阪神電気鉄道 5700系(珍車ギャラリー#364)

阪神電気鉄道 5700系(珍車ギャラリー#364)

6月5日の「鉄道伝説」いかがでしたでしょうか。
私はというと、なんとこの日に限ってBSチューナーが不調。視聴することができませんでした。
感想を書こうと思っていたのに…。

悔しいので、引き続き今日は阪神5700系をご紹介したいと思います。(珍車ギャラリーで2019年3月にUP)

阪神電気鉄道 5700系「ブルーリボン賞を受賞したジェットカー。」

ブルーリボン賞とローレル賞

ブルーリボン賞とローレル賞との違いをご存じでしょうか。
ともにその年にデビューした鉄道車両のなかで、優れたものに贈られるという点では同じなのですが、
ローレル賞が識者による審査を経るのに対し、
ブルーリボン賞は鉄道友の会メンバーの投票で決まります。

ですから、かつてない最新のテクノロジーを導入した…というような玄人好みの車両がローレル賞を受賞し、鉄道会社がフラッグシップと位置づけた特急用車両がブルーリボン賞を受賞するという傾向があるように思います。

どちらにせよ、各界の新人賞と同様、受賞候補が多く、鎬を削る年もあれば、
ライバルとなるものが、さほどいない年もあり、運不運があるなあ。と実感することも多いものです。

普通列車用なのにブルーリボン賞

阪神5700系が普通列車用なのにブルーリボン賞を受賞したということについて、
「これといったライバルがいなかったのだよ。」
とさらりと流してしまう向きもあるようです。

しかし、私はそうは思っていません。

鉄道車両に求められていることは、まず、安全であること。
そして、快適であること。経済的であること。確実であること。でしょうか。
これらを高いレベルで究めて行けば、これが標準化してゆくのは道理です。
無駄なものは削ぎ落とされ、いわば遊びのないものになってゆきます。

しかし、同時に魅力に乏しいものとなってゆくともいえるのですね。

ロマンとは、実用的でも合理的でもないが、格好いいこと。
とどこかの本に書いてありました。
JR九州の883系ソニックなんかアソビがいっぱいですね。
そこがまたカッコいい、魅力的と言うことになるのでしょう。

でもそれってデザインだよね。とおっしゃる向きもあるでしょう。
確かに私も今883系ソニックの見た目をイメージして申し上げました。
しかし、デザインとは、ある目的を達成するためになされる
計画的行為の全般をさすものと考えられます。
(例 都市計画のグランドデザイン、就職活動におけるキャリアデザインなど…)

一見無駄なもののように感じられたとしても、
そこには制作者のぶれることのないメッセージが汲み取れる
…そこがカッコいいのです。

883系ソニックも張りぼてではありません。
見た目だけでなく、そのメカ、それを活かした運用形態。
…そして、その座席に身をゆだね車窓を眺めたときに感じたその爽快感。
そのすべてがカッコよく感じられるのです。

ブルーリボン賞たるゆえんです。

ところで、JR九州のあの豪華列車「ななつ星」なんですが…。
当珍車ギャラリーでもご紹介したように 77系客車はアルミ製車体でもあり、その洗練された走行性能は、受賞していて当然だと思われます。
しかし、鉄道友の会からの受賞はありませんでした。

なぜでしょう。

人間国宝が作成された有田焼の洗面台があるというのは、確かにすごいことです。
でも…そういってみたところで、それが鉄道車両の価値にどうかかわるか。
それは別問題です。
「ななつ星」には、鉄道ファンには推し量れない付加価値に満ちているものですから、
目がくらんで、鉄道車両自体に目が届かなくなってしまったようにもみえます。

でも実際は、審査する先生方にせよ。投票するメンバーにせよ。
その多く方々は、乗りたくても乗れなかったのです。
高額な料金だけの問題じゃあありません。
チケットを手に入れたくても、その競争率ゆえ、乗りたくても乗れないのですから。
「実際に乗車もしていないのに、判断できないよ。」
という思いが強くあったのではないでしょうか。
それは投票するものの矜持ともいえると思います。

今までの阪神にはないPOPな5700系

さて阪神5700系です。
POPな装いは今までの阪神にはない新鮮なイメージを醸し出しています。
外見だけではありません。
車内も明るく、かつて工場労働者の通勤の足として活躍し、スシ詰め状態だったジェットカーのイメージはありません。
景色も変わりました。
私が初めてジェットカーにカメラを向けた当時は、西宮も出屋敷も高架駅ではありませんでしたが、
今やそのほとんどが高架路線となった阪神本線。
幾度となく急行待避で列車待ちをする普通列車ですが、その間に 快適な車内温度は、みるみる変化してしまいます。
ドアスイッチを導入した優しい心遣いには拍手です。

メカはと申しますと、先代5550系ではジェットカー伝統のオールM編成をやめ、3M1Tにしました。
ところが5700系は再びオールM編成になりました。
しかし5550系と電動台車の数は変わりません。
編成両端の2両には1車体に電動台車と付随台車を装備したのです。
これはJR西日本の321系や287系にも見られるやり方で、回生ブレーキによる発電効率を上げるとともに乗り心地も改善しようというものです。
その特殊な運用形態ゆえ必須とされる高加減速がウリのジェットカーですが、
これは乗客に強いGを与える諸刃の刃でもあります。
車両間の揺動を押さえたいジェットカーにとってオールM編成はうってつけのメカといえるでしょう。

やっぱりジェットカーはカッコいい!

…高架線上から見る車窓の眺めに、さほど加速感は感じられません。
多少ぎくしゃくするほうが、加速感が感じられるかもしれませんね。
でも、そっと目を閉じて
進化したジェットカーを感じてみてください。

スルスルスルーッと加速するそのジェントルな爽快感。
やっぱりジェットカーはカッコいい!

ブルーリボン賞たるゆえんです。

5700系の車体は1000系と同じ近車製です。
自社系列の車両メーカーではありませんが、艤装以降は武庫川車両の後継会社である「阪神車両メンテナンス」が担当しています。
スタッフの阪神のジェットカーに対する 思い入れ、こだわりがあったからこその受賞であったと私は思っています。

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