まずは3000系について。 彼女たちは1964年に登場しました。
1968年の神戸高速鉄道東西線開通にむけ相互乗り入れをする阪神・阪急と規格をあわせた系列です。
すべて川崎製(川崎車輛→川崎重工業)で総数は148両を数えます。
ところで山陽では3000系を抵抗制御車ということで一括りにしています。
しかしその実態は多様でとても一括りにはできません。
冷房車としてデビューした3050番台、増結用ユニットとなる3100番台。
そして2000系の足回りを再利用した3200番台…。
これらをを私は別系列として扱っています。
ここを理解していただけないと3010Fの数奇な運命を理解していただくことはできないのです。
少し遠回りになりますがおつきあいください。
3000系
3000系1次形 00F① クモハ3000形 3000
阪神・阪急と規格をあわせたことから車体は 両開き3扉の19m級通勤車となりました。
113系のような高床式運転台がチャームポイントです。
阪神本線・阪急神戸線は当時600Vでしたが乗り入れまでに直流1,500Vに昇圧することから 3000系は直流1,500V専用車として設計されました。
主制御器は1C8M方式のKMC-201。主電動機はMB-3020系(125kw)が採用されました。
駆動方式はWNドライブ。ブレーキはHSC-Dを採用しました。
大手私鉄の車両に伍する高性能車といっていいでしょう。
ただ編成は短く3連が基本となります。
すなわちMMユニットである3000・3050・3100・3200形の姫路方にTc車3600形を連結するという編成です。
3000系1次車は1964~65年に00F、02Fが竣工しました。
←神戸① ③山陽姫路→
形式 クモハ3000-モハ3000–クハ3600 Mc-M-Tc
3000-3001-3600 → 3002-3003-3601
1次車はオールアルミ合金車体という点が評価され65年に鉄道友の会からローレル賞が贈られました。
3000系は当時華々しいデビューを果たしたと申せましょう。
3000系2,3次車は1968年の神戸高速鉄道東西線開通にむけ大量増備されました。
(2次車:67~68年製 04~20F、3次車:68~71年製 22~36F)
そうそうコストはかけていられませんので普通鋼製車両となりました。
3000系2次形 06F① クモハ3000形 3006
M’c-M-T-Tcの4連と T車を外した3連で運用されます。
次に冷房車としてデビューした3050系、増結用ユニットとなる3100系をご説明したいところですが、割愛させていただいて2000系についてお話しします。
今回のお話しのカギとなる3200系の2は2000系の2だからです。
2000系 →珍車ギャラリーでも取り上げています
3000系同様一括りになっていますが、2000系もその実態は多様でとても一括りにはできません。
2000系は18m級の2ドアクロスシート車で1956年にデビュー。特急に用いられました。
2000系00F モハ2000形 2000
制御装置:KMC101 モーター :MB3037( 110kw) WN駆動 ブレーキ ARSE-D 台車 :OK-15
山陽初の新性能車として開発されステンレス車やアルミ車があるのも大きな特色で試作車的な要素が強くあった系列です。
13Fアルミ車から3ドア車体となりました。
2700系
2700系は国鉄63系由来となる700形の足回りを再利用し2000系の車体と組み合わせたものです。
2700系の7は700系の7です。2ドア車と3ドア車が混在します。1957~68年に製造されました。
2700系_02F① モハ2700形 2702
2300系
2300系は2700系の車体(3ドア車)を再利用し 1976、77年に高性能化したものです。
では2300系の3はなんでしょう。3000系の3です。
主制御器:KMC-201 モーター: MB3020(125kw) WN駆動 ブレーキ HSC-D 台車: KW-3
このスペックは3000系と同じです。
2300系は3000系と共通でメンテできたことから重宝されたと思われます。
2300系00F① クモハ2300形 2300
それにしても、2300系と2700系は同様の車体でありながら、足回りの違いが 新旧 際立ったものとなっています。
3200系
2000系は神戸高速鉄道乗り入れにむけ大量導入された3000系に主役の座を譲ることになります。
そこで1969年から2000系の一部は電装を解除、3000系を4連化するため3550形に改造されT車として組み込まれました。
そこで捻出された電装品を流用して製造されたのが3200系です。
3200系02F① クモハ3200形 3202
3200系は2つのグループにに分けられます。
3000系タイプの新造車体に2000系の主電動機と駆動装置を流用した新造車グループ00、02、04F(1969、70年製:2018年消滅)と
3000系の足回りを2000系/2300系の主電動機と駆動装置に取り替えた改造車グループ06、08/10F(1988、89 改造:2019年消滅/98年改造)です。
さらりと記しましたが00Fが69年に登場してから10Fが98年に登場するまで30年近い歳月が経っています。
3210F の種車である2300系は3000系と同じ性能を持つが故に 98年まで活躍を続けていたからです。
ここでお断りしておかなければならないことがあります。
2300系は89年に冷房改造され、その後2000系発生品のMB-3037 に換装させられています。
2000系と同じモーターになったというわけですね。
その経緯からして2000系に復帰しても これを区別して2200系にしても良さそうなもんですがそうはなりませんでした。
主制御器はそのままKMC-201。ブレーキもHSC-Dと3000系のそれを引き継いでいるからです。
とはいえ3200系の2は2000系の2です。
2300系の主電動機の出力は2000系の110kw(MB-3037)となったわけで3000系の125kw(MB-3020系)に及びません。
よって網干線ローカル用、本線各停用として運用されました。
リニューアル
3200系リニューアル車 10F① クモハ3200形 3210
2005年以降3000系はリニューアルされていきます。
3000系はすべて冷房改造されましたので冷房車としてデビューした3050系もリニューアル車については一緒でM車のクーラーが違うくらいと考えていいでしょう。
リニューアルといっても外見的変化といえば車端部の側窓が大型1枚ガラスへ変更されたくらいです。
では、何をリニューアルしたのか というと
バリアフリー対応をはじめとする車内のリフレッシュがメインです。
性能も特に変わるところはありません。
3000系は2003年以降廃車が進められ2000系の車体をもつ3550形は04年度までに形式消滅しました。
2010年には3000系オリジナルである3500形からも廃車が発生。
3000系1次車アルミカーについては2016~17年に廃車されました。
スチール車も例外ではなく2017年12月には24Fが運行を終了しています。
つまりリニューアルの対象は3000系の一部にとどまるということですね。
そうなれば、1世代前の足回りをもつ3200系はリニューアルの対象にはならないのが普通です。
しかし3200系の3210Fがリニューアルされたのです。
なぜでしょう。
3200系には3000系の足回りを2000系/2300系の主電動機と駆動装置に取り替えた改造車グループがあると前述しました。
2000系改造の06、08Fが 1988、89年改造であるのに対し、2300系改造の10Fは98年改造です。
10年の差があるのです。この差がものをいったようです。
ちなみに3206Fの種車(車体)は3034F、3208Fは3036Fです。3210Fは3010Fです。
2005年にリニューアルされた3210Fは 2017年に 3000系の主電動機と駆動装置に再度交換し3010Fとなりました。
1998年に3200系化された時、3010Fはまさかこんなことになるとは想像も付かなかったでしょう。
「山陽電気鉄道は抵抗制御車を3000系を一括りにしている」と前述しました。
「大雑把だなあ」と思われた方もあるかもしれません。
しかし垣根を取っ払らったことでまだまだ使えるものを見いだせたような気がするのです。
3000系リニューアル車 10F① クモハ3000形 3010 (もと3210)
-鉄道車両写真集- |
山陽電気鉄道 3000系3050系アルミ車 3100系 3200系 3000系 3050系 3000系3050系リニューアル車 へJUNP |
参考文献;私鉄の車両⑦”山陽電気鉄道”S60.8 保育社刊
鉄道ピクトリアル;特集”山陽電気鉄道/神戸電鉄”の各記事 #711 H13.12
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