問題です。最強の気動車は何でしょう?
ちなみに現在日本の鉄道用最強のエンジンを搭載する気動車は JR北海道キハ183系のうち2550・3550・4550番台などNN183系とも称するグループということになります。
彼女たちは1988年~90年に製作されました。(この記事は2011年11月にUPしたものです)
函館本線で120km/h運転を行うため彼女たちにセッティングされたエンジンDML30HZは排気量30L。
直噴インタークーラーターボ付き水平対向式12気筒エンジンで出力は660PS/2000rpmというハイパワーです。
しかし20年以上も前のエンジンなんですね。
ついでに言うとDML30系はキハ180系にも搭載されているレガシーデバイスです。
実はこの系列のエンジン、高出力はいいのですが図体が大きくコストの面でも問題を抱えていました。
21世紀の今、気動車に用いられているエンジンは排気量こそ控えめですが 軽量コンパクトでありながら高出力のDMF14HZ系(カミンズ製のNTR-855系)やDMF11HZ系(コマツ製のSA6D125系)が主流となっています。
JR東海のキハ85系ではDMF14HZ(350PS/2000rpm)を2台、智頭急行のHOT7000系ではSA6D125H(355PS/2000rpm)を2台というぐあいに俊足の気動車は2エンジンが定番です。
というわけで車両1両あたりで最強の気動車ということになると---。
2000年にデビューしたJR北海道のキハ261系となります。
搭載されているN-DMF13HZH/N-DMF13HZJは460ps/2100rpmで これを1両につき2台搭載しますので併せて920PSということになります。(なおキハ260形100番台は1エンジン車。)
しかし私はあえて、最強の気動車として同じくJR北海道のキハ201系をご紹介したいと思います。
1997年3月に営業運転を開始したキハ201系は、同時期に開発された731系電車とほぼ同一の車体構造と性能持ち かつ731系電車と総括制御が可能な車両として製作されました。
731系電車と同様、3両の固定編成を組みます。(運転台付きのキハ201形100番台・300番台、中間車のキハ201形200番台)
さて前述のN-DMF13HZHのベースとなるN-DMF13HZE形エンジンを搭載するのがキハ201系です。
450PSのこのエンジン(新潟鐵工所製)を各車に2基搭載します。
確かに車両1両あたりではキハ261系にわずかに及びません。
ところでキハ201系は前述のように3連の固定編成で運用されます。
対してスーパー宗谷に使用されるキハ261系も固定編成で運用され こちらの基本編成は4連です。
ところがこのうち1両(キハ260形100番台)は1エンジン車なのです。
ですから編成毎に見ていかないと不公平というものです。
そこで、編成あたりのパワーウエイトレシオを見てみますと キハ261系4両編成の総出力は3220PSですから、これを総重量169.9tで割ると約18.9PS/t。
対してキハ201系3両編成の総出力2700PSを総重量118.0tで割ると約22.9PS/tと キハ201系は特急用気動車である261系を上回るではないですか!
というわけで キハ201系は1996年のデビュー以来、2006年まで10年もの間、最強の気動車であり続けたのです。
タイトルを返上することになったのは スーパーとかち用キハ261系1000番台が登場したためです。
キハ261系1000番台のエンジンはN-DMF13HZJで460ps/2100rpmと出力に変わりはありません。
しかし、すべて2エンジン車となったため編成あたりのパワーウエイトレシオを見るまでもなく勝負がついてしまいました。
ちょっと残念です。
731系電車との協調運転が可能というのもキハ201系の魅力なのですが、現在731系電車との協調運転は朝の倶知安発札幌行きの1本のみで 朝夕のラッシュ時に非電化の小樽以西からの直通列車に使用されるほか 昼間は主に学園都市線で運転されるのが現状です。
もっとも他の気動車と比べ所要時間は短縮されていますが、はっきりいって目立たない存在となってしまいました。
キハ201系が、3連×4本=12両しか製作されていないことも大きな原因です。
思ったほどの高性能を発揮できなかったということなのでしょうか?
いやそんなことはありません。
札幌‐江別間では電車の代わりに運転されることもあり その高性能を活かした活躍をしているわけです。
ただ、いかんせん普通列車用の車両です。そのコストには見合わないのかもしれません。
ではなぜ、このような車両が作られたのでしょう?
私はこのキハ201系が試作車的な存在ではないかと思っているのです。
キハ201系はそのパワーだけではなく様々な新機能を備えています。
高性能通勤電車との協調運転もそうですが忘れてはならないのは車体傾斜装置です。
曲線での通過速度を向上するため搭載しました。
車体を傾斜させるといえば、振り子式というのが定番ですがキハ201系のそれはは大きく違います。
今時の旅客用鉄道車両はほとんど台車に空気バネを採用しています。
この空気バネに注入する空気圧を左右コントロールすることで車体を傾けるという空気バネ方式を採用したのです。
車体の傾斜角は2度(最大3度)と6度傾けることのできる振り子式には及びませんが、あるとないとでは違います。
この方式を最初に導入したのがキハ201系だということはあまり知られていないのではないでしょうか。
前述のキハ261系がこのシステムを継承しました。
速度制限の多い宗谷本線でのスピードアップには欠かせない装置となっています。
それだけではありません。コストの面でもメンテナンスの面でも有利なこの空気バネ方式は なんと最新鋭の新幹線N700系にも採用されているのです。これは凄いことではないでしょうか。
後世に車両に与えた影響の大きさでも、やっぱり-最強の気動車はキハ201系-としておきたいと思います。
731系電車と同様、従来の北海道仕様の車両に必須の客室を仕切るデッキは廃止されました。
これに代わる寒さ対策として客用扉の上と横から温風を送り込み冷気を遮断するエアカーテンなどが設けられたのですが、車内のロングシートに吹き抜ける寒さはいかんともしがたいものがあります。
でも熱いハートをもつキハ201系に免じて「スーパーサムイ」と揶揄するのはご遠慮いただきたいなあ。
参考文献 JR全車両ハンドブック 2008年版
鉄道ピクトリアル 新車年鑑1997年版 No644 1997.10
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