207系といえば…
1991年にデビューしたJR西日本初のVVVFインバータ制御となる通勤形電車で、484両を数えるまでに量産されています。
2005年4月尼崎-塚口間でおきた痛ましい事故のイメージを払拭するため新鋭321系と同様のカラーリングが施され、すっかり影が薄くなってしまいましたが、今でもJR西日本の顔とも言うべき車両の一つです。
さて、207系 のトップナンバー編成であるC1編成は先行量産車とも呼ばれますが、JR西日本が次世代の通勤電車はかくあるべし。と世に問うた試作車です。
VVVFインバータ電車であるのはもちろんのこと、通勤電車でありながら最高速度が120km/hに引き上げられたことなどが注目ポイントです。
ところでこの207系が登場する5年前の1986年、そう国鉄時代に207系は存在していたのです。試作車となる900番台です。
207系900番台は、実用に供されたものとしては、国鉄初の、そして国鉄にあって唯一無二のVVVF制御車です。
号車 | 形式 | メーカー | インバータ装置(SC20形)GTOサイリスタ 1C4M |
---|---|---|---|
10 | クハ207-901 (Tc) | 川崎重工業 | |
9 | モハ207-901 (M1) | 東芝製のインバータ装置を搭載 | |
8 | モハ206-901 (M2) | 三菱電機製のインバータ装置を搭載 | |
7 | サハ207-901 (T1) | 東急車輛製造 | |
6 | モハ207-902 (M1) | 川崎重工業 | 富士電機製のインバータ装置を搭載 |
5 | モハ206-902 (M2) | 日立製作所製のインバータ装置を搭載 | |
4 | サハ207-902 (T2) | 東急車輛製造 | |
3 | モハ207-903 (M1) | 東芝製のインバータ装置を搭載 | |
2 | モハ206-903 (M2) | 東洋電機製造製のインバータ装置 | |
1 | クハ206-901 (Tc’) | 川崎重工業 |
JR東日本 207系900番台 東マト_71編成① クハ206-901
JR東日本 207系900番台10連 常磐緩行線地下鉄千代田線直通用
←取手⑩ 地下鉄千代田線 経由 代々木上原①→
クハ207_901-モハ207/206_901-サハ207_901-モハ207/206_902-
-サハ207_902-モハ207/206_903–クハ206_901
参考:JR電車編成表90年夏版 撮影:松戸
207系900番台は、国鉄からJR東日本に継承されましたが、量産されることはありませんでした。
JR東日本でのVVVF制御車は、901系から209系へと全く違うコンセプトの車両系列で量産されてゆくのです。
結局、207系900番台は1編成のみの存在で、常磐線緩行用として203系17編成と共通運用しているうえに、同線には営団地下鉄6000系36編成に加え千代田線直通の小田急車両までやってくるため、関東の方々にとっても滅多にお目にかかれない希少な存在となってしまいました。
なぜ207系900番台は量産されなかったのでしょう。
今や新しく登場する電車のすべてがVVVF制御車と言ってもいいような時代ですが、彼らがデビューした86年にあっても、もはや、とりわけ先進の技術であったといえる時代ではなかったのです。
なぜなら同年に、東急9000、新京成8800といったVVVF制御車が大量に増備されています。
私は、900番台が営団地下鉄千代田線直通車両として配属されたことが、量産に結びつかなかったと考えています。
営団地下鉄の千代田線初のVVVF制御車といえば06系ですが、これまた1編成しかいない珍車です。
6000系の末期には制御器をVVVF制御器に取り替えている営団地下鉄(東京メトロ)ですが、実のところ営団は、VVVF制御の導入には消極的で本格的に導入するのは91年(南北線9000系)のことです。
営団地下鉄は、VVVF制御による交流モータの優位性を認める一方で、従来の直流モータにおいてもトラブルは少なく、あえて新システムへの切り替えを急ぐ必要はないと考えていたのです。
千代田線といえば、6000系電機子チョッパ制御車が大量導入された先進的な路線です。
しかし、電機子チョッパ制御が優れた性能を持つ一方で高価なデバイスであったということについては、201系900番台のページでも取り上げました。
財政的に破綻をきたしていた当時の国鉄ですが、207系900番台導入の前年、旧式の103系をようやく同じくチョッパ制御車の203系に全て置き換えたばかりだったのです。
置き換えるべきものが、もはや ない状態でした。
5年後の91年、JR東日本は、京葉線の運行を開始します。配属されたのは205系でした。
もし国鉄がJR化されることがなかったなら、また京葉線の完成が3.4年早かったなら、207系900番台は量産化されていたかもしれません。
モハ206-901 | (ステンレス車体) | S61年11月 | 川崎重工 製 |
---|---|---|---|
長さ(m) | 幅(m) | 高さ(m) | 自重(t) |
20.0 | 2.870 | 4.086 | 34.5 |
駆動方式 | モーター(kw) | ブレーキ | 台車(製造) |
平行カルダン | MT63 150×4 |
全電気指令式 空気ブレーキ (回生付き) |
DT50E () |
制御方式 | 定員(座席) | 冷房装置 | 最高運転速度 |
VVVF制御 SC20 |
144 (90) |
AU75G | 100km/h |
-鉄道車両写真集- |
JR東日本 207系900番台 へJUMP |
参考文献;鉄道ピクトリアル#551<特集>インバータ制御車
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