川駅となはり線の後免駅は同じJR土讃線の駅ではあるのですがで両駅間はなんと82.5kmあります。
どうして同一会社の路線が離ればなれになってしまったのでしょうか。
では、土佐くろしお鉄道の成り立ちをみていきます。
土佐くろしお鉄道はもともと国鉄再建法の下、工事が凍結された宿毛線と阿佐西線を開業させることを目的とした鉄道会社です。
高知県の自治体が90パ-セント以上を支出する第3セクターの鉄道会社として設立されました。
先行開業したのは「中村線」です。
1988年に窪川~中村間43kmを転換しました。
旧国鉄中村線は第3次特定地方交通線に指定された廃線候補路線でした。
これを引き受けたのは 宿毛線が中村から先の宿毛を結ぶ路線だからです。
中村線がなければ孤立してしまいます。
繋がっていればこそ中村線には当初からJR特急「南風」が乗り入れました。
通行料収入が得られる分、伊勢鉄道などと同じく有利な点を持つことから1997年には宿毛線の中村~宿毛間23.6kmを開業。
そして2002年には「阿佐線」の後免~奈半利間も開通させ100kmを越える路線を持つ第3セクター鉄道となっています。
現在「中村.宿毛線」は「四万十くろしおライン」、「阿佐線」は「ごめん・なはり線」と呼ばれています。
2000系
土佐くろしお鉄道ではJR四国と特急列車による相互直通運転をするにあたり車両使用料を調整するためにJR四国2000系とほぼ同一仕様の車両を投入することになりました。
2000系の30番台となる4両です。以降2030系とします。
運用管理全般をJR四国に委託しており高知運転所の所属となっています。
当初はJR四国の2000系と共通で1両単位の運用を組んでいました。
2000系と同じ標準色で2030系は側窓下に「土佐くろしお鉄道」のロゴがついていました。
写真が見当たらないのが残念!でもその小さなロゴのおかげで土佐くろの車両だったんだという思い出が残っています。
2001年に2030系ははアンパンマン列車の一員となりアンパンマンラッピングが施されました。
アンパンマン列車となった後は編成単位の運用を行っていたようです。
しかしそれが土佐くろの車両だと知ったのは2020年7月、2700系によるアンパンマン列車の運行開始により引退した後のことです。
どうして これほどまでに存在感がなかったのか。
それは土佐くろしお鉄道がもつ地理的要因が絡んでいたと思われます。
80kmを越えて分断された路線です。それぞれの職場の職員同士が人的交流することなどそうそうないでしょう。
そんな双方の従業員の間に立つ経営陣は他の3セクにはない様々な気苦労があったに違いありません。
双方の地域の期待と思惑も当然ちがいます。あちらを立てれば こちらが立たずというところでしょう。
2030系そして2730系は四万十線用であり配置は中村区です。
稼ぎ頭ではあっても特急用車両である彼女たちに肩入れするのはバランス感覚を欠いているということになるでしょう。
車体は高知に常駐しJR四国の車両と共通運用しているのです。
ここは第三者であるJR四国に丸投げする方が要らぬ気遣いをせずにすむ。
そう考えるのが自然というところなのかもしれません。
なはり線には9640形がいます。四万十線にもラッピング車両が数多く配置され地元の魅力をアピールしています。
2030系にはアンパンマンの塗装がちりばめられました。
やなせたかし→高知出身→アンパンマンという流れで始まったアンパンマン列車。
これはこれでスゴイ存在感だと思います。
とはいえJR四国の車両の多くがアンパンマン列車となってしまった以上、
2030系が土佐くろしお鉄道の車両であるということは むしろ結びつきません。
私は2730系こそ「土佐くろしお鉄道」の車両であることをアピールする存在であって欲しいと思っています。
2730系には南国土佐ならではのいでたちをさせ県外の人々を高知への旅を誘う使命を担わせたいのです。
当然、企画をするのは土佐くろしお鉄道です。
そしてJR四国にはそんな2730系を意識的に岡山ゆきに使って欲しいと思います。
2030系は車両使用料を相殺する単なる数合わせでしかありませんでした。
2030系も2730系も他の2700系とは違う個性を持っています。
それを最大限に活かしてやって欲しいと思うのです。
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